石化後のお話です。
グイグイくるスタンリーがいます
女の子は日本人です
ある日、全人類が石化した。そんな経験、後にも先にも私だけだろう。
──否、私以外にも居るのだけど。
はぁ、と溜息をつけば近くに居た男が眉根を上げた。全てが狂ったのは、そう、あの日。
アメリカの国立公園で行われるなんたらかんたらー詳しくは忘れたーの技術の祭典があるとかで友人と共に赴いた。友人の友人がいるらしく中に入れたのだ。何故言ったのか、と聞かれればノリ。特に興味も無くただ旅行気分で行った、英語を話せる友人と久方振りの海外旅行。素敵じゃあないか。そんな風にルンルン気分で技術の祭典を見に行ったのだ。
「人が多いね」
テーブルに備え付けられた椅子に座りながら言えば、友人は呆れた様に笑った。
「アンタ、小さいから気を付けなよ?」
失礼な!と声を張った時、軍人らしき人が叫んだ。生粋の日本人である私が英語を聞き取る事が出来る筈も無く友人の裾を引っ張れば
「意識を飛ばすなだって」
友人と共にザワついた方面を見れば緑色の光が此方に迫っているのがわかる。
凡人ですらこの危険性を察知し私達は共にテーブルの下に隠れ、軈て緑色の光に包まれた。
軍人(仮)の言っていた意味は直ぐにわかった。五感が全く機能しない暗闇の中に拘束された体は何かを考えていないと黒い渦の様なモノに吸い込まれそうになる。必死になってもその勢いは変わらず、恐怖に怯え、助けを待つ日々。隣に居た友人は無事だろうか。体内時計も狂ってきて、頭が可笑しくなりそうな時間が過ぎ去った。次に目が覚めた時、男が二人私を覗き込んでいた。
「ひぇ」
寝起きにー寝ていた訳では無い─イケメン二人が居るなんて誰が察せる?間抜け面を晒す私に額に大きなメ線が描かれた男が話し掛けた。英語で
「…?」
恐らく状況説明をしたんだろうが(私にとっては)早口な為全く聞き取れず、その上表情で察しようにも表情が余りにも変わらないのでわかる筈も無い。首を傾げる私を見て漸く私が英語を理解出来ないと分かったらしい。今度は日本語で話してくれた。
「はじめまして」
「…はじめ、まして」
男はゼノと名乗った。彼は科学者らしい。あの日、あの場に居た男で、その隣の男はスタンリー・スナイダー。声からあの日叫んだ男だと分かる。拙い日本語ながらも状況を説明してくれた。3700年という時間が過ぎ去り人類滅亡。私達は3700年間意識を飛ばさなかった復活者である事。これから人類復興をする手伝いをして欲しい事。他にも色々あったが忘れた。
まぁ、そんなこんなで私はゼノ達の仲間入りを果たした訳だ。それが大体、3年だか2年前だかの話。今やすっかり生活に馴染んだ私はゼノのお手伝いや動植物のお世話を担当している。
「溜息をついてどうかしたのかい?」
ゼノの隣に居た私が余りにも溜息をつくからか、していた作業をやめて私を見下げた。
「最近、私もある程度英語が話せる様になったでしょ?」
「まぁ、そうだね。素晴らしい学習能力だ」
「生きる為に仕方無いことでしょ」
全員母国語が英語なのだ。コミュニケーションを取れないのは痛い。それこそ最初はルーナ達とも話せずゼノに翻訳して貰って居たが、ゼノの役割や都合上話せないと困る。その為、ゼノの仕事の片手間に英語を教えて貰っていた。英語を勉強するなんて中学、高校、大学以来で大変だったが生きる為だと自分を言いくるめた。初めてルーナと英語で話せた時、ルーナは嬉しそうに笑って頬にキスをしてくれた。それ以来、私達は友達と言える関係にある。
「まだ分からない英語があるのか?」
「ううん、あってもルーナに教えて貰えるから大丈夫。その件に関しては本当にありがとうゼノ」
「構わないさ。それより本題はなんだい?」
「…あ〜、うん。なんか、最近スタンリーさんが後ろを着いてくるんだけど何故?」
数分の無駄話を終え、本題に入ればゼノは意味が分からないと肩を竦めた。最初の頃は私が信頼に足る人間かどうか見極める為に後ろを着いてきて居たのは分かる。私が裏切れば即殺すつもりだったのだろう、私だってそうする。だって、危ない人が仲間入りだなんて誰だって嫌だ。裏切り=仲間割れだ。
それでも、私も自分の安全と平穏を手に入れる為、信頼を得る為に持ちうる知識を全部彼等に役立てて見せた。それでゼノも彼も納得した筈だ。ゼノにくっついているのが気に食わないのだろうか?いや、でも私の母国語を話せるのは現在ゼノただ一人、心細いのでくっついても問題無いのでは?幼馴染みセンサー(笑)でもあるのかあの人?私とゼノが話していると高確率で邪魔しに来る。
「君はスタンが苦手なのかい?」
「苦手…うん、幼馴染みのゼノには悪いけど苦手な人の部類だね」
なぜだ?と聞き返してくるゼノに珍しいと思いつつも答える。
「私はさ、ほら。まだ英語も拙いでしょ?だから、き取れない単語とかもまだ沢山あるから人の表情で言った言葉を悟って話しているの」
幾ら、ルーナ達がゆっくり話してくれていると言っても限界がある。だから、表情で読み解くしかないのだ。
「器用だね。何故そんなにも早く言語を習得できたのか疑問だったがそれなら納得だ」
「誰にでも出来るよ」
どうして君はそう自分を卑下するんだ!実にエレガントじゃないとゼノは大袈裟に肩を落とす。
知ったことか。もとよりこういう性格なので慣れて欲しい。
「スタンリーさんは、表情が変わらないから」
何考えてるか分からないし⋯。そういう人ほど怖いものだ。しかも相手は秀麗な顔立ちの国宝級イケメンも顔負けの背が高い軍人さん。そんな人に後ろを着いて来られたら誰だって萎縮する。それに加えて、煙草の煙も苦手だし煙草を切らした時声が低くなるのもとても怖い。着いてきて何をするのかと思いきや、何も話さずただ私を見ているか、私が聞き取れない速さで何かを話すかの二択。どちらも最悪。
「確かに分かりやすくはないね」
「そうでしょう!?」
思わず身を乗り出せば、苦笑された。ゼノは時々私を子供扱いするが成人して何年経ってると思ってるんだ。ゼノに比べたらそりゃ私は子どもっぽく見えるだろうけども!
「今度からはもう少しスタンと話してみるといい」
さぁ、出て行ってくれと扉を指さされた。
「お手伝いは要らない?」
「必要なら無線で呼ぶ」
「わかった、話聞いてくれてありがとうゼノ」
作業に戻ってしまったゼノに手を振ると無視されたのでもう一度大きな声で言ってやるとうるさいと怒られた。
「スタンは君を気に入っている様だけどね」
比較的早い言葉で言われたそれは私には聞き取れずスタンはどうのと言ったたことしか分からなかった。
外に出るべく歩いている私の数歩後ろを歩く彼に痺れを切らし振り向いた。
「何か用ですか?スタンリーさん」
「スタンでいいつってんじゃん」
今日も今日とて煙草を吹かすスタンリーさんは相変わらず格好いい。日本じゃこんなイケメンはいなかったなぁとしみじみと思う。
「ゼノならいつもの場所ですよ」
「へぇ」
ゼノを探している訳じゃないの?いや、そもそも言わなくても分かるか⋯。じゃあ私に用事?いやいや、何の用があると言うんだ?考え込む私をスタンリーさんはいつの間にか隣に来て覗き込んでいた。
「は、」
「難しい顔してんね」
額に落とされたキスに思わず後退る。それでも、笑っているスタンリーさんを振り切るように走るが愉快そうに笑い私に着いてくる。ただの恐怖である。
「ぜぇ、ぜぇ⋯」
「アンタ体力ないね」
壁に手を着いて息を整える私を息も切れていない余裕たっぷりの彼が煙草を吸う。丁度私に煙がかかり噎せると大丈夫か?と背をさすられた。お前のせいだよ!!というのは飲み込んで息を整える事に専念する。
「アンタ俺の事苦手なんだって?」
どこでそれを…なんて思う前に聞いていたのかぁと色々諦めた。気配を消すのが上手な彼だ、中に入ろうとした時に私達の話し声を盗み聞きしたのだろう。ここはもう、開き直った方が早い。クルッと向きを変え彼を見上げる。ああ、首が痛い。
「苦手です。」
「ハッキリ言うねアンタ」
沈んでしまった彼に申し訳なくなったし罪悪感が湧いてでた。
「あ、えと、ごめんなさい」
「何考えてるか分からないんだっけ?」
「え、あの、ちょ」
私が言った言葉を殆ど同じ様に繰り返し、少し距離のあった距離を詰めて彼は私を見下ろした。
「教えてやんよ」
まだ少し長い煙草を手に持つと彼は不敵に笑い、ちゅっと控えめなリップ音と共に唇にほんのりと煙草味のキスを落とした。
「んなぁっ!?」
飛び退こうも後ろは壁、ゴンと頭をぶつけその場に蹲る。
「大丈夫か?」
顔が真っ赤であろう私に対し、平然とした彼の表情から「あ、遊びだこれ」と察する。
現代なら訴えてやれただろうにストーンワールドに警察や法律事務所なんてありゃしない、逃げようにも彼は逃がす気は無いらしい。警戒はバッチリだ。
「これは一体どういうこと?」
「これでわかんないのか?…アンタが好きだよ」
嘘だと言ってくれ。
数十年の人生の中で初めての告白が真逆こんなイケメンの、しかも苦手な相手からだって誰が思うのだろう。
「整理…整理しないと」
ふらりと立ち上がった私を彼は不思議そうに追い掛けて来た。今のはどうやら、日本語で話したらしい。
外のコーン畑でコーンの世話をする私をスタンリーさんは遠くから見ていた。少し、落ち着いて来た。嘘だと思いたいが珍しく表情が変わった彼を見る限りあれはマジだ。
私はと言うと好きか嫌いかと言われればよく分からないという三つ目の答えを出してしまうくらいには彼の事を知らない。接触をなるべく減らしていたんだから当然だろう。そんな状態で断るのも申し訳ないし。
そもそも彼はそういう関係を望んでいるのかも分からない。
「よし!」
「ようやく落ち着いたか?」
「ひっ…!」
後ろに立っていたのはもう、お馴染みスタンリーさん。あれ、ここは海外。海外って告白の概念はないんじゃ……。はいかYESしかないの!?サッと青くなった顔に彼の骨張った手が触れる。
「赤くなったり青くなったり忙しいな」
「あ、あの」
「ん?」
甘い声を出した彼にまた顔を赤くする。イケメンの微笑みは心臓に悪い!
「好きは恋愛的な意味で?」
「当然だろ?」
何言ってんだ?みたいな表情をされても…。
「え、っと、恋人関係を求めてたり…?」
「そりゃあな、だが無理に付き合えとは言わねぇよ」
「あ、そうですか…」
思いの外優しいな。この人は優しい人なんだ!良かった!断っても安心だれだなんて思っていたおり
「ま、必ず落とすけどな」
と爆弾発言を貰った。
ああ、この人そういえばスナイパーだったな、狙った獲物は逃がさないってか?ははっ笑えない。
「取り敢えず、敬語と敬称外して貰うけどいいだろ?」
「はい…」
拝啓、目覚めなかった友人へ。
お元気でしょうか?私は元気にやっております。さて、私の事を好きだと言ってくれる人に出会いましたがとても怖いです。
助けて下さい。
敬具
「ついでに聞くとなんで私?他にも可愛い子いるでしょ?」
ルーナとか今は居ないけどいつの日か復活するであろう可愛い子なんて沢山いるだろうに言語も危うい平凡日本人だなんて。
「一目惚れだかんな」
「は!?」
驚く私にスタンリーはまた唇にキスを落とした。結構分かりやすくアピってたんだけどな、ゼノも知ってたぜだなんていつの間にか吸い終わっていた煙草を捨て新しい煙草をくわえた彼に目を丸くする。
あの人知ってたの!?でも、ゼノが知っていて私が気づかなかったのは仕方ないのでは?年数が違うじゃないか!
「あれ、ちゃんと聞き取れてる⋯?」
前まではスタンリーと話すのは一苦労だったのに今日はすんなりと話せている。私の呟きが聴こえたのか罰が悪そうに顔を逸らしたスタンリーは言った。
「アンタが聞き取れないって言ってたかんね」
「あ、なるほど。ありがとうスタンリー」
「これくらいでアンタが俺を見てくれるならお易い御用だ」
また顔を赤くさせた私をケラケラと笑い、スタンリーは私の傍から立ち去った。
それを見届けながら私がスタンリーに落ちるのは早いのかもしれないだなんて他人事のように思う。
まぁ、そんな事より熱くなりすぎた顔の熱を冷ます事に専念しようと手をパタパタと仰いだ。
これからどうなるのだろう。
取り敢えず、キスはやめて欲しい。
心臓に悪いから。
頼めばやめてくれるだろうか?頬に熱が無いのを手で確認し、これからの事に少し胸を高鳴らせながらも段々と小さくなっていく彼の元へ駆け寄った。
・女の子
グイグイこられて恐怖しか無かったけど実は惚れられてて今回ほぁ?ってなった人
これからもグイグイくるぞ
甘々な声で誘惑されていく
・スタンリー・スナイダー
超国宝級イケメン
顔面彫刻
警戒心ガンガンだったけどほわほわしてる女の子に惚れちゃった
グイグイくるし甘やかす
コメント
1件
ははぁ〜、、!!!、新作神ってます〜、、!!、ありがとうぅう〜、、!!!