──────いえもん視点──────
俺は苦笑いをしている。
今の状況を簡潔に言うのならばぜんさんが土下座し、周りの面々が面白がって笑いころげているか、俺と同じように苦笑いをしていた。
もう少し状況を細かく説明する。めめさんに言われ、ぜんさんに生気を分けることになった。しかし、1ヶ月分のを渡せば俺は死ぬらしい。そんなにも俺は生気がないのか、というほんの少しの悔しさを抱いたがそんなことを思っている俺とは真反対にぜんさんはそれをもう貰えないと解釈したらしく、顔を真っ青にして土下座してお願いしている。と、いうことだ。あげない、という選択もある訳だが、俺の中ではなかった。
「…めめさん、生気を増やす方法はなんですかね?」
ぜんさんの土下座した位置から2、3歩離れながらめめさんに問う。笑い転げていためめさんはひー、ひーと、笑いが収まらない、といった様子だったが、すんなり答えてくれる。
「いえもんさんが健康的な生活をしていたらすぐに上がりますよwいえもんさん、お肉、食べましょうね?」
最初は半笑いで言っていたが、最後は笑顔だが、圧のあるもので俺の肩に手を置き、圧をかける。…普段野菜や魚中心というあまりタンパク質が充分足りていない、という自覚はあった。しかし、ここで求められると思っていなかった。
言い訳をしよう。重力操作で自身を浮かせるならばなるべく自身の体を軽くした方が良かったのだ。何故ならば重いものを運ぶためには魔力をより多く消費するため、コスパが悪いのだ。また、軽い方が加速しやすいし、また、足音も小さくするのが容易い。つらつらと言い訳を並べたが、結局言いたいのは肉を食べる、なんてことを昔の俺が拒むのだ。こんな贅沢なものを食べてはいけない。こんな美味しいものをこんなちっぽけなやつが食べてはいけない。そう、思ってしまうのだ。
「いえもんさん!!美味しいお肉の食べ方教えますから!!!お肉!!食べましょ!!筋肉、つまり力は全てを解決できますから!!!!」
ぜんさんが必死に説得してくる。ここで断れるほど俺は芯の強い人間ではない。仲間を救える、なおかつここまで説得されると生じる罪悪感。それに対して食べたくない理由はしょうもない、とも言いきれないが、対しているものが大きすぎる。天秤は軽くぜんさんに傾いた。
俺は精一杯の笑顔で答える。
「分かりました。お肉、食べますので。」
「ありがとう…!!ありがとういえもんさん…!!」
…肉を食べるだけでここまで喜んでくれるのならば食べてもいい、そう思えた。
夜ご飯。すっかり少なくなってしまった人数。人数が多い時に比べれば賑やか、とは言えないがそれでも、活気はあって良い、そう思った。いつもめめさんなどの隣の席だが今日はぜんさんが隣に来ている。こう、ぜんさんを見るとなかなかに身長が小さいと思う。幼児、とはいかないが少年位のサイズであった。俺はそこそこ長身の方であるから尚更身長差が目立っている。
それをからかわないめめ村でない。
「ぜんさん!?あれ!?ぜんさんって…あれ?ちょっと…縮んでません?あ、元々でしたねw」
「ガキじゃないですかw」
「改めて見ると…私はいいと思いますよ。個性ですよね。」
前2人は悪意が高いが最後の一言についてはフォローの見た目をしたトドメであった。
「うるさいうるさい!!!いいの!!ぽれはこの姿が好きなの!!!」
「反論の仕方がガキなんですよね〜w」
ぜんさんが反論してもそれに対して火力の高い反論がかえってくる。ここまで言われるとぜんさんはさらに小さく縮んだ。誰もフォローしない。これが本気で悲しんでいる訳では無い、とわかっていたからだ。
「ご飯できたわよ。本当は和食が良かったのだけれど…今日は洋風にしておいたわ。」
そう言って菓子さんやみぞれさん、ルカさんが料理を運んでくる。3人で運ぶのに十分な量であった。ローストチキンを中心とした料理が運ばれる。いつもより豪勢な料理であった。まあ、今日中にぜんさんが生気を吸わなければ行けないわけだし豪華になるのは必然なのだが。そんなことを思いつつ、俺はお肉を取り分けようとしたが、
「ぽれが量調節するので!座って待っててください!動いてると食べたくなるので!」
ぜんさんがそう言い、お肉を取り分ける。前半部分は優しいな、なんて思っていたが後半部分でシャレにならなくなる。これが狩猟本能ってことか?なんて謎な仮説を出しつつ、俺は親鳥の餌を待つ雛鳥のように座って待つ。
「はい!どーぞ!」
そう言ってぜんさんが取り分けた量は俺の頭まるまるひとつ分くらいの大きさであった。こんなに食べ切れると思っているのか、正気かこの熊、なんて頭の中では罵倒できるが、いざ、この肉の圧を前にすると、そんな罵倒も口から出てこなかった。
「ぜんさん、これちょっと…」
俺が言葉にする前にぜんさんが察したように笑顔で言う。
「やっぱり少なかったですよね!もう少し足しますね!」
違う、違う。そうじゃねぇ。そう思い、ぜんさんの腕を俺は無理やり手で抑え、止める。
「こんな食べきれないですって!!困りますよ!!」
俺がそう、強く言い張るとぜんさんは少ししょんぼりした様子でわかった、と言ってくる。俺の善意の心がチクチクと刺さる。流石に押し切ることはできなかった。
「…ぜんさん。一緒に食べません?」
俺がそう提案すればぜんさんはパァと目を輝かせ
「うん!」
と頷いた。こいつ可愛いな、と思いつつ、一緒に食べた。
──────この後、ぜんさんに肉を押し付けられまくれ、食べさせられまくったのは一生覚えとくからな、ぜんこぱす
ここで切ります!
コメント
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違う違うそうじゃねぇ面白すぎるw えー、遅コメ失礼します
可愛いなこいつ