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⚠︎シクフォニBL⚠︎
⚠︎死ネタ、バットエンド⚠︎
「みこちゃん、手冷たいよ」
「そう?」
俺は手を取ってみこちゃんの首あたりに手を当てる。
「ほら」
「うわっ冷たい」
「でしょ?」
みこちゃんの手を俺の手で包み込む。
「暖かい?」
「うん 、暖かいよ笑」
「なんか、生きてるって感じするね。」
「え〜?変なの笑」
「変でもいいよ、今二人で過ごせてることが大事!」
その“今”がどれだけ脆いのか。
俺は知らなかった。
夜の川沿い。
街灯の光が水面に揺れている。
「俺さ、すちくんと同じ家に帰って、沢山喧嘩して、でも結局一緒に寝てさ、」
「うん」
「歳をとっても隣に居たい。」
「俺はそれ、当たり前だと思ってた笑」
みこちゃんは儚げな顔して、下を向く。
「…少し重かったかな笑」
「全然。」
俺は即答した。
「みこちゃんを失う前提でいる方が、俺は無理だよ笑」
みこちゃんは、この言葉を嫌なくらい脳裏に焼き付けてしまった。
最初の違和感。
「みこちゃん、それ前も言ってたよ笑」
「あれぇ、そうだっけ…笑」
忘れ物、息切れ、増える沈黙。
「ねえみこちゃん、病院行こう。」
「え〜?大袈裟だよ笑」
みこちゃんは無理に笑っていた。
信じないと自分が壊れそうだったから。
やっとの事で病院に連れていった日、みこちゃんが小さな声で言った。
「ねえすちくん、俺死ぬのかな。」
「…え?」
「そんな事言わないでよ…」
ここ最近のみこちゃんを見ていると冗談には聞こえなかった。
「でもさ、もしそうならすちくんにちゃんと、___」
「みこちゃん…!!」
待合室で少し声を荒らげる。
周りの視線が刺さった。
「俺…それ以上聞きたくない。」
そのままみこちゃんは何も言わなかった。
その沈黙が、後になって俺を壊すことになる。
___あの時、最後まで聞けばよかった。
結局、みこちゃんは入院する事になった。
急性の膠芽腫。脳の癌だった。
みこちゃんだけの為に用意された、無駄に洒落た病室。
「すちくん、今日は来ないかと思った笑」
「来るに決まってるよ…」
「そうだよね…」
「ねえ、すちくん。」
「何、?」
「俺ね、すちくんが帰っちゃう時すごい怖いの」
「もう来なくなっちゃうんじゃないかって。」
みこちゃんは無理に笑う。
「…明日も、絶対来るよ。」
「それでも…、」
「ううん、やっぱなんでもない!」
その“それでも”の意味を、俺は深く考えない振りをした。
消灯後、みこちゃんが口を開く。
「すちくん」
「起きてるよ」
「ねえすちくん、約束して。」
「なにを…?」
「俺がいなくても、生きるって。」
「…..嫌だ。」
「お願い、すちくん。」
俺は震えた声で言った。
「みこちゃんが居ないなら、生きてても意味ないよ…ッ」
みこちゃんは泣いた。
声を殺して、枕を濡らしていた。
「それでも生きててね、俺のいない世界で。」
俺は何も答えなかった。
答えられなかった。
その沈黙が、俺にとってはとてもキツいものだった。
呆気なく迎えた最期の日。
みこちゃんは人工呼吸器を付けて怠そうに横たわっていた。
「すちくん…..」
「ここにいるよ。」
「…..置いてかないで。」
その一言で、俺の心は崩れた。
「置いていかない。」
「置いていかないよ、だから___」
俺が言葉を伝え切る前に、みこちゃんはゆっくり瞬きをして言った。
「すちくん、愛してるよ」
それは謝罪をするかのような声だった。
「みこちゃん俺もだよ、!!」
俺は叫んだ。
「だからッ…!!だから行かないで…!!」
でももうみこちゃんからの返事は無かった。
涙を流したまま、深い眠りについていた。
葬儀の後。
誰も居なくなったみこちゃんの部屋。
机にはみこちゃんのスマホが置いてあった。
ロック画面。
【一緒に歳を取る。】
俺はその場で泣き崩れた。
「…嘘つき。」
暖かい春風が頬を撫でる。
みこちゃんが無くなって、ちょうど1ヶ月。
桜の下で、俺は立ち尽くした。
「生きて、って言ったよね。」
「約束、したよね。」
喉が詰まる。
「守れそうにないや笑」
優しい風が花びらを乗せて通り過ぎる。
「みこちゃんがいないのにどうやって生きろって言うの、?」
答えはない。
救いも、ない。
俺は今日も息をしているだけ。
生きているとは、言えないまま。
約束だけが、守られなかった約束だけが。
俺の胸の奥で、何度も何度も、
俺を殺し続けている。