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こんにちはシル汁です。
滝綾は私の救世主なので増えてください。切実に探してます。
もっと増えてもいいと思うんですけどね。
追記、pixivにも載ってます。
滝綾
私がここまで溺愛するとは、到底思っても見なかった。
彼の性格は飄々としていてマイペース、あまり顔には出さない。所謂ポーカーフェイスが上手いのだ。
そんな彼を最初は同室でありクラスメイトでもあるため期待や喜びを感じていたが、四年生にもなると世話焼かせ小僧ではないかと思っていた。
ただ少し、私の感情が1年生の時より変わっていたことには気付かなかった。
変わったことに気付いたのは一緒に風呂を入っている時だった。忍術学園は寮制だ。そして風呂は組ごとに一緒に入る。喜八郎が風呂に入るのが遅れるのはよくある事だった。その日は少し息切れを起こしながら入ってきた。それがどうも色っぽく見えたのだ。いつもなら巻いている髪も下ろしたままで顔にはまだ洗え切れてない泥がついている。みすぼらしい格好で風呂場に入ってきたのだ。私は身体の硬直から抜け出せなかった。
いつもならこんなことはない。だから私は少し体調が悪いのではないかと疑った。喜八郎も、私自身も。
結果はNOだ。どちらもピンピンしている。なら、何故あの時私は喜八郎をみて胸の高鳴りを覚えてしまったのか。この感情は誰にも言えなかった。相談する相手がいなかったからだ。
あぁ、どうしてしまおうかと考えているだけで、すぐ時間は経ってしまう。ある時、三木ヱ門に言われた。
「最近喜八郎を甘やかしすぎじゃないか?」
自覚していなかった。アイツがただ凄くマイペースで動かないから私が周りの世話を焼いていただけだと答えたが、三木ヱ門からの返しは「それにしても甘やかしすぎ」との事だった。
それを機にというもの、私は喜八郎を意識し始めた。最初はなんてこと無かったはずなのに。
最近になると喜八郎の髪や声、しまいには仕草や目の視線にまでも魅力されてしまいそうだ。あの甘い色合いの髪の毛を撫でながら、欠伸をする喜八郎にもう少し起きていろ、と言うのが限界だった。
ただ口が揺らいだ。
「私は、お前のことが好きみたいだ」
思ってもみなかった。自分がこう考えているだなんて。
喜八郎は猫のように目を見開き顔は紅潮している。ただ、何故かそれがとてつもなく可愛かった。
喜八郎が言ったのだ。
「……僕も」
と、嬉しかった。喜八郎がこんな意思表示してくれるとは思っていなかったからだ。
あぁ、愛い。相思相愛だと分かれば一つやりたいことがあったのだ。
「喜八郎……」
自分でもわかる。甘い声を出していることを。
なぁに、と返答される。
「お前の口を私にくれないか」
有無を聞かずに、喜八郎の唇に触れた。
甘かった。
「満足した?」
と、聞かれれば
「まだ」
と、返す。
喜八郎の真っ赤になった顔を触りながら、お前も同じ思いを抱いていたのか、と嬉しくなる。頬を撫で、耳を触り、口付けをする。何ともまぁロマンチックで甘い空間なのだろうか、そんなことを思いながらも繰り返す。
私の満足が行くまで、喜八郎の満足が行くまで、時間を忘れて触れてみた。居心地が良い。
好奇心から少し舌を入れたくなった。
「喜八郎。舌を入れてもいいか?」
「……」
黙りとしたまま応えなかった。私はそれを肯定と受け取った。抵抗はしていなかった。
喜八郎に顔を近づけ、半開きの口に舌を入れる。
真正面の相手から、少しくぐもった声が聞こえた気がするが、聞こえなかったことにした。
私はとても幸福だと感じた。同時にとても甘いとも。
背中を叩かれた為やむを得ず口を離した。少し光に照らされて明るくなった唾液が、とても妖艶だった。だがこれ以上は拗ねそうなのでやめた。
またやろう、と言うことは言わずに、そっちから強請られたら行こうかと思う。
私も随分身勝手でマイペースなのだと実感した。
だがまた、それもいい。
喜八郎の恋人なのだから、逆にこのぐらい吹っ切れていた方がいいだろう。
髪の毛だけを触れ、その後は寝た。
眠る直前に「好きだよ、お前の事。大好き」と小さな声で言われたが、聞こえたとは言わなかった。また次も言わせるために。