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第一話です。
早速始まります。
亜水華「はぁっ、……はぁっ………!!」
まだ呼吸は整いそうにない。気球船に乗り、宇宙国まで逃げる為にいくつもの死体や血を見てきた。 奴隷として連れて行かれそうになる子、それをみて泣き叫ぶ母親……恋人と引き裂かれ、焼印を着けられた女性……無抵抗のまま喰われてしまった赤子……お腹を裂かれて胎児と共に出血多量で死亡した妊婦… この世界の”地獄”ともいえる光景が…そこには広がっていた。
取り敢えず、敵の襲撃を撒く事は出来た。なら次は宇宙国に辿り着くだけ。しかしそれすら安全に遂行出来るか分からない。
そんな嫌な思考に支配されながら、彼女は辺りを見渡す。
この気球船に同乗した人物も似たような考えをしているらしかった。皆、希望の欠片もない濁った瞳をしている。しかし、沈黙を破るように声が響いた。
航空士「宇宙国だ!宇宙国が見えたぞ!!」
その瞬間、辺りに微かな希望が生まれる。宇宙国なら一先ず安全だ。ビザもパスポートもないが、亜水華と亜煉羅が事情を話せば理解してくれるに違いない。何せ宇宙国の統治者は、彼らの祖父なのだから。
宇宙国の中心部に着陸予定のこの気球船は、燃料も設備も万全。同乗者の間には少しずつ笑顔が取り戻されていった。
更に宇宙国の美しい景色も彼らを魅了したらしく、はしゃぐ子供のように皆目をキラキラさせている。
しかし、希望や笑顔だけではない、彼らには絶大な不安や罪悪感がある。祖国から亡命してきた罪悪感、祖国や国民は今どうなっているのか分からない不安……特に家族や大切な人と別れて搭乗した者には大きいようだ。仕方ないのかもしれないが中には涙を流しているものさえいる。
それでも、今は安全を願うしかない。
その日は、なんの変哲もない日だった。いつも通り警吏が巡回して、いつも通り人々は活気に満ち溢れていた。彼……亜伊羅微も同じく、宇宙国首相としての職務をこなしながら、そんな宇宙国の様子に安堵を感じていた。
亜伊羅微「今日も平和だねぇ…………ん…?」
一見女性のようにすら見える美しい外見。当に”人外の美”だ。彼は”唯一無二の自然神”。長く生きており、かの最高神からも認められている程の実力者。そんな彼が……違和感を感じたのか一点を見つめ続けている。彼が見つめる先は例の気球船の着陸地点。この国に気球船は珍しいかもしれないが、どうやら彼の興味を引いたのはそれが理由ではないようだ。距離が遠いせいか微かにしか感じれないが、それでも彼には十分。あの気球船から感じる気配が…懐かしい感じがする。少しずつだか近づいてくる気配、彼の予想が確信に変わる。
亜伊羅微「ふふっ、……珍しいお客さんかな。」
客人が来るとなれば用意をしなければならない。書類を片付け、紅茶と茶菓子の用意を。今日の茶葉はダージリンにしようか、なんて考えを巡らせながらつい鼻歌を歌ってしまう。そしてゆっくり穏やかな微笑みを浮かべながら、彼はその客人を待つことにした。
それから数十分したくらいだろうか。警吏が突然部屋をノックし、来客の事を伝えた。 元々予想できていた彼はたいして驚かず、平静を保ちながら来客を出迎えるように命じる。入ってきたのは予想通り彼の孫の亜水華と亜煉羅の2人。理由は分からないが、きっと何か事情があるに違いない、そう思案しながら彼は孫達に優しい笑みを浮かべる。
亜伊羅微「どうしたんだい?そんなに焦らなくても………」
亜水華「お、おじいちゃん!大変なの!アーデルが!!アーデルがっ”!!!」
亜水華が放った言葉、それは彼を動揺させるには十分過ぎるものだった。Adelbertの身に何かあったのなら只事では先ず済まない。しかしまずは事情を聞かなければ、彼は瞬時にそう判断する。
亜伊羅微「アーデルに何があった!?」
亜水華「えっ、、………えっと…………」
珍しく彼が少し声を荒げる。亜水華はショックも大きいのか上手く話せそうに無いようだ。夫と離れ離れになり…安否不明となれば、彼女のショックもかなり大きいだろう。
亜伊羅微「…すまない。びっくりさせてしまったね。今は話せそうにないなら、後でも構わないよ。」
亜水華「ごめッ……なさいっ”……」
亜伊羅微が抱き締めると、亜水華は崩れ落ち、やがて泣いてしまった。今迄は神として泣かずに虚栄を張っていた部分もあったのかもしれない。震える彼女の背中をゆっくり優しく叩きながら、涙をハンカチで拭いてやる。亜煉羅も今は話しかけるべきではないと理解したようだ。
亜煉羅「おじいちゃん。」
亜水華の静かな泣き声だけが響いていたその時、やっと亜煉羅が口を開いた。姉のそのような姿を見て辛そうにしているが、今はどうしてもこの事を聞いておかなければ気が済まないらしい。
亜煉羅「アドラータを襲った奴等の事、もしかして知ってる?」
亜伊羅微「……どうして、そんな事を聞くのかな?」
亜水華「亜煉羅……?」
亜水華も泣いている顔を上げ、不思議そうな表情で弟を見つめる。亜伊羅微は少し目を細めており、その表情からは疑念が感じられる。
亜煉羅「別に……アーデルは、襲った奴の検討は付いてるらしいから。おじいちゃんも心当たりあるのかなって。」
亜伊羅微「………あまり、話したくなかったんだけどなぁ……」
亜煉羅「…………。」
ふぅ、と一度深呼吸し、亜伊羅微が口を開く。
亜伊羅微「少しだけね。検討なら着いてるよ。」
亜伊羅微「アドラータを襲撃した首謀者は___」
一旦終わりです。
まぁ次で首謀者分かるからいいっしょみたいなノリでやっていきます。、
あとまだ主な舞台になる(はず)の神国アドラータの設定書けてないんですよね。(すっとぼけ)