コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
時は流れ――模試当日。
教室からはカリカリとペンを走らせる音だけが聞こえる中、俺はチャイムが鳴るのを待っていた。
名前は……うん、ちゃんと書いてあるし大丈夫だろう。
そして……。
「そこまで!」
チャイムと同時に担任教師が声を上げる。
これにて模試は終了。
午前から始まった長い戦いが、ようやく終わった。
「終わったー!」
「マジ疲れたわ~」
「どう? できた?」
「最後の問題むずくね?」
「全然終わり切らなかったんだけど」
答案用紙の回収も済ませ、担任教師がそれを持って教室から出ていくと、生徒たちが各々話し始める。
弛緩した空気が流れる中、須藤が俺の席までやってきた。
「お疲れ様、九条。今回はなかなかレベルが高かったみたいだけど、どうだった?」
そう言う須藤の表情には自信が満ち溢れていた。
わざわざ俺に話しかけてくる時点で、相当自信があるんだろうけど。
「まぁぼちぼちだな」
「ぼちぼちかー、なるほど! ちなみに、勝負のこと忘れてないよね?」
「あぁ」
「それはよかった! あとは結果発表を待つだけだし、お互い気楽にいこう。別に負けたからって何かあるわけじゃないし、そこまで気負うこともないとは思うけどね?」
「そうだな」
須藤は負けたら地位を失うだろうが。
というか、元々俺にはノーリスクの勝負だ。
須藤との勝ち負けなんて実際どうでもいい。
「ちなみに、自信のほどは? 俺に勝つ自信は」
「さぁ、どうかな」
「あはははっ! まぁ結果を楽しみにしていようか。じゃ、俺はこれで」
そう言って立ち去る須藤の背中にも、自信が色濃く滲んでいた。
勝負は結果が出るまで分からない。
けど、おそらく……。
♦ ♦ ♦
※須藤北斗視点
フォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!
シャアッ!!! シャアッシャアッ!!!!!!
この勝負、俺がもらったぜェ!!!!
模試が終わった瞬間、俺は勝利を確信した。
今までの中で一番できた自信がある。
ま、そりゃそうだ。だって俺様が模試に向けて“勉強”したんだからな!!!
それにあの九条の反応!
随分と強がってたみたいだが、できていないに違いない!!!
パッと見、机に消しゴムのカスが見当たらなかったし、もしかしたら全然できてないんじゃないか?
ぷぷぷっ!!!
やっぱりアイツ、張りぼてのクソ野郎だったかwww
あぁーマジで可哀そうになってくる。
せっかく周りからの人気も出てきてたのにぃ?
俺がここでぇ?
その人気の火を消しちゃうなんてぇ?
ごめんね九条くん!!!
君が思うよりこの世界甘くないんだわ!!!
アハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!
ざまぁ見ろ九条!!!
結果を見て、思い知るがいい!!!
お前は俺様に到底及ばない雑魚だってことがなァ!!!!
フハハハハハハハハハハッ!!!!!!
♦ ♦ ♦
一日、また一日とあっという間に時間は流れ。
遂に模試の結果発表当日がやってきた。
「えー、校長先生。ありがとうございました」
今は一か月に一度ある全校集会。
出席番号順に並び、舞台をじっと見つめる。
「続いて、先日ありました全国統一模試の成績優秀者の表彰です。本校から一名、“上位百人”に入ったので紹介します」
教頭の言葉にざわつく体育館。
「上位百名⁉」
「それって全国で百位以内ってこと⁉」
「ヤバくね⁉」
「頭よすぎだろ……」
「ってか誰だよ」
「須藤くんじゃない?」
「ほら、勝負してたじゃん!」
「うわ、絶対そうだ!」
「須藤くんなら納得だね!」
「須藤くんすっご!!!」
俺の列の後方に並ぶ須藤に視線が集まる。
「それでは今から名前を呼ぶ生徒、舞台に上がってください」
教頭のアナウンスに、体育館の熱気が増す。
全校生徒の注目と期待が集まる中、遂にその名前が呼ばれた。
「二年――九条良介」
「――はい」
列を抜け、舞台へと向かう。
その途中、一ノ瀬が俺の方を見てニヤリと微笑んだ。
「(おめでとう)」
口パクでそう言われたので、ありがとうとこちらも同じように返す。
そして俺は舞台へと上がった。
静まり返る体育館。
舞台からは生徒たちの顔がよく見えた。
そしてもちろん、須藤の顔も――
♦ ♦ ♦
※須藤北斗視点
「続いて、先日ありました全国統一模試の成績優秀者の表彰です。本校から一名、“上位百人”に入ったので紹介します」
その言葉を聞いて、ぶるっと体が震えた。
……おいおいマジかよ!
全国上位百位⁉
…………絶対俺様のことじゃんか!!!!
えぇー俺すっご!!
ちょっと勉強しただけで、そんなにできちゃったのぉ⁉
もはや自分の才能が怖いわ。マジ怖い。ごめんな人類。
ってか、俺がすごすぎるあまりみんな自信なくしちゃわないかなぁ?
それが心配だわぁ!
周りもざわついてるし?
これは想像以上に九条に屈辱を与えられそうだ!!!
よし! 今日の放課後はとびっきりの女を抱こう! とにかく抱いて抱きまくろう!!!
「それでは今から名前を呼ぶ生徒、舞台に上がってください」
早く呼んでください教頭先生!
俺なんでしょ? そんなもったいぶらなくてもみんなわかってますから!
……でも、こういうときは事前に言われるもんだけどな。
ま、サプライズ的な?
全く粋なことするなぁ!
安心してください。
俺がみんなの期待に応えて、ファンサービスとかしちゃいますから!!
ささっ! 早く俺様の名前を高らかに言っちゃってぇ!!!
「二年――九条良介」
「……………………ふぇ?」