テラーノベル
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夏休みが終わり、学校にはいつもの日常が戻ってきた。
教室には笑い声が響き、能力の話題で盛り上がる生徒たち。
「昨日さ、能力者が火事から子どもを助けたニュース見た?」
「見た見た! やっぱ能力ってすごいよな!」
そんな会話を聞きながら、朝霧湊は静かに席へ座った。
(……能力があるのが当たり前の時代か。)
あの日、能力者育成プログラムを終えてから数週間。
学校生活は以前と変わらないようで、少しずつ変化していた。
能力を活かして部活動で活躍する者。
アルバイトで能力を使い成果を出す者。
能力があることが、一つの「個性」として受け入れられていた。
そんな中、教室の窓際では椿小春が外を眺めていた。
窓の外に止まったスズメが、小さく鳴く。
「今日は落ち着かないって言ってる……。」
小春は小さく呟いた。
「何かあったのか?」
湊が尋ねる。
「ううん……まだ分からない。でも、いつもと様子が違うの。」
その言葉を聞いた湊は、訓練中の出来事を思い出していた。
動物たちは、人よりも早く異変を感じる。
あの時、小春の能力が皆を救った。
「気になるなら、覚えておこう。」
「うん。」
二人は顔を見合わせ、小さく頷いた。
その頃――。
能力犯罪総合対策本部。
大型モニターには、日本各地で発生した能力犯罪のデータが映し出されていた。
「能力犯罪は昨年比で十二%増加。」
「軽犯罪だけではありません。組織的な犯行も確認されています。」
会議室の空気は重かった。
「能力は人々の生活を豊かにした。」
一人の幹部が静かに言う。
「しかし同時に、新たな犯罪も生み出した。」
誰も反論しなかった。
能力社会は、便利さだけでは終わらない。
新しい時代には、新しい闇が生まれていた。
一方、その頃。
とある高層ビルの一室。
カーテンが閉められた薄暗い部屋で、一人の男が静かに窓際へ立つ。
五十五歳。
元貿易商。
能力反対組織『ZERO』の元代表。
今は、誰もが恐れる組織『エデン』のリーダー。
蓬莱良樹。
通称――ヴォイアント。
男は静かに目を閉じる。
次の瞬間。
視界が、一気に広がった。
街。
高速道路。
駅。
能力犯罪総合対策本部。
遠く離れた場所の景色が、まるで目の前にあるかのように映し出される。
「……今日も、平和を演じているか。」
その視線は、さらに遠くへ。
研究施設。
厳重な警備。
そして、一人の男。
イコル・ヤーレン博士。
博士は研究員たちと笑顔で会話をしていた。
「幸せそうだな……。」
その一言には、怒りとも悲しみともつかない感情が滲んでいた。
能力は、人々を幸せにした。
だが同時に、多くのものを奪った。
「だから私は……。」
蓬莱は静かに呟く。
「この世界を、終わらせる。」
部屋の扉がノックされる。
「ヴォイアント。」
「準備が整いました。」
蓬莱は振り返らず答えた。
「ああ。」
「始めよう。」
静かな声だった。
しかし、その一言を合図に。
能力社会を揺るがす最初の事件が、ゆっくりと動き始めようとしていた――。
コメント
1件
みぅ🤍🥀です。 第33話、読みました……。 夏休みが終わって日常が戻ってきたのに、その裏で確実に世界が動き始めてる感じ、すごくいいですね。湊と小春の静かな会話が逆に不穏で、小春がスズメの異変を感じ取るシーン、好きです。 それにしても蓬莱……ただの敵じゃない重さがある。彼の「終わらせる」って言葉、静かだけどすごく怖かったです。次が気になります……🌙
20
あまね🍡💠
75