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おぶられたまま暫く歩いていると慣れ親しんだ建物が見えてくる。上手く力の入らない自身の足に困ったように眉を下げて、隣を歩く元貴に声を掛ける。
「ごめん元貴、僕のポケットに入ってる鍵取ってくれない?」
2つ返事で了承した元貴の手がポケットに入れられる。暫く漁った後、何も握られていない手のひらが出てきた。
「ないよ?」
なんで、という言葉よりも早く苦い思い出が脳内に呼び起こされる。
「……落として拾うの忘れてた。」
無言でこちらを見つめる元貴に、 だってあの時は焦ってたから、と言い訳を繰り返しているとそれまで話に耳を傾けていた若井が口を開く。
「どっちかの家泊まればいいじゃん。」
「確かに、涼ちゃん歩けないし。」
突飛な提案を簡単に受け入れ、どんどん進んでいく話を慌てて制止する。
「流石に申し訳ないよ!こんなに迷惑かけたのに更に泊まるとか!」
「でも鍵ないでしょ?」
痛いところを突かれて言葉に詰まる。それに気分を良くしたのか、これからのお泊まりについて語り出した元貴にすかさず若井が言葉を投げかける。
「なんで元貴も泊まる前提??」
「当たり前な、お前に涼ちゃん任せたら絶対ろくな事ならない。」
そんなことないよね、と賛同を求めてきた若井の返答に困る。つい数時間前までコンクリートの塊に喧嘩をふっかけていた様子が脳裏にチラつき、ぎこちない笑みを向ける。
「どうだろうね。」
困らせるなよ、とまた始まった2人の言い合いを眺めていると程よい眠気が襲ってくる。若井の肩に顔を乗せれば背中から共有される体温に安心して段々と瞼が重くなっていく。少しだけ寝よう、と瞳を閉じる。心地よい夜風が頬を撫でるのと同時によく通る鳴き声が聞こえた気がした。
これで最終話となります。
ずっと見て頂いた方ありがとうございます🥳拙い文章ですが大目に見てください🤫
後日談と細かい解説出したいけど需要があるかわからない🤤