テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
11
れま/palletNova公式
1,865
洋食派‼︎
170
放課後。
二人は寮へ帰ってきた。
「ただいま戻りました」
「ただいま」
部屋のドアを開ける。
いつもなら他の寮生たちの声が聞こえてくる時間なのだが――今日は妙に静かだった。
「……あれ?」
日本が廊下を見回す。
「誰もいませんね」
「今日は委員会だの部活だので、みんな遅いんだろ」
「そうなんですか」
「つまり……」
イギリスがニヤリと笑う。
「今日は俺たち二人きりだな」
「二人きり……」
日本がぽつりと呟く。
なぜか頬が少し熱くなった。
「……どうした?」
「い、いえ! なんでもありません!」
「?」
イギリスには理由が分からない。
そして、イギリス自身も少しだけ落ち着かなかった。
(……二人きり、か)
***
「日本、風呂上がったのか?」
「はい」
部屋の奥から、日本が出てくる。
髪はまだ濡れたままだ。
「……おい」
「はい?」
「髪、乾かしてないだろ」
「あとで乾かそうかと」
「風邪引くぞ」
「大丈夫ですよ」
「大丈夫じゃない」
イギリスはドライヤーを手に取った。
「座れ」
「え?」
「俺が乾かしてやる」
「い、いいんですか?」
「紳士だからな」
「……ありがとうございます」
日本がベッドの前にちょこんと座る。
イギリスはその後ろに立った。
ブォォォ――。
温かな風が、日本の髪を揺らす。
「熱くないか?」
「大丈夫です」
「ちゃんと乾かすからな」
「はい」
優しく髪を梳くように乾かされて、日本は目を細めた。
(……気持ちいいです)
そして、なんとなく安心する。
「イギリスさん」
「なんだ?」
「こういうの……お兄さんみたいですね」
「……」
ドライヤーが止まった。
「イギリスさん?」
「……俺は、お前の兄じゃない」
「え?」
「……なんでもない」
イギリスは再びドライヤーを動かした。
(兄なんかじゃなくて……)
それ以上は考えないことにした。
***
髪を乾かし終えると、日本はベッドに腰掛けた。
「ありがとうございました」
「どういたしまして」
「イギリスさんは優しいですね」
「……お前にだけだ」
「え?」
「いや、なんでもない」
「……?」
日本は不思議そうに首を傾げた。
そのとき。
ぐぅ~~~。
静かな部屋に、日本のお腹の音が響いた。
「…………」
「…………」
「……聞かなかったことにしてください」
日本が真っ赤になる。
イギリスは吹き出した。
「ははっ!」
「笑わないでください!」
「悪い、悪い」
「もう……」
イギリスは笑いながら立ち上がった。
「何か食べるか?」
「でも、もう遅いですよ」
「関係ない。何が食べたい?」
「……和菓子が」
「また和菓子か」
「好きなんです」
「知ってる」
イギリスは棚から昨日買ったどら焼きを取り出した。
「ほら」
「わあ……!」
日本の顔がぱっと明るくなる。
「いただきます!」
嬉しそうにどら焼きを食べる日本。
その隣で、イギリスは紅茶を飲んでいる。
「おいしいです……」
「そうか」
「イギリスさんも食べますか?」
日本がどら焼きを差し出す。
「……!」
イギリスの動きが止まった。
「どうしました?」
「……いや」
(これ……間接的に……)
そこまで考えて、イギリスは慌てて頭を振った。
「い、いや。俺はいい」
「そうですか?」
「紅茶があるからな」
「では、私がいただきますね」
「……ああ」
日本がまた一口食べる。
イギリスはその横顔を見つめながら、紅茶を飲んだ。
(……やっぱり、こいつといると落ち着くな)
***
夜。
「おやすみなさい、イギリスさん」
「ああ。おやすみ、日本」
部屋の明かりが消える。
それぞれのベッドに入る。
静かな時間。
数分後――。
「……イギリスさん」
「ん?」
「起きてますか?」
「起きてる」
「少しだけ、お話しませんか?」
「……いいぞ」
暗闇の中、二人はベッド越しに話す。
「今日、楽しかったですね」
「ああ」
「明日も一緒に帰りましょうね」
「もちろん」
「……嬉しいです」
「……俺も」
「え?」
「なんでもない。早く寝ろ」
「はい。おやすみなさい」
「おやすみ」
再び静かになる。
けれど二人とも、なかなか眠れなかった。
(……明日も日本と一緒にいられる)
(……明日もイギリスさんと一緒です)
それだけのことなのに。
胸が、少しだけ高鳴っていた。
まだ二人は知らない。
自分たちが眠れない理由を。
ただ――。
同じ部屋にいることが、少しずつ嬉しくなっていることだけは確かだった。
コメント
1件
みぅ🤍🥀だよ〜読んだよ、第2話。 髪を乾かすシーン、めっちゃドキドキした…イギリスの「お前にだけだ」がもう刺さる。お兄ちゃんじゃなくて、特別でいたい感じがひしひし伝わってくるし、日本が無自覚に距離詰めてくるのも尊すぎる。 夜のベッド越しの会話も可愛すぎてやばい。二人とも寝れないの、同じ気持ちなのに気づいてないのもいいなぁ…。明日も一緒に帰るって約束に、勝手に胸熱くなった🔥