テラーノベル
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花梨
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「本当に?今更なぜーー」
とジョディはジェームズのデスクの前で手をつく。
「…その事件には私とキャメルは関わっていないが…」とジェームズは腕を組む。
「あれは立派な爆破テロよ」
ジョディも首を振る。未だCNNテレビを見たままの赤井をちらと見て続ける。
「当然犯人は狙撃ーーテロは未然に防げたし…」
「現場からはニコラスがお伝えします」
と言うテレビをキャメルが音をあげる。
ジョディは思わず懐かしくなるFBIの庁舎に目を傾けた。
「今朝方CNNに届いた声明によれば」
とキャスターは紙を見る。
「当時のイスラム派閥と対立していたグループが起こしたガソリンスタンドでの立ちこもり事件で、狙撃されたオマール派が、24時間以内に司法取引をした全員の身元を明かすように求めています…」
また、とキャスターは顔をあげる。
「そのオマール氏を狙撃した狙撃手を始め…司法取引に関わった捜査官の引き渡しを要求ーー要求が通らなければ庁舎を爆破するとのことです」
「長官の意見はどうでしょうか?」
キャスターは首を振る。
「現場にはテロに屈するなと地域住民が…」
カメラがたくさんのフリップを掲げた住民らを映す。わあっと彼らは騒ぎ出す。
「テロリストはこの国の人間ではない!」
「我々は勝利の国の住民だ!何を怖がっている!?」
「キャメル」
とジェームズが嫌そうにするのでキャメルは急いでテレビを消した。
赤井がようやく振り向く。
「出ていったって時差をどうする?」
「シュウーー」
とジョディもジェームズと同じ顔をして首を振り続けた。
「あなたテロリストに狙われてるのよ。どこまで彼らが情報を持ってるかもわからない…」
「その通りだ」
とジェームズは立ち上がって告げる。
「結果は同じだろう。また彼らには狙撃命令がじきに出る…君をそれまでかくまう義務が私達にはあるんだ」
「なぜ俺が隠れる?」
赤井は思いきり顔をしかめる。
はあっ、とジョディも腕を組んだ。
「死なれたら困るからよ。理由はそれで十分でしょ」
「とにかくだ。赤井くんには【護衛】をつける」
「ばかな」
赤井は笑いながら椅子によりかかった。
「自分の身くらい自分で守る」
「赤井くん」とジェームズが珍しく手を出して赤井の話を止めた。
「…護衛、というのは体のいい言い方なだけで。実際には……」
「ねぇー?もう時差で眠くてたまらないんだけどぉ…」
はっ!と赤井は椅子から立ち上がった。
この女ーーいつから後ろにいた?
赤井がそう思いながら胸元に手を入れた瞬間だった。すでに女は赤井に向けて引き金に指をかけて、ぷぅーとガムを膨らませて、割れて唇に張り付いたそれを舐めながらにやり…とした。
「レディ!よして!シュウあなたも!」
ジョディが赤井との間に入る。
「ジョディ~久しぶり~!相変わらず露出だけは高いねぇー」
「…」
赤井はまた眉をひそめてジェームズを見た。まさかこの、今さっきまでテニスコートにいました。という格好の女が?金髪のポニーテールと、かさかさ鳴るパーカーに手をつっこんで…護衛?という目で。
ジェームズは頷いて座る。
「あ。経理どこ?ビジネスで来させてもらったよ?わたしを海辺から引きずりだした罪は重いんだから…」
「おい」
レディは赤井を見た。
「ふーん。セクシーじゃん…彼を守ればいいの?ならやった」
あははっ、とくるくる回るレディ。
「…断る」
「赤井くん」
「こんな…」
赤井は思いきり速く手を出してその腕を掴む。ひ弱で会話もうまくできないようなやつにーー
レディはまた笑った。
「わたし、小さい頃に弁護士の家の隣に住んでたの」
でね、とレディは笑い続ける。雰囲気は最悪に心地悪かった。
「依頼人、本当に無罪なの?って…聞いてみたらね…」
す…とレディは赤井の首に反対の手を当てた。
「俺は依頼人を無罪にするのが仕事だ。って…わたしそのとき、世の中って子供ながらにわかった気がしたの…有罪か無罪かは関係ない…無罪にするのが仕事…」
「!」
赤井は顔を歪めた。ぐっ!と親指が鎖骨の間に入ってきて息ができなくなったからだ。
「その夜…怖くて布団から出られなかった…翌朝、彼は被害者の遺族に殺された」
ふっ…とレディは金髪を青い目に揺らす。
「…わたしは……あなたを守るのが仕事よ……シュウーーどんな形でも、あなたに手を出した相手は…殺すわ……いい?わたしはスナイパーでも特殊部隊でもない…」
【フリーランス】の殺し屋なの。
ばっ!と赤井はレディから離れて咳き込む。
「…自己紹介って、気まずいよね?でもこんな感じ?」
レディはくるり、と回ってみせた。
「いい車乗ってんじゃーん」
レディは乗り込むなり足をあげてまたパーカーに手を突っ込む。
「…黙ってろ」
「はあ?本気?あたしが今まで護衛したやつら、ちゃんと生きてるから安心して」
赤井はハンドルを握ったがすぐ隣をからだごと向けた。
「お前…」
「この辺は海ないんだね。ってかケーキ食べたい…」
ふう、とレディは首を傾けて金色の睫毛を伏せる。
信じられないーーからだなんか160センチもなさそうな小さなもので、直接やり合えばどうにでもできそうなのに、なぜか得体が知れなくて気持ち悪い。
喋り方も行動も、全てがそうだった。
「…黙ってるじゃん」
はっ、と赤井はして何故か納得いかないといった感じに車をだした。
「彼女いないの?」
「…」
赤井は赤身のステーキをテーブルに出して口を開こうとした。
「…関係あるか」
「あるよ!」とレディはステーキを切ってひとくち。
「柔らかっ!あはは…アメリカのスーパーにあるのは靴の底だったんだ」
赤井もテーブルにつき、ナイフを使わずにフォークで肉をモグモグとするレディを見た。
「いるならいるように振る舞うし、いないならいないように振る舞う。何もおかしなこと言ってないでしょ?」
「…」
ピンポーン、という音にレディの目付きが変わる。
「昴さぁ~ん!」という明らかな子供の声にレディはすぐテーブルにあるナイフを見たので、赤井はガチャン!と音を鳴らしてそれの上に手を置いた。
レディと手が重なる。
「…ただの向かいの知り合いの子供だ」
「ネズミが空を飛ぶって言われてるようなもんなんだけど?」
わたしをなんだと思ってるの?
ピンポーン、とまた再び鳴る音にレディは立ち上がって服を脱ぎだした。
「なにやっ…」
「子供なら危険はないわね?」
あっという間に下着姿になって胸を寄せると、すたすたと玄関に行く前に肉をかじり、モグモグしながらフォークを背中に持った。
まずいーーと赤井も立ち上がったときにはもう遅かった。
「いないのかなぁ?」
「でも電気ついてっぞ?」
「昴さーん!クッキー焼きすぎましたぁ!もらってくだ…」
子供は4人いた。レディはそいつらが下から上まで見るのを見つめてから、にっこり笑う。
「ごめんなさい。彼、今シャワー浴びてるの…」
ひとり端にいる子供が目をきょろ、とやってなんとなく赤くなった。こいつは勘がいいようだ。
「…せ」
「えっ?」
「早く渡せ!聞こえねーか!」
レディの背中にあるフォークに、赤井は心臓がどくり、どくり…としているのを感じながら彼らに見えない位置から首を振り続けた。
この女ーー…なんてことを…
「あ…」
女子がひとり赤くなりながらジップロックに入ったそれを高く差し出す。
「まぁ…ありがとう。じゃあ…」
「姉ちゃんそんな格好で玄関出たらあぶねーぞ!」
腹に死体でも入れているのかという少年が指差す。
「…優しいのね……」
言いながらレディは1番端の少年に目をやっていた。
「…お姉さん……片手に何を隠してるの?」
「!」
「…歩実は僕の隣だよ…右手を…なぜ出さないの…?」
レディはふっと笑った。
「…下着がずれてるの。急いで着たから…」
「すっ!すみませんでした!昴さんによろしくお願いします…!」
とそばかすの少年が頭を下げる。
「もちろん…」
「昴さん」と彼は見えない赤井に呟く。
「もし…今……【危険】があって声を出せないならーー何か…合図をして」
レディはふっ、と俯いて笑った。
「…またね……」
ぱたん、とドアを閉めてからレディはクッキーを胸に振り向いた。
「ご近所付き合いは良好のようね」
「バカ野郎!」
レディはクッキーをひとつかじり赤井に押し付けながらリビングに戻る。
「うん…美味しい。変なものは入ってないわ、24時間以内にわたしがひっくり返らなきゃね…」
「相手はまだ小学生だぞーー後で俺がなんて言われるかーー」
「ベトナム戦争のときは女もガキも武器を取ったじゃない。わたしに何だから、って言い訳は通用しないわよ。それより」
とレディは振り向く。
「あのガキは何?」
赤井ははっとしてすぐコナンに電話した。
疲れた。と赤井はリビングのソファに頭を預けて天井を見ていた。
なんだあの女……本当に【そういう】仕事なのはよくわかったが、コナンに強盗でも入ったのかと思ったと言われ、まあ、そんなもんだ…と思ってしまった。
「シュウ」
「おい」
赤井はすぐがばりとからだを起こした。
レディはバスタオルを肩にきょとんとしている。
「…気配を消して歩くな。俺が逆にお前にナイフ向けそうになるだろ」
「癖なんだもの。あなたみたいに派手にぶっぱなしたりはしないの」
一流は、ね…とレディは笑う。
「ところでこれ」とレディは赤井のシャツを着て袖を幽霊みたいにさせる。
「レーヨンじゃないのね。これパジャマの上着でしょ?コットンてこんなに気持ちいいの」
「…向こうは湿度が低いから」
と赤井は目を細める。
「レーヨンでもいいが、日本は高温多湿なんだ。んなもん着て寝たら汗で肌に貼りついちまう」
「よくわかりました」
レディは冷凍庫を開け、コストコで買ったでかいアイスの箱を見つけるとにっこりした。
「…お前……」
「ん?」
スプーンをくわえるレディは赤井を見る。
「…下着はどうした…」
「大丈夫」とレディはぺろ、と上唇のアイスを舐める。
「わたし1ヶ月くらい船の中で奴隷みたいに扱われてたときあるから。素っ裸、レイプされ放題。まぁ、時期見てたらそんな感じになっちゃったんだけどねぇ」
「…」
それの何が大丈夫なんだ?と赤井はもう意味がわからなくなる。
「何?興味出ちゃった?」
「バカ言え」
「いいよ?彼女いないんなら相手しても…ってか」
逆にしてよ?
「…」
「ん?」
レディは赤井の膝に座り、首に腕を回す。
「…おかしな女」
「人の脳みそ撃ち抜いといて言える台詞じゃないのにねーー」
お互いに…とレディは真顔になってからぱっと笑った。
「…わたし毎日テニスしたら海に行って、焚き火のそばでケーキ食べたら男とヤるの。毎日毎日…そうやって享楽に身を投じてないと、いつ後頭部に銃口があるかわからないからね…あなたもそうじゃないの?」
「此処は日本だぞ。毎日狙撃命令なんぞ出てたまるか…」
「でも人間じゃん?あなたが洗い立ての洗濯みたいな匂いするのは…本能が危険を察知してるからよ?セックスしないと駄目だって…いつまで持つかな…」
それが人間って生き物から【飾り】をとった真実……
レディは耳元で力強く囁いて、耳たぶを噛んで引っ張った。
「…ほら、逆らわないで」
「…?」
赤井はレディにキスされて不思議な筋肉の感覚がした。気のせいかと思ってもう1度してみる。口を開けたレディに同じようにして舌を合わせたとたんに赤井はびりっ!と感じた舌の裏に目を見開いてたまらずレディの首を持った。
「…何した」
言う間も筋肉がみしみしいって、からだの奥から物凄くーーそれはそれは【遺伝子】をかけてもいいくらいの賭けだと囁いてくる。
「頭が……」
グニャリ。と視界が歪んできて目の前で首を吊りそうなレディが笑ったのがわかる。
簡単に赤井の腕を解き、レディはかくん、と首を横にしながら顔を歪める彼の首筋を舐めあげる。
からだが……酷く怠い…何も……考えられない……ただわかるのは、レディがそこに手をやっただけで快感で叫びそうになったことだ。
「…マリファナは初めてなのね。コカインはやった顔してる…さっき唇に叩いておいたの…あなたは今、中毒状態…気持ちよすぎてぶっとびそうでしょ…ふふっ」
「よせ…さわ、るな…」
だが裏腹にさわられるだけで唸り声があがる。
心拍があがる。あがりすぎるほど。
「はっ…」
「大丈夫…あなたは」
レディは赤井を抱く。
「…わたしが…守ってあげる……」
「やめ…っ!」
レディが腰を揺らす。なかにつっかえながら入っていくそれに、痛い。と赤井は何度もうなされるみたいに首をばたばたさせて言った。ほとんど濡れてないから。
「はあ…」
とレディも同じ顔をするが、にやりとする。
「いいの…痛みだけは……人間しか長く感じられないからね…」
他の動物は、痛みを感じたら死ぬから。
「うあぁあっ!」
「いい子…入った…ふふ…んっ」
赤井は熱をだしたように赤くなった顔でレディに額をつけて荒い呼吸を繰り返す。
そのまま目の前のガラステーブルにレディを持ち上げて倒れた。
「…んあぁ」
肌が当たる音と、鎮まっているテレビにレディの上体がテーブルから落ちてそのうっとりした顔をうつしだすーー
「…Stoobitch(ばか女)」
「Asshole(ろくでなし)…んふっ」
レディは赤井を引き寄せた。
ああ……意味がわからないのに幸せだった。
ヤクのせいで足を地面につけないような感覚になって、救ってくれるのはただ快楽の為に腰を打つだけでーーそれ以外は何もわからない。
「あ、シュウ…もう出して。わたしがこれ以上【いじわる】したくなる前に…」
そんなの言われなくても、とレディが完全に上体を床につけて、赤井がガラステーブルに片足を乗せた瞬間だった。
「っく…」
ぶるぶるとからだが震える。レディはのけぞって高らかに笑った。
まるで獲物を仕留めたときみたいに…初めて覗いたわっかから、鹿と目が合ったときみたいなふうに。
気づいたらガラステーブルの横に赤井は転がっていた。ふと頭を起こすとレディが胸元に乗って寝ていた。
「…くそ」
まだからだが変だ。熱を出し終えたときみたいだ。赤井はまた頭を床に戻した。
マリファナなんて日本のどこで?と思ったが、彼女は【こちら側】の人間ではないのだ。
どこでもいいーーどうだっていい。この女に殺されかけたのは自分だ。
「ん…」
とレディがもぞ、として頭をあげる。
「…チクるぞ」
「いいわよ?その前にあなたを殺っちゃうんだから…そろそろ24時間経つ。狙撃令が出たなら…わたしの警護はおしまい…あら、ちゃんと振り込みされてる」
レディはスマホをいじり、肩をすくめた。
立ち上がろうとするレディを引っ張る。
「…どこに」
「え?」
「これからどこに行くつもりだ」
レディは天井に目をやった。
「さぁー…仕事で世界中に回るから、ひとつの場所には留まれないけど…」
そしてにやりとする。
「海があるところかな」
「…いろ」
「Huh?」
「ここに…ケーキも海もないが」
がさ、とジップロックをソファに手を伸ばして取る。
レディはきょとん、としてまた赤井の胸元に戻る。
「…どうしようかな?」
「迷うなら決定だ」
「ふふっ…ならビザの申請、ジェームズに頼んでよね」
観光じゃなくて【就労】のほうに…ね…
自分でも何故彼女を引き留めたかわからないのに、レディは嬉しそうにまた隣に寝転がった。
奇妙で甘い、同居生活が始まる。
To be continued…
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うわ、この第1話めっちゃアツいやつやん…!赤井さんがフリーランスの♡♡♡屋に護衛されるって設定からして既に胸熱なんだけど、レディの「守るのが仕事よ」って台詞からの♡♡♡屋の過去エピソード、ガチで震えたわ。最初はチャラい女かと思いきや、あの子供の前でのギャップとか、ヤク使ってまで赤井を落としにかかる強引さとか、キャラ立ちがヤバい。続きめっちゃ気になる!