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探索員登録をチーム莉子はつつがなく済ませる。
「ダンジョン内での事故等による負傷、死亡についての責任は全部自分にあるんで、よろしくお願いします!」と言う承諾書に毎回サインさせられる探索員たち。
六駆おじさんのせいで忘れがちだが、彼らは命をかけて仕事をしている。
「はいはい、ステキなサインありがとうございまぁーす! いやぁ、もう、サインひとつとっても風格が違いますよねぇ! 本当にステキ!!」
山田林から色濃く漂う、本田林の血脈。
むしろ、本田林が山田林の血脈に目覚めたのか。
そう言えば、あの男も最初はやる気のないふて腐れた役所の人だった。
「えっと、更衣室はー」
「クララ先輩! まだ装備受け取ってないですよぉ? うっかりしちゃって!」
「みみっ! クララ先輩、勇み足です! 芽衣には絶対にできない技です!!」
山田林が万事手回しよく「こちらに届いておりますー!!」と、莉子から順番に、クララ、芽衣とカラフルな装備の入った箱を差し出す。
そんな中、六駆の箱がいつもと違う事に3人娘はすぐに気付く。
「六駆くんの装備、もしかして忘れられてる? 南雲さんに連絡しなくちゃ!」
「と言うか、間違えられてるんじゃないかにゃー? なんか黒いしー」
「みみっ……? 六駆師匠の装備って、壊れたような記憶があるです?」
そう、芽衣ちゃんが正解。
ルベルバック戦争で阿久津浄汰と戦った際、阿久津に苦戦したと言うか、お金に負けたと言うか、とにかくなんやかんやあって長く連れ添った灰色の配給装備が無残にも粉々に砕けたのだ。
そして、戦争後に南雲が言った。
「新しい装備を作ってあげる」と。
彼はルベルバック戦争の後始末をしながらも、クララの新しい装備の弓を作り、さらに六駆の新装備までこしらえていた。
お忘れの方のために声を大にして言っておくが、南雲修一は監察官の中でも知恵者として勇名を馳せており、その能力は極めて高い。
こと研究分野においては、監察官の中でも一二を争うトップランナーと言ってもまったく問題ないのである。
「ああ、南雲さんが間に合わせてくれたんだ。別に、僕は私服でダンジョンに入っても良いって言ったんだけどさ。南雲さんが、私が怒られるから絶対装備を着てくれ! ってうるさいんだよねぇ。どれどれ」
箱から取り出した六駆の装備は、黒かった。
中学生から高校生にかけて、男子の中に眠る男心をくすぐり続ける黒と言う色。
時に全身黒づくめの私服を着て「……キマってるな」と頷く者も後を絶たない、人気のカラーリングである。
首にはシルバーのネックレスがあるとなお良い。腕に包帯を巻くのも可。
「あっ、六駆くん、何か落ちたよぉー。手紙かなぁ?」
「これまた南雲さんも忙しいのにご丁寧な事で。えーと、読むね。この装備は山根くん主導のもと作り上げた耐逆神流スキル装備です。以下、山根。逆神くんのド派手なスキルを放つ際の煌気に反応して、銀色に発光します。配給装備では耐えられなかった逆神くんのむちゃくちゃな煌気運用にも耐えられる作りです。名前は、『漆黒の堕天使』です。だってさ」
3人娘はすぐに察した。
「「「山根さん、装備でふざけられなかったから名前でふざけてきた!!」」」と。
だが、当の六駆くんの反応はと言えば。
「漆黒の堕天使……! なんだろう、この心の中が熱くなる言葉の響きは!!」
「あ、六駆くん、そーゆうところはまだ男子っぽさが残ってるんだ」
「分かるぞなー。パイセンの同級生にもいたよー。漆黒とか、深淵とか、暗黒とか黒炎とか。なんかやたらと黒にこだわる男の子!」
「芽衣の前の学校にもいたです! 冬は黒いロングコート着るらしいです!!」
六駆おじさんが満足しているならば、それで良いだろう。
装備も受け取ったことである。ならば、お着がえタイム。
彼らは更衣室へと案内されて、戦いの装束に身を包む。
◆◇◆◇◆◇◆◇
六駆の新装備は黒い。当然莉子マントもあり、それも黒い。
左胸には「莉子」としっかり刻まれており、恐らく山根の仕事だろうと思われるが、なんだかエンブレムみたいになっていた。
探索員パーティーが自分のグループのエンブレムを作る事は別に禁止されていない。
むしろ、ある程度の有名なパーティーになれば「月刊探索員の取材の時に映えるからエンブレム作ってくれ」と言われる事もあるそうな。
だが、監察官室の人間に当人たちには無許可でエンブレムを作られたのは、多分チーム莉子が初めてだろう。
改めて、六駆の新装備の左胸に刻まれた「莉子」の文字を見てみよう。
周りは苺とレーザービームで飾られており、割とオシャレではある。
が、しかし。
「ふぇぇ。なんでわたしの名前がみんなの装備に付いてるのぉー!?」
だいたい予想できたが、山根のサービスで既存のメンバー装備にしっかりとお揃いの「莉子エンブレム」が刻まれていた。
六駆の体にはいくら「莉子」の文字が増えても「えへへへへ」で済ます彼女だが、クララと芽衣の胸にも自分の名前があるとなんだか複雑である。
自分の胸の「莉子」はすごく綺麗に見えるのに、芽衣の「莉子」は少し歪んで、クララの「莉子」はなんだかだらしなく伸びているのがことさら彼女の心をモニョらせた。
こうして、チーム莉子の激しい自己主張が始まった。
この先は、もう六駆単体ではなく、パーティーメンバーの誰を見ても「あ、この人は莉子さんと言うのかな?」と思われること請け合いである。
どんどん有名になっていく莉子さん。
「良いじゃない! カッコいいし、一体感も強くなるし! なにより、莉子の名前を背負って戦えるって、僕は嬉しいな! 僕にとってダンジョン攻略は莉子との出会いから始まってるんだからさ!!」
最近は無自覚に莉子さんの控えめな胸を矢で射貫くのが上手くなってきた六駆おじさん。
今日はバッチリ。美しさすら感じるスナイピング。
「そ、そうなの? むーっ……。恥ずかしいけど、六駆くんがそんな風に思ってくれるなら、うんっ! いいかな! ちゃんとわたしの名前を守ってよぉ?」
「もちろんだとも! 任せといて! ねぇ、クララ先輩! 芽衣!!」
「あ、うんー。やー。何と言うか、莉子ちゃんはいばらの道を歩んでおるぞなー」
「みみっ。芽衣には恋が早い事を教えてくれる、莉子さんはステキな先輩です!」
支度が済んだら、ダンジョンの入口へと向かって、山田林に防壁を開けてもらったらいよいよ本番。
諸君はこの物語が何の話か覚えておいでだろうか。
そう、ダンジョン攻略をする話である。
ずいぶんと久しい気がしてならないが、それはさて置き。
なるべく遠くにさて置き、いざ、有栖ダンジョン攻略開始。
今回の攻略ではどんな出会いが待ち受けているのだろうか。
どんな金目のものに、金の亡者の悪魔がどんなリアクションを取るのだろうか。
本来のあるべき道へと戻って来たチーム莉子。
最深部目指して、今、第一歩を踏み出すのだった。
「あ! ごめん! マント忘れて来た! ちょっと待ってて!! いや、僕としたことが!!」
前途多難の予感がするのは気のせいか。
コメント
1件
いやあああ六駆おじさんの「漆黒の堕天使」テンション上がりすぎてて笑ったww 実際かっこいい名前だし、男子心くすぐられるのは分かるけども!笑 それにしても山根さんの名前弄り、ホントに容赦ないですね…「莉子」エンブレムを無許可で全員分作っちゃうの、サービス精神というか悪ふざけ全開で最高でした😂 六駆くんの無自覚莉子ちゃん射抜きスキル、もう立派な専用武装だと思うんですけど!あの返しで照れる莉子ちゃんも可愛すぎて悶えた… 最後のマント忘れで「前途多難」って、もうこのチームらしさ全開で大好きです!次回も楽しみにしてます🔥