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雨彩れえ
10
#あめいろリスト❕💎
こちらは卯月めあさんとの合作の後編になります!
未読の方は前編からお読みください……!
甘酸っぱい温度感とCPに合ったシチュエーションが特に素敵な書き手さまです♪
もし卯月めあさんの作品を読んだことのない方がいましたら、ぜひ読んでください!!
⚠注意⚠
・水赤(stxl)
・irxs桃さん、青さん登場します
5行下から本編です
「自分で持てるから……!」
「なんで?」
「なんでじゃない!」
昨日と同様、今日も事務所のエントランスまでやってきて、荷物を代わりに運ぼうとしてくるれる。
そいつを押しのけながら移動するせいで、いつもの倍くらい時間がかかった。
「つかれた……」
これから一日がはじまるというのに、すでに体力のほとんどが失われた。
不満げな顔をしたれるがあとから入ってくる。
「昨日は任せてくれたんに……」
「……さすがにしつこいから」
しつこいと言っているのに、また近寄ってくる。
その手を払い除けて、今日使う資料を机の上に広げる。
……れるさんがおかしい。変すぎる。
いくら『れるが姫扱いしてくれない』と言ったからって、普通ここまで絡んでくる?
ダンス練習の最中もじっとりとした視線を感じる。その視線に体が丸焦げにされそうで落ち着かない。
休憩時間になると、れるさんに話しかけられる前に、急ぎ足で部屋を出ていった。
休憩時間が終わるころ、コンビニから部屋に戻ろうとすると突然大雨が降ってきた。朝は晴れていたから、傘なんて持ってきていない。
「もー……なんで急に……」
びしょ濡れの手で扉を開く。いつもより扉が重く感じる。
「ちむ……!? めっちゃ濡れとるやん」
どこから現れたのか、れるは僕が事務所に入った瞬間から駆け寄ってくる。
びしょ濡れの僕を見て、一目散に廊下を進んで奥の部屋へと連れていく。
使ったことのない部屋。何のために用意されている部屋か分からない。
「え、ちょっ……」
そこに入ってすぐ、 れるは何食わぬ顔で、僕の上着を脱がせようとしてきた。
「自分で脱げるから!」
それに、替えの服なんて持ってきていない。そう伝えようとして、れるが先に開口した。
「大丈夫、れるが持ってきてる」
そう言って自分の服を見せてきた。……持ってきてるというより、おそらく事務所で保管していたやつだ。
手を止めようとしないれるさんと、口先でしか反抗しない僕。
「ん……、っ」
れるの指が僕の腰に当たる。濡れた冷たい肌には、あまりにも熱い。
変な吐息ばかりがこぼれる。
れるの指がピタリと止まった。
「…………」
「……? れる、さん?」
「……やっぱやめとく」
「え?」
「自分でやって」
「は、?」
朝からしつこいほど絡んできていたれるさんが、急にしおらしくなった。
言葉通り手を離して、そのまま僕に背を向けた。
「なんでやめるの?」
着替えを手伝うなんて、僕相手だからしてくれることだと思ったのに。
ちむは、特別扱いの対象じゃないってこと?
そんなめんどくさいことを聞けるはずもなくて、ただこっちに戻ってくるのを待つしかなかった。
れるは黙って、向こう側を見つめている。
窓の外は、未だにぱらぱらと雨が降り出している。れるの考えていることも、暗い雨雲に隠れて全く見えない。
「……それ以上触ったらやばい気がする」
「なんで、今さら」
距離感がおかしいのなんて、今に始まったことじゃない。特にここ数日は。それを理由に遠ざけられるのは腑に落ちない。
「……ねぇ」
れるさんが逃げる前に、手首をつかまえた。半ば強引に振り向かせる。その手の温度と、顔色に今度はこっちが息を呑む番だった。
「…照れてるの?」
「……だって、ちむが変な声出すから」
「な……っ、ほんとに照れてんの?」
その熱さが伝染るように、自分も火照っていくのがわかる。冗談で聞いたのに、真顔で言われては返す言葉がない。
また静寂が訪れる。でも、さっきの空気とは明らかに違っていた。
時々熱っぽい視線が交差して、外れる。でも、またすぐに吸い寄せられてぶつかり合う。
「…ねぇ、寒いんだけど」
意識を塗り替えるために、わざとらしく両手を擦り合わせた。
「れるの服、貸して……姫扱いしてくれるんでしょ?」
そう言うと、やっとこっちに歩み寄ってきた。
早くしろと視線で訴える。
観念した様子で、れるは僕の服に手を掛ける。れるは濡れてないはずなのに、その手はわずかに震えている。
「……緊張しすぎでしょ」
「うるさい姫やな」
着ていた上着が床に落ちる。濡れた上着が小さな水たまりをつくる。
れるが僕にトップスを着せる。その瞬間から、いつもと違う柔軟剤の香りがして落ち着かない。
袖に手を入れてあったまっていると、れるは僕のボトムスのベルトに手を掛けた。その手首を慌てて掴む。
「は!?下はいいよ、自分で脱げるから!!」
反射的にその場で座り込んで、ベルトを手で抑える。脚を内側に閉じて触れないようにする。
自分の袖が目に入る。友達の服を借りているだけなのに、いけないことをしている気分に襲われる。
「……ちむのほうが緊張してるやん」
「だって、それはちがうじゃん……」
れるもしゃがんで、僕の顔を覗き込んでくる。
「……手、どかして。寒いやろ」
本気で心配するような目つきをされて、何も言えなくなってしまった。
手を横に捌けると、れるは再び僕に手を伸ばす。
カチャリとベルトの取れる音や、布のすべり落ちる音が耳をくすぐる。
「っ、………」
どこを見ていればいいのか分からない。
その指が脚に触れると、それだけで肩が小さく跳ねてしまう。
「あのさ、……」
限界に達して呼びかけようとしたとき、扉ががちゃりと開いた。
「うわぁっ、お前ら何してんの……!?」
「ないこくんといふさん? どしたの?」
「『どしたの?』じゃねーよ! 2人で何してん!?」
「あ……」
入ってきた2人の引きつった顔を見て、やっと気づいた。
密室で至近距離で向かい合って座って、服を脱がせている状況に。
「ちがうから! 着替えさせてもらってるだけだから!!」
「いや、それもおかしいやろ……こいつら距離感どうなってん……」
頭を抱えるないこくんと、笑いを堪えきれていない様子のいふさん。
「いやーまさかほんまに付き合ってるとは」
「だからちがうって!」
「まぁまぁ、俺らはいいと思うよ……まぁ公共の場ではほどほどにな……?」
もう、この2人全然信じてくれない……!れるさんも弁解してくれないし。
お邪魔しました〜と言いながら、そそくさと退室していく、ないこくんといふさん。あとでちゃんと説明しないと……と考えながら、今は目の前のこいつに向き直る。
『付き合ってる』……あの2人の言葉をかき消すように、話題を切り替えた。
「……てか、れるさんの服ちっちゃい」
「はぁ?身長数センチしか変わらんやろ」
「いや全然違うから!」
「変わらんて、ほら」
れるさんはちむを立ち上がらせて、横に並んだ。身長を確かめようと、手をちむの頭に乗せてくる。
「やめなよ、れるさんのほうが低いんだから」
そう口にしたとき、れるさんの顔がほぼ重なりそうな位置にあった。
「……やめてよ、近いんだけど」
弱々しい声がもれる。れるさんの瞳がそれをつかまえる。
「また付き合ってるって勘違いされるから?」
「……ちがうよ」
付き合ってるって思われるだけならなんてことない。
むしろ近い存在になれるなら勘違いされるのも本望だって言ったら、笑われるかな。
息を吐きながらしゃがんだれるさんの横にぴったりと座る。
「ねぇ、れるさん……」
「……ん?」
「ちむとれるさんて、距離感おかしいのかな」
れるから借りた、自分では選ばないような水色の袖を見つめる。
「まぁ、おかしいかもな」
「……そっか」
そこで会話は途切れた。
2人とも口では『おかしい』と言いながらも、僕はれるの隣へ移って、その肩に頭を預けた。振り払われもしない。
床に置かれたお互いの手が重なり合う。一度頭を浮かせて横を見ると、すぐ近くで目が合った。
気づけば、床に映る2人の影がひとつに重なっていた。
触れ合った唇からじんわりと焼けるような熱が吹き込まれる。
やっと影が離れると、さっきまでの熱をかき消すように口を尖らせる。
「ほんと、変」
「何が」
「友達どうしで、その……ちゅーするとか」
「……ちむのせいやから」
「はぁ?」
反抗的な口ぶりをしながらも、その言葉に笑みを隠せない自分がいた。
僕のせいで、れるのせいで、お互い変な方向へ曲がっていることが。
でも、この距離感が僕らなりの特別なのかもしれない。
「…………ちむ」
「……ん」
そっと名前を呼ばれて応えるように、再び2人の影が重なり合った。
今度は息がつまるほど、さっきよりもずっと長く、深く。
外の激しい雨音も聞こえないほど、そのぬくもりにしばらく溶け込んだ。
コメント
1件
あー、これ……距離感バグってる2人の空気がエモすぎてしんどいわ。れるの「それ以上触ったらやばい」発言からの、照れ隠しで逃げたと思ったら逆にちむが掴んで引き寄せるところ、めっちゃ好き。傘もない雨の日の密室と、部外者にバレる絶妙なタイミング。青春の生々しい熱が画面越しに伝わってきて、胸が詰まったよ。続き、めっちゃ気になる🔥