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喋るおにぎり🍙
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—全ては、小峯玲にかかってきた一本の電話から始まった。
『小峯さんにしか頼めないんです。お願いします…ッ』
恋人のアドミゲス・ハンがボスを務めるギャング—ハンタスマの部下が、電話口で何やら切羽詰まった声で話すものだからすっ飛んで来てみれば、小峯は目の前の状況に一瞬唖然とした。
アドミゲスが、すでに地に伏している男にドカドカ鉛玉を打ち込んでいるのである。それはもう一切の容赦も慈悲もなく。
なるほど、今日はどこのギャングも抗争する日じゃないのに、先程から町の一角で響いている銃声はそれだったのか、と小峯は独り言ちた。血は男の付近からあちこちにまで飛び散って、薄汚い水たまりを至る所に形成している。
そんな一見非人道的で残酷な光景を眼前にしても、小峯は一端のギャングのボスである。すぐに状況を整理し一つの可能性を弾き出すと、小峯の背後にいたアドミゲスのギャングメンバーの一人で、此度小峯に助けを求めた張本人である畳かえるに尋ねた。
「…ヤクか?」
「そうです。エースハイを飲んでるのを見たので…でも、おかしくて」
「どう?」
「見ての通りハンさん、もう死んでる心無きをさらに滅多打ちにしてて…
今までも、何度かエースハイを使ったことはあったんですけど、こうなったのは今回が初めてなんですよ。」
たしかに、エースハイはただの鎮痛剤だ。それを飲んだだけで、ああなるとは考えにくいのはその通りである。
「…別の薬も飲んでんじゃねえの」
「別…あ!」
そういえば、これも飲んでいましたと。かえるが差し出した空の袋の表紙には、この街では見慣れない文字が印字されていた。
しかしこういった道も長い小峯からすれば、この手で使うような薬の種類くらいある程度分別がつくもので。
「…これ興奮剤だな。アドレナリン増やすために飲んだんか」
「ハンさん、今日すごく撃たれて出血が多くて…それでかもしれません」
ならハッピーパウダー使えよ、とため息を吐いた小峯だったが、ギャングは基本それを実践で使うことはほぼ無い。売る方向で資金稼ぎをするのがメインの使い道だし、効果も薄いからか5分経てばまた血が流れ始めるので、使い続けるよりもアドレナリンで痛覚を鈍らせて、しばらくしたら倒れればいいとでも思っているのだろう。向こう見ずというのも困りものだ。
(倒れるまでの間でこれじゃ、ただの狂戦士だろ。)
だが、今回はアドミゲスの部下たちが小峯を頼るのも、なんとなくどころかしっかり理由がある。彼の部下たちの中でも自身のボスが小峯と懇意であることは周知の事実であるし、長らくの戦友でもあるからこそ、ボスの危機に連絡を入れたのだろう。
当の本人は弾が切れてもすぐに別の銃に取り換えたりリロードしたりを繰り返し、それすらもなくなった今は素手で殴る蹴るを繰り返している。これは流石に見ていられない。
「んじゃ、行ってくるわ」
「き、気を付けて…!」
後ろの方でぷるぷる震えている部下たちを横目にして、ゆるりと近づく。
「アドミく~ん、帰るぞ~」
「—ッ」
「おっとっと、ぅ」
ビッ、と鈍い音がした。小さく鋭い痛みが小峯の手の甲に走る。アドミゲスの手にはいつのまにか小型ナイフが握られていて、大方隠していたのだろう。獣かよ、いやはや感心だナ、と小峯は頭の中で笑った。荒い息をするアドミゲスの開き切った瞳孔が小峯を捉え—
次の瞬間には、顔に落ちていた暗い影がふっと取り除かれるように、いつものアドミゲスに戻っていた。
「………は?こ、こみね?」
「はいはい、小峯さんですよ~っと。そいじゃ失礼。」
「っぇ、あ」
状況を把握できずに硬直しているアドミゲスをひょいっと腰のあたりから掬い上げて、軽々と肩に乗せる。小峯は「じゃ、治してから返すわ」と部下たちの方に笑顔で手を振る。じんわり感じる冷たい気配に背筋を伸ばしながら「ハイッ!」と各々が返事をしたのを確認して、小峯は車に乗って颯爽と去っていった。
場所は変わり、アドミゲスのギャングアジト。幸いにも現在構成員たちはすべてを察したのか偶然なのか、全員サバゲーにお熱だったがゆえに、アジトには人気がなかった。
ソファに転がされたアドミゲスは冷や汗をかきながら正座をしながら座り込んでいた。到着からずっと小峯は黙ったままである。あまりの沈黙の気まずさに耐えきれなくなったアドミゲスの口が重々しく開かれた。
「…ごめん」
「何が?」
「ッスー……」
先程から真顔の相手から怒りを察したアドミゲスが、気まずそうに息を吸った。
「…周りが見えてなかったからとはいえ、手の甲切ってすんませんでした」
「いーよ別に。すぐ避けたんで浅いし。
それより、ようこんなになるまでやったもんだな。」
「い゛ってぇ!」
ぐ、と太腿を軽く押す。それだけでもアドミゲスは表情を歪ませてしまう。だが依然として小峯の表情は変わらず、仄かに暗いままに、懐から小振りの箱を取り出した。ここへ来る前、救急隊から渡されたキットである。
まずは病院、と救急隊の元を訪ねた当時、事前に連絡を入れていた小峯のおかげで—二人を見たノビーラングが何故だか顔を赤くし飛び上がったが—モノの数秒でアドミゲスは神輿の如く担がれていった。治療が終わった後、一日一回使え、と奥から出てきた命田守からこれを渡されたのである。中には軟膏やら包帯やらがまとめられている簡易的な救急キットで、なぜこれをと小峯が尋ねたところ…
『太腿あたりなんだが…かなり裂傷が深かったもんでな。こちらで縫合したが、下手に動けば開くかもしれん。その時は応急で使ってくれ。』
…とのことであった。全く俺の恋人さんは無茶をするもんだ、と思いながら小峯が眉間を揉んでから話を続けた。
「別の町から流れてきたモン使うなんて、お前らしくねーな」
「…偶にはそういうときもあんの。」
「そんで碌にヤク抜きもしねーからあんなになったわけだ」
「悪いかよ」
「悪いね。それでテメェの身体ボロボロにしてちゃ元も子もねぇんだよ、あ゛ぁ?」
ピリッと空気が張り詰め、そこいらの構成員だったらミジンコみたいにちっちゃくなってビビり散らかしてしまいそうな怒気が部屋に立ち込める。しかし彼の目の前にいる男は、ロスサントスに来る前からの馴染みかつ恋人である。
最近怒った場面をあまり見たことがなかった分多少たじろぎはしたものの、アドミゲスは気まずそうにただ視線を横に逸らす。
が、直後小峯がアドミゲスの顎を掴み、ぐいと向かせて口づけた。
「——!?!?ん、ッ」
突如与えられた刺激に混乱している間にも口内は暴かれ、ちゅ、とリップ音が何度か響く。そうして暫く経ってから、小峯はおもむろに顔を離した。銀糸が橋となって伝う。すっかり意気が上がったアドミゲスをサングラス越しに小峯が見つめ、ぽつりと言った。
「—何より俺の相手しなくなんのが、いっちばんムカつくんでね。」
「……え?はい?」
「怪我治ったらとことん構ってもらうぞー」
怒気はそのままに、小峯は立ち上がってひらひらと手を振りながらアジトを後にした。
この傷が癒えた後、己の身にこれから何が降りかかるのか。明確な言葉にされずともわかってしまい、一人頭を抱え絶望するアドミゲスなのだった。
王道ジャンル(?)に手を出してしまった。だが悔いはない。以前オメガバ系を用いたいという話をしたが、違う形となってしまったのは大変申し訳ない。より王道のそれはまた次の機会に。余談だが、暴走状態の相手を止めるというシチュも私の癖である。
さて、暫く更新がなかったことに関しては申し訳ない。何分リアルを生きるのに精いっぱいであったもので。それに字数もだいぶ減ってしまったし、語彙力は落ちた。大方誤字脱字が多いと思うが、大目に見て許していただきたい。
これはもう年齢制限モノではないだろうとは思ったのだが、内容が人を選ぶものではあるから一応だ。
今後続きを書くかは、私のリアルの多忙具合と努力次第である。気長に待っていただける方は待っていただきたい。
それでは、ここまでご覧くださりありがとうございました。
コメント
6件
更新ありがとうございます! いつも素晴らしい作品をありがとうございますー!
