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この部屋から君の物がなくなってもうすぐ1年。
クローゼットを開けるたびに思い出す。
忘れたくても忘れられない香り
柔軟剤を変えようと何度も思った。
変えた事もあった。けど、結局この香りに戻ってしまう。
でも、その柔軟剤ももうなくなりそうだ。
そう思って車のカギを持って出かけた。
どれにしようか迷っていると、後ろから懐かしい香りがした。
思わず振り返って見ると、そこには君がいて
気が付いたら声をけてる俺がいた。
『まだ、その柔軟剤つこてんの?』
「えっ?康二?」
一瞬、びっくりした顔を見せる君。
「康二こそ。」
そう言って俺のカゴの中を見ると同じものを買っていた。
『好き匂いやし。そっちこそ』
「私だって好きな香りだから」
『今日、休みなん?』
「うん。康二もオフ?」
『まぁな。この後、時間ある?うちでコーヒーでも飲んでいかん?』
「うーん。いいよ。久しぶりに康二の淹れたコーヒー飲みたいし」
そう言って、あの日の懐かしい気持ちがよみがえる。
お互いの事をたくさん話した。
しばらくして、俺の家のクローゼットはまたあの柔軟剤の香りがする服でいっぱいになった。