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スクールカースト1位の彼が死んだ。
容姿端麗
文武両道
成績優秀
生徒会長
上げればキリがないほど彼は完璧な人間だった。
朝、彼より早く登校した人はいなかったし、勉強も運動も彼に勝てる人が校内で現れることはなかった。
まさに理想だったし、誰しもの尊敬の的であったと思う。
敬語で話す彼は柔らかい雰囲気を纏っていて人当たりが良かった。
本当に非の打ち所なんてなかったのだ。
完璧ではあるが、彼に向けられる感情は綺麗なものばかりだったように見える。
嫉妬や怒りなどを向けることもできないほど彼は素晴らしかったから。
事件が起きたのは3日前。
いつもと変わらない日だった。
唯一おかしかったのは、皆勤賞だった彼が席にいなかったことだけ。
先生が彼の母親に連絡をすると、学校へ行ったとのことだった。
数時間後彼は旧校舎の使われない教室で首を吊っていたところを発見された。
発見された時にはもう体は冷たく、脈はなかった。
誰もが驚いた。
当然だ。
他殺であれば彼が反感を買うような相手なんて考えも付かない。
自殺であれば何もかも上手くいっていたように見えたから。
彼が死んだ理由を知る人は誰もいなかった。
次の日から誰かが置いた花が彼の席に供えられていた。
色んなやつが次々にお供え物を置いていく。
俺は毎日彼と同じ時間に学校へ行ってそれを掃除するようになった。
クラスメイトが毎日涙を流すのを俺はただ見つめていた。
俺はこの事件の全貌を知っているから。
青 なぁ。
俺が死んだら悲しむか?
桃 当たり前でしょ。
大事なたった1人の幼馴染なんだから。
青 そうか。
桃 急にどうしたの?
青 ちょっとしんどくなってもうて。
友達ができるか不安で桃に作り方を聞いたら、尊敬される人間になればええって言ってくれたやろ
でもな、みんなの理想に応えるたびに自分が自分じゃなくなってて、頑張るほど辛くて。
心の中を打ち明ける彼は、綺麗な涙を流していた。
きっと誰も見たことのない彼を俺だけは知っている。
桃 大丈夫。
きっと昔と同じ青だって…
青 それじゃあかんねん。
みんなの理想の俺になって気づいた。
みんなが好きなのは俺じゃない。
理想で完璧だから好きなだけ。
誰も俺を見てくれない。
弱い彼を知っているのは俺だけであるという優越感に浸りながら、彼の悩みを聞く。
誰にも渡さないという彼に向けた唯一の黒い感情を持ちながら。
青 今までみんなの友達やったんは俺やない。
ほんまの俺は関西弁やし、自信なくて猫背やし、ちょっと怠惰なところもあるし朝やって苦手や。
でもみんなの友達の俺は、誰よりも早く学校にいて、綺麗な姿勢を保っていて、努力家で敬語の俺の知らん誰かや。
桃 それでも理想は崩したくないの?
みんなから尊敬される青でありたいの?
目を見つめてそう問いかけると彼は静かに頷いた。
桃 じゃあみんなの理想の青のままいなくなろう。
青 どうやって…。
桃 誰にもこの真実がバレないようにしながら、綺麗な青の記憶で止めればいいんだよ。
そうすれば皆にとっての青も本当の青も辛い思いをすることはない。
青 そっか…。
せやな。
そうすればええんや。
ありがとうな。
青との会話はこれが最後だ。
でもそれで良かった。
俺しか知らない青を誰かに見られる方がずっと嫌だ。
ーーそう思った日から、俺は青の行動を誘導するようになった。
初めは軽いことから。
こうしたほうが良いんじゃない?と優しくいってあげる。
それを繰り返し、良い結果が毎回伴うと俺の言葉は絶対に正しいと青は理解する。
それからは簡単だ。
彼が汚されないように
彼という存在が知られないようにするだけ。
なんて可哀想な青。
俺の理想でいてくれてありがとうね。
これでもう誰にも汚されないから。
俺の優しさが間違うことはないから。
もう安心していいよ。
おやすみなさい。
俺だけの青。
コメント
1件
どこからが桃の思惑通りだったのか。 よろしければコメントお願いします。