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ふわふわ。
霊夢の笑った顔が見えた。
水たまりみたいな、水彩絵の具みたいな。
そこに映る霊夢は、柔らかくって、淡い色。
ゆら。
霊夢の顔が滲む。
代わりに映ったのは金髪の少女。
私じゃん。
なんだかまだあどけない感じ。
最初私はにこにこだったけど、急に泣きだしてしまった。
そっか。
あれは昔の私。
霊夢が死んだときの私。
この後、魔導書を開いて…
ほら開いた。
呪文を唱え…させちゃ、ダメだ。
止めなきゃ。
だけど、これはきっと。
きっと、届かない。
過去の私の映像に過ぎないから。
運命は、変えちゃダメだ。
痛いほどに分かっていた。
分かっていた、のに。
手を伸ばさずには、いられなかったんだ。
水たまりに手を浸す。
ただただ、一生懸命に魔導書をめくるその手を止めたかった。
私の姿が水面と一緒に揺れる。
やっぱり届かない。
前かがみになった私の帽子が水たまりに落ちた。
とぷん。
帽子は水たまりに沈んでいく。
慌てて掴もうと手を伸ばす。
まるで、底なしの沼みたいだ。
そのまま沈んでしまった。
過去の私が、何かに気づいたように机の下を覗く。
拾い上げたそれは…
私の、帽子。
私自身が被っているのと全く同じ。
瓜二つの帽子を両手に、不思議そうな私。
届いた。
届いてしまった。
私に同じ帽子を拾った記憶なんてない。
つまりこれは、過去を変えてしまったことになる。
些細な変化で世界が変わってしまうことなんて。
私が誰より知っていたのに。
水たまりは淡い色じゃなくなった。
真っ黒の穴になった。
飛び込め、と?
この先に何があるんだろう。
もし死んでも、生まれ変わってまた霊夢のいた世界へ行ける。
そういう呪いだったはず。
満足できるまで死ねないお呪いだったはず。
…いいぜ、飛び込んでやるよ。
私は底の見えない穴の縁で踏み切った。