「「キヨォ」」
「…………なんすか」
小腹が空いてきたお昼時、ガラの悪い年上の二人組が俺にドスの効いた声を投げかける。名前も顔も知れた相手ではあるが、これから何をしでかすかは未知の領域だ。
こいつらは俺の恋人のガッチマンと牛沢。前者は変態サイコパスおじさんで、後者はビビリチンピラおじさんだ。そしてこの二人と付き合っている俺は、天才イケメンお兄さんことキヨである。二人からの猛アタックに根負けして付き合ったのだが、ほぼ毎日と言っていいほどエロいことをされ辟易しているところだ。二人とも優しいし甘やかしてくれるし面白いしかっこいいのは長所だが、俺に対する性欲が底無しなのが玉にキズである。
そんな二人から話しかけられて嫌な予感がしない訳が無い。今度は何をしでかすのか…知りたくもないが教えられる羽目になるだろう。
「今日、何の日か分かる?」
思った以上に普通な質問に拍子抜けする。いつもなら『◯◯プレイしよ〜』とか『気持ちいいセックスの方法調べたから今からやろーぜ』とかドン引きどころか呆れるくらいのイカれた会話しか最近してこなかったからか、凄くまともに感じてしまった。
「え、今日?なんかあったっけ?」
「そ〜、大事な日だよ?忘れちゃったの?」
「マジか、忘れるとかひでーなキヨ」
あれ、記念日か何かだったっけ?でも特にこれと言ったこともない平日だと思うが、そんな大事な日なら忘れないと思うけどなぁ、なんて思考を巡らす。
「…………いや、マジで覚えてない…ごめん」
「もぉ〜〜…、キヨったら…」
「はあ…忘れっぽいなぁホント」
明らかに肩を落とすガッチさんと腕を組んでソファーに座っている俺を見下すうっしー。よく見たらポリ袋を肘にぶら下げている。記念日だからパーティーか何かするつもりだったのだろうか。そう思うと余計に申し訳なくなってしまう。
「ごめんって…何の日なの?」
「「ポッキーの日だよ」」
「…………………」
前言撤回。やはりこいつらは欲の塊だ。
「だからポッキーい〜っぱい買ってきたよ」
「折角の“記念日”なんだし、しよーぜ」
「…甘いの無理、しょっぱいのがいい」
「そう言うと思って…」
ガッチさんがぶら下げていたもう一つのポリ袋を漁る。中から出てきたのは二つの緑のパッケージのお菓子。
「じゃがりことプリッツも買ってきちゃった」
「んじゃ、ルール説明はいらねーよな?」
「は!?ちょっと待てよ!俺はやるつもりねぇし!」
ソファーの前に移動して前のめりになるうっしーの肩を押さえる。なんで参加する前提なんだ。必死に押し返すが、膝が股に入り込みグリグリと股間が刺激され力が抜けた。そして両手を頭の上で固定されると、唇が塞がれる。
ポッキーゲーム中でもないのに結局キスするのかよ…!
「…っ、は、せめてゲーム中に…!」
「おめーがうるせぇからだろ、ポッキー咥えっから待っとけ」
うっしーは空いている右手でポッキーを一本取ると、自分の口に咥えてクッキーの部分を此方に向けてきた。腕を動かして抵抗するが、ガッチさんから更に腕を固定される。もうほぼ動かせない。はあ、とため息を一つ吐き、顔を上げてポッキーの先端を咥える。
「じゃあ一試合目、はじめ!」
ガッチさんが呑気に行司を執ってポッキーゲームが始まってしまった。取り敢えずうろ覚えのルールを思い出す。確か先に口を離した方が負け、だったか?別に負けてもリスクは無いし、意地を張って咥え続けたらこいつらと何回もキスすることになる。目と鼻の先にうっしーの顔。意外に整っている顔に苛立ちが募る。離そうかな、とぼんやり考えていたら、軽いリップ音が部屋に響いた。
「…あ」
「はい、キヨの負けー」
「はぁ!?なんで」
「どっちも離さなかったら食う量が少なかった奴の負けなんだよ」
「知らねえよそんなん!!!」
うるせえ、とわざとらしく耳を塞ぐうっしーを軽く蹴ってやる。少し唸ってからガッチさんが前にやって来た。
「俺のことは蹴らないでね」
「………蹴るかも」
「え〜〜」
ガッチさんはうっしーと同じ動作を繰り返して俺にまたポッキーを向ける。仕方なく再びパクリと咥えた瞬間、目の前からサクサクと食べる音が聞こえた。
(…はやっ…!)
呆然とそれを見ていたらまた唇が湿る感覚がした。口先のポッキーがガッチさんの舌に掬われ、俺の舌までも奪っていく。いきなりの深いキスに対応が追いつかず、情事を思い出してしまった腰がカクンと動いた。ガッチさんに気付かれたのか、またしても膝による股間の刺激に背中がゾワゾワと粟立つ。唾液が、舌が、息が絡んで酸欠を起こしそうだ。必死にガッチさんの背中をバンバンと叩いて解放を促す。
「ん゙ぅ〜〜〜〜!!!」
「ん〜〜………っ、ぱっ」
「はぁ…っ!、はぁ、ふぅ〜〜…ながいっ!ばか…!」
「あ〜…ふふ、可愛いからつい、ね?」
「まだ沢山あんぞー……………」
前触れなく急にうっしーが黙り込む。背後にあるから表情が分からない。どうしたんだ?
「…?どしたの、うっしー…?」
「…やっぱポッキーゲーム中断」
「えっ!?なんで!?まだあるでしょ?」
ガッチさんが残念そうに抗議する。確かに、まだ二本目だ。一箱どころか一袋目も終わってないだろう。
「だって、ほら」
うっしーの腕が俺の肩から伸び、一箇所を指差す。
「キヨ勃ってる」
「え…、あ」
「……あららぁ〜…」
最初にほぼ毎日エロいことをしていたと言っていたが、最近は忙しくてご無沙汰だったのだ。俺は別に二人とのセックスなんか好きじゃなかったのに、キスされただけで思い出して、勃って、しかもバレるなんて。恥ずかしすぎる。
「ち、ちがう!勃起すんのは生理現象だろ!これは正常な反応なの!!」
「まあまあ、一旦それは置いといてさ…キスと膝だけで感じちゃったんでしょ?可愛いね、ほんと」
「最近シてなかったもんなぁ…?ちゃんと優しく抱いてやっから…寝室行こうぜ?」
「さっ……」
ポッキーの日だね!イチャイチャしててね!
コメント
5件
わぁーーー🤗🤗🤗🤗!!今回は小説なんですね!これも良き👍日本にポッキーの日があって本当に良かったと改めて思いました!!

やばい!!小説ですか!?😳私ポッキーの日なの忘れてました🥲無事にテストが終わったのでご褒美として見てました🫶ぜひイラストでも見てみたい…😍
ピャァァァァ!!!!消えてなくなってしまいますけども!!!!え?!?!謎にキレてしまい申し訳ありません ┌(┌^o^)┐→┌(^o^≡^o^)┐→┌(┌^o^)┐ホモォ→ドドドドドドドド ========┌(┌ ^o^)┐ホモォ !!!◁-----私の実態 こうやって毎回作品見させてもらっています……✨