テラーノベル
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カタカタ、とキーボードを叩く音。
静かな部屋。
書類の山。
その中心で、
南雲九井――ココは眉を寄せていた。
「……意味分かんねぇな」
ぽつり。
資料。
報告書。
経歴。
調べられるものは全部調べた。
なのに。
南暁音という人間が、
分からない。
「ココー」
背後から気の抜けた声。
「蘭、仕事しろ」
「やだ」
即答。
「で?」
蘭は机に肘をつく。
「何見てんの?」
ココは答えない。
その視線の先。
一枚のファイル。
表紙には、
『南 暁音』
その名前があった。
蘭が笑う。
「へぇ」
「お前もなんだ」
ココの眉がぴくりと動く。
「”も”?」
「気になってんでしょ」
沈黙。
否定はなかった。
だって、
本当に気になっているから。
「価値が分からねぇ」
ぽつり。
「価値?」
「人間は全部価値で動く」
ココはファイルを閉じる。
「金」
「欲」
58
29
43
21
「感情」
「執着」
「全部だ」
でも。
「アイツには、それが無い」
静かな声。
蘭は数秒黙ったあと、
小さく笑った。
「だから面白いんじゃん」
ココは答えなかった。
その時。
部屋の扉が開く。
「……呼ばれた」
南暁音。
相変わらず、
何も変わらない顔。
何も知らないまま、
その場に立っていた。
ココは初めて、
真正面から彼女を見る。
そして思う。
(こいつの価値は何だ)
だが。
その問いに答えられる者は、
まだ誰もいなかった。
コメント
3件
うわあ…!ココの「価値が分からない」って台詞がずしんと来た…。人間ってみんな何かで動いてるのに、暁音にはそれが見えないっていう違和感、すごく気になる。蘭ちゃんの軽いノリとココの真剣さの対比がいいアクセントになってて、もっと読みたくなった。続き、楽しみにしてます🥀✨