テラーノベル
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最終局面での番狂わせ…レスターの所業が霞むほど、衝撃的発言だった。
ハッと我に返った時には、アイヴァン様の自室にいた。どうやって帰ってきたのか分からないほど、頭の中は驚きと戸惑いで一杯だった。
「…疲れた…」
団長であるアイヴァン様でも疲労困憊。ソファーにもたれ掛かり、目を瞑りながら天を仰いでいる。
遠征明けで疲れている所へ、驚愕の真実が追い討ちをかけたのだ。当然のリアクションだな。
私だって、ここが人様の家じゃなければ、この言われのしない思いをぶち撒けていたところだ。
「ミーリアム」
薄らと開けた視線がパチリと合う。
「おいで」
ふわっとした柔らかな笑みにキュンと胸が跳ねた。少しだけ顔を俯かせ、差し出された手を取る。
「あ」
手を取った瞬間、力強く引き寄せられ、為す術もなくアイヴァン様の胸の中へ。逞しく優しい腕に包まれ、ようやくホッと一息つけた気がした。
「なんか、レスターがすみませんでした」
「君が謝ることではないだろう?」
「いえ、幼馴染だからと軽率な行動を取ってしまった私にも非があります。そもそも、私がもっとちゃんとしていればヤツの掌で転がされることもなかったんです」
そうすれば、アイヴァン様が頭を下げることもなかった。悔やんでも悔やみきれない……
私が自責の念に苛まれていることに気付いたアイヴァン様は、ポンと優しく頭を撫でた。
「すべては、彼の思惑に気付けなかった私の落ち度だ。君が悔やむ必要はない」
「でも──」
「どうやら私は君のことになると正常な判断が欠けるらしい」
困ったように眉を下げているが、私を気遣って言ってくれていることは分かる。どれだけ私が悪くても、この人は丸ごと背負ってくれる。
「アイヴァン様は優しすぎます……そんなだから、私が離れなくなっちゃうんですよ?」
「おや?離れていくつもりだったのか?」
「え?しがみ付いて死ぬまで離れませんが?」
そんなの即答だろ。今更離れろって言う方が無理がある。
「ふはっ!それでこそ、私の愛したミーリアムだ」
「──……え?」
今、愛したって言った?
(ちょ、ちょっと待って、願望が強すぎて幻聴が聞こえたか?)
恐る恐る顔を上げてみると、穏やかな笑みを浮かべたアイヴァン様と目が合った。言葉にしなくても表情を見れば分かってしまった。
「……ウソ……」
視界が涙で霞んでくる。
アイヴァン様から愛の言葉を貰えるなんて思ってなかった。婚約した時に『私を愛さなくてもいい』なんて宣言した手前、愛の言葉が欲しいなんて烏滸がましくて言えなかった。それに、無理強いしてまで聞きたくもない。でも、本音ではちゃんと愛して欲しかった……
正直、信じられない気持ちもあるが、今だけはこの気持ちを信じたい。
「すまない。伝えるのが随分と遅くなってしまった」
嬉しさのあまり涙が溢れて止まらず、首を振って答えた。もう、充分。これ以上のものは何も要らない。そう思っていると、アイヴァン様は私の額に軽くキスをした。そして、おもむろにソファーから立ち上がり目の前で膝をついた。
「私は不器用で、面白味もない。歳も君よりも随分と離れている。その癖、大人気ないほどの執着心を持ったおっさんだ。しかし──…」
ゴソッと懐から小さな箱を取り出した。
「ミーリアム・シュツェル嬢、貴女を愛してます。これから先も貴女だけを想う事を許してもらえますか?」
「──ッ!!」
小さな箱の中にはアイヴァン様の瞳の色と同じ宝石が付いた指輪が入っていた。
「~~~~~~~~~~ッそんなのイエス以外に答えなんてありません!」
涙で顔をぐちゃぐちゃにさせながら飛びついた。
***
数年後──……
「あの時は本当に運が良かった。部下の奴が面白半分で持ってきたものが自分の人生を大きく変えるとはな」
「ふふ、それを言うなら私だって運が良かったわ。貴方と出逢えたんですもの」
昔を懐かしむように口にするアイヴァンに寄り添いながらそう伝えた。
アイヴァンは私のお腹に手を当てて愛おしそうに優しく微笑んでいる。
「これからも、私に愛を教えてくれるかい?」
「勿論よ。貴方は私に愛されてればいいのだから」
「私の愛も受け取って貰わなければ困るな」
「ふふふっ。この子にあげる愛も取っておかなきゃでしょ?」
「私の愛は溢れるほどあるから大丈夫だ」
優しく微笑む最愛の夫に私も自然と頬が緩む。
正直、こんなにも愛してくれるとは思いもしなかった。けど、アイヴァンの愛に嘘偽りはない。真っ直ぐとした愛を私に注いでくれる。
その愛が心地よくて愛おしい。
「これから先も、君とこの子を生涯愛すると誓おう……愛してる、ミーリ。私の愛しい人」
「私もよ。愛してるわ、アイヴァン。私の可愛い人」
因みに、この私の婚約者探しは伝説となり何年にも渡り語りつがれたのは言うまでもない……
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コメント
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ああ、もう、この第28話…!心臓が持たないですよ😭💕「愛した」って、あのアイヴァン様からまさかの一言…幻聴かと思いましたよね、ミーリアムの気持ち痛いほどわかります!膝をついてのプロポーズ、しかも自分のことを「おっさん」って言いながら差し出す指輪…そのギャップにやられました。数年後の穏やかな夫婦風景も沁みる…「伝説になった」という締めくくりが、二人の歴史を感じさせて素敵でした。