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大掃除は主にキッチンだった。ガスコンロと換気扇が難所といいながら、シンクには朝食時の洗い物が無造作に置かれている。キッチンはすべて掃除だな。


しかしまあ、あの彼氏と毎年掃除していたのかと思うと、なんだか無性にイラッとした。そいつよりも綺麗にしてやる対抗心がわく。


コートを脱いで腕まくりをした。掃除は嫌いじゃない。とりあえず目の前の食器洗いから始めた。お湯が出る。温かい。


結子さんは部屋の換気をしたりキッチン用の洗剤やビニール手袋などを用意してせかせかと動いている。メインの掃除は俺がやっているけれど、そのための準備とかサポートとか、上手いんだよな。仕事に通ずるものがある。


換気扇とガスコンロのこびりついた汚れを見て、結子さんはまめに料理する人なのだろうと想像した。背後から掃除機の音が聞こえる。ガツンガツンと家具にぶつかる音がやけに荒々しい。なるほど、そういうところは気にならないんだな。結子さんの新しい一面を垣間見た気がして嬉しくなった。


しばらくすると、背後がしんとしている。掃除が終わったのかと振り向けば、ゴミ袋を広げたまま何かを見つめ、うーんと悩んでいる結子さんの姿が目に入った。


「どうしました?」


「いや、ね。元彼の私物を捨てるか返すか迷ってて」


「どれですか?」


「この雑誌とかTシャツとか……」


躊躇っている結子さんの手から強引にもぎ取ってビニール袋へ投げ入れた。あれもこれも、いらない。今すぐ燃やしてやりたい気分だ。


「ちょっと長峰!」


「ゴミ出しの日に出すか、このまま元彼に返すかは結子さんの自由です」


「……ゴミ袋で返されるとかどんな仕打ち」


「仕方ないですよ、結子さんのことをフッたんだから。返されるだけマシですよね? それに結子さんがされた仕打ちのほうがヒドイ」


クリスマスにディナーの約束して別れるとか、ありえないと思う。あの日の結子さんの涙は忘れられない。それに今日だって他の女と楽しそうにしてたし。


結子さんはゴミ袋の中身をしばらく眺めていた。まだ忘れられないのかな。未練はなさそうな感じだけど、実際のところどうなんだろう。


結子さんはふと顔を上げる。

わずかに瞳が揺らいだ。


「私みたいないい女をフッたんだから、捨てても文句ないわよね?」


「当然でしょ」


それくらい強気でいいと思う。

だって結子さんは本当にいい女なんだから。


恋愛対象外に絆される日

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