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rbru
にょた百合
死ネタ
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小柳ちゃんが亡くなった。私の初恋相手であり、恋人だった小柳ちゃんは、モデル並みに綺麗で女子からも人気だったが特に他校の男子から物凄く好かれていた。私たちが通ってた学校は女子校で、他校との交流は文化祭などの学校行事だけだが、みんながみんな小柳ちゃんに一目惚れしたまに告白するところも遭遇してしまった時もあった。だけど、小柳ちゃんは私を選んでくれた。あんだけ告白されていても、小柳ちゃんは自分の意思で私を選んでくれたのだ。とても嬉しかった、今までにない以上に幸福と涙が押し寄せてきた。小柳ちゃんはそんな私を見て、少し慌てていたが私が落ち着くまでずっとそばに居てくれた。そんな優しくて可愛い小柳ちゃんが好きだった。
だがそんなある日、珍しく小柳ちゃんは休みだった。いつも遅刻寸前に学校に来る小柳ちゃんだったが、休むってことは滅多になかった。だから、私や周りの女子たちは風邪かなと思った。
朝のホームルームが終わりかけた頃、先生は教室から出て廊下でもう1人の先生と話していた。声のトーンからするに、深刻なことでもあったのだろうか。もしかして、小柳ちゃんに何かあったのかと思いたくもないことを思ってしまった。廊下からの話し声は終わり、先生は教室に入ってきた。だが、先生の顔は先程までとは違い物凄くショックを受けているかのようだった。
「皆さん、落ち着いて聞いてね。
小柳さんは亡くなりました。」
先生が放った言葉に教室は静まり返る、まるで誰もいない教室に先生が独り言を呟いたかのように。先生は先程までずっと我慢していたのか、涙を流していた。それに釣られ、みんなも泣く。そして私も。聞かされた瞬間、心の全てに穴が空いてしまったかのような、喪失感が私を襲った。恋人がいなくなるのはこんなにも辛いものなのか。ふと窓を見た。そこに写っているのは、綺麗な空に燦々と輝く太陽だけがあった。私だけが見れた太陽のような笑顔は、もう見られないのか。ああ、小柳ちゃん私はどうやって生きればいいのかな。
どうやって帰ったのか分からないほど、私はショックが大きかった。いつの間にか、自部屋のベッドで寝っ転がっていた。声が聞きたい、触れたい、だけど小柳ちゃんはもう この世界にはいない。早く会いたいと思い、枕に顔を埋め尽くす。
「小柳ちゃん…会いたいです……」
枕から顔を離し、気分転換に外にでも出ようとふと思った。外に出れば、少しは楽になると小柳ちゃんが好きだった場所に向かう。
「小柳ちゃん、どこにいるんですか」
小柳の好きな場所に向かえば、会えるのではないかと思ったが現実はそう簡単ではなかった。そのはずなのに、なぜ小柳ちゃんは私の目の前にいるのか。どうして、小柳ちゃんは笑っているのか。私には分からなかった。だけど、今ここで話しかけなければもう出会えないとなぜか不安が押し寄せてきた。
「……小柳ちゃん」
「なぁに、星導」
あ、いつもの小柳ちゃんだった。私だけに見せる笑顔も、他の人よりも甘ったるい声で呼ぶ名前も、私が知っている小柳ちゃんだ。良かった、会えて。やっぱり、私には小柳ちゃんが必要だったんだ。さっきまでの不安は吹き飛び、今は嬉しさでいっぱい。
「小柳ちゃ…」
「ごめんな、星導。もう私行かなくちゃ。また、来世で会おうな」
別れは本当に早い。小柳ちゃんはそう言うと私に背を向け前に進む。1歩ずつ進めば、小柳ちゃんが本当に消えてしまうのではないかと、またもや不安が全身を支配した。
「待って!小柳ちゃん…」
離れたくなかった。1人にしないで欲しいと強い思いが私を包み込み、小柳ちゃんの腕を掴む。そうすれば、小柳ちゃんは振り向き。辛そうな顔を私に見せた。
「星導、手離せ。お前の人生も消えちゃう…」
なぜそんな顔をするのか私には分からなかった。だけど、もう私の人生は消えてしまってる。だって、私の人生はすべて小柳ちゃんで埋まっていたから。
「嫌です…」
「お願い、本当に離して。私だけで十分」
何を言っているのか分からなかった。何が十分なのか私には分からない。だけど、本当にここで手を離してしまったら小柳ちゃんは完全に私から全てが消える。そんなの無理だった。私の生き甲斐は小柳ちゃんであり、小柳ちゃんに依存してしまった私はもう取り返しがつかないから。
ふと、電車の音がする。走る音は、私たちがいる世界に鳴り響いていた。あぁ、今なら言える。本当の言葉を。
「小柳ちゃん、私あなたが死んでしまったことを聞いた時、凄く悲しかった…だって、私の生き甲斐は小柳ちゃんだったから」
「星導、やめて…ほんと逃げて。離して、やめて…ほしるべ……」
小柳ちゃんに呼ばれた名前が最後に、私の体はグシャと歪な音がなり、数十メートル先まで飛ばされてしまった。体全部が痛い。顔は大丈夫だったが、体はもうぐちゃぐちゃだった。痛い、痛くて泣き出しそうだった。だけど、小柳ちゃんは1人でこれを耐えた。だけど、誰も助けてくれないでここで命を引き取った。私が今倒れてる場所は小柳ちゃんが亡くなった場所だった。ふと思う、小柳ちゃんはどこにいるんだろう。電車に跳ねられたときに、小柳ちゃんは天国に行ってしまったのか。だったら、最後にキスでもしたかったなと思った。
「なら、しろよ」
声のする方向を見ると、そこには小柳ちゃんがいた。痛くて喋れない私を見たのか、小柳ちゃんは私の元に近ずいた。
「痛いでしょ…私も痛かった。だけど、誰も助けてくれなかった。ねぇ、星導…私は助けたい、だけど私から星導には触れることが出来ないの。
だからさ、せめて星導の願いを叶えてあげる。」
小柳ちゃんは、私が1度も見たことがない顔をしていた。泣きそうな顔、辛い思いさせちゃったなと死ぬ直前に思う罪悪感。謝りたい、好きってもう一度伝えたい、だけど口は動いてくれなかった。なら、せめて今の私の想いだけ小柳ちゃんに伝わってくれ。
小柳ちゃんと恋人になれて、私嬉しかった。大好きだよ。小柳ちゃん、私も天国に行けたらまた思い出作ろうね。来世も、また恋人で。
小柳ちゃんに伝わっただろうか。
目がチカチカしてきた、そろそろ死ぬのかなと思ってしまった。もし、手が動かせたら抱きしめたかったなと、触れられないことに悔しさを覚える。
「星導」
という声は、聞いたことない甘い声で囁き、私の唇に小柳ちゃんの唇が当たる。良かった、触れられた、嬉しかった。死ぬ直前に小柳ちゃんに触れられて、その時だけは痛みも感覚も無くなっていたのかもしれない。
「来世も恋人。約束だぞ、星導」
また見れた太陽のような眩しい笑顔。伝わってよかったと安堵の気持ちが私の心をいっぱいにし、目を閉じる。小柳ちゃんの恋人でよかった、悔いのない人生が送れた。私の人生はここで終わった。