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結構語彙力が迷走してます。何でも許せる方向け
大樹の佇む警察署の裏に、ヒュンヒュンと音が響く。
今日は12枚狙った落ちてくる葉のうち10枚しか切れなかった。
もっと、もっと精度を上げなくてはいけない。それだけを考えて、ただ刀を振う。
「相変わらず真面目だなぁ、そこに落ちてる奴全部お前が切ったんだろ?」
「おはようございます。今日はまだ10枚程しか切れておらず…」
「十分すごいだろ!俺なんて拳しか武器がないしな!」
豪快に笑う彼に恐る恐る頭を下げる。
警察委員会会長の彼、頼城観音は最近訓練中の私によく話かけてくる。
「聞いたぞお前、夜明けくらいから仕事によばれるまでずっと訓練してるらしいじゃないか!体調は大丈夫か?」
「はい、ご心配なさらずとも体調管理くらい自分でしていますので。」
彼は私にとってヒーローで、憧れだ。
妹がアノミーに殺され必死で逃げて助けを求めた私を受け入れ、追ってきたアノミーを一人で制圧してしまった彼を、私は心の底から慕っている。
そんな彼に心配をかけるわけにはいかない。
彼の前で疲れた様子を晒すわけにはいかない。
正直もうすぐ足が動かなくなりそうな程には疲れているし、実際途中から足を動かさずに訓練している。
「本当か?クマもすごいし足もよろけてるぞ?」
「大丈夫ですよ。訓練で疲れていては意味もないでしょう?」
本当だ。訓練で疲れて仕事に支障をきたしたらどうする。阿呆か。
それでも、訓練をやめてはいけない。もっと、もっと強くならなくてはいけない。
幼少期、剣道や柔道、空手などそれなりに武道は習っていた。
だが、世界が崩壊した日、あの化け物の前ではそんなもの通用しなかった。
立ち向かおうとしても歯が立たず妹を殺された。
その光景に慄きみっともなく逃げ出し、警察署まで辿り着いて助けを求めた。
その時に助けてくれたのが彼だ。
彼こそが、私にとっての救世主であり、偶像でしかない憧れだ。
そんな彼にもとうとう人生が幕を下ろす時が来た。
事故だったんだ。アノミーが思ったより多くて、私たちだけでは抑えきれなかった。
また失った。
大切なものを、また。
結局いくら修行を積んでも実戦が出来なければ何の意味もない。
次の会長が決まるまで前副会長だった私が仮で会長をしていたが、その肩書すら投げ出したい程自信が無くなっていた。
そんなある日、観音様の養子である神流と仏渦を会長にすべきという案が出た。
無理だ。当然私は反対した。
会長になれば戦場に出る確率が上がる。
そうなれば命を落とす確率だって上がる。
そんな事、観音様は望んでいないはずだ。
観音様と同等、もしくはそれ以上に強くなければ、会長には認めたく無い。
だが二人は自分達でなければ他に誰がなるのかと自信満々にいう。
その言葉に少し動揺してしまったのは、きっと自信が無くなっていたからだろう。
私は意を決して立ち上がり言った。
「私と得物を交えろ。それで勝てば貴様らを会長と認めよう。」
私より強ければ、命を落とす確率は大幅に下がるはずだ。
そんな、浅はかなエゴだった。結局は私が安心したいだけだ。
これ以上、大事なものを失いたく無い。
結果は完敗。清々しいほどに負けた。素早い身のこなしと一撃一撃の重さ、二人の連携は見事なものだった。
「これでわかっただろう?」
「僕たちは最強だ。」
「……ああ、そうだな。貴様らを、警察委員会会長として認めよう。」
それで良い。
どこまでも弱い私より、この二人がトップなら安心だ。
遠い昔とは思えぬ程鮮明な記憶を、ふと思い出していた。
「おはよう麗、今日も訓練か?」
「相変わらず真面目だね。」
「おはようございます。阿形様、吽形様。今日は事務仕事等が中心ですので、今のうちに体を動かしておこうと思いまして。」
「本当に真面目だな。親父も認めるわけだ。」
「…観音様が?」
「ああ、幼い頃、たまに寝る前に何度かお前の話を聞いたんだ。訓練を怠らず、難しい事務仕事もよくやってくれるって。」
「お褒めに預かり光栄です。ですが、まだまだ未熟な身ですので、足りないんですよ。」
「そうかな?ウララも結構強いと思うんだけど。」
「そんな、駄目ですよ、全然。
…実際、何も守り切れてないんですから。」
華も、観音様も、何も。
「何言ってるんだ。何かを守り切ってるやつの方が珍しいだろ」
「…え」
「ぶっちゃけ人なんていつか死ぬ。ただその人生を殺さないために守るんだ。お前は、妹の人生も、親父の人生も、守り切ってるんじゃ無いか?」
「人生を…」
「カンナにしては良い事言うね」
「黙れ虫ケラ以下のゴミ豚が」
「有難う御座います‼︎」
「…ふふっ。」
何の変わり映えもない、いつも通りの日常。
だからこそ失うのが怖くて、守りたいと思ってしまう。
だから、今度こそ、守り切って見せる。
この日常が、できる限り続くことを願って。