【WTノベル版短編集】病院とサーカスとホテルと列車と6人

・

⚠️捏造

________________________________________________________________________________________

俺は昔から自他共に認める“優しい子”だった

困っている人がいたら手を差し伸べる。

そんなの当たり前のことじゃないか。

・

俺の仕事は

『神を信ずる者の悩みを聞き、解決するように手助けをする神父』

だ。

俺の元へ悩みを相談しに来てくれた人が

笑顔になって帰っていく。

それをみるのが楽しかった。

どんな辛い悩みも真摯に受け止める。

そして、俺についたあだ名が

『優しい神の使い』

…また、優しい、か…

あんまり嬉しくないな。

もう、聞き飽きたし。

それならいっそ、神父なんてやめてしまおう。

なんか、いい仕事ないかな。

もう、“優しい”なんて言われないような仕事。

・

kr「…サーカス、？」

ある日、街を歩いていたら、1人のピエロに

声をかけられた。

サーカスなんて、興味がない。

でも…

「お願いです…僕と一緒にｯ…」

「楽しいサーカスを作ってくれませんか…？」

ﾎﾟﾛﾎﾟﾛｯ

なんて、泣きながら俺にそう訴えてくるから

断れなくて、

kr「いいよ」

なんて言ってしまった。

そして俺は

『たくさんの人を笑顔にするサーカスの団長』

として、ピエロと世界のあちこちを旅していた。

『ドリームサーカス』と呼ばれる

このサーカスで活動してしばらく経った頃、

ピエロに言われた。

「きりやん」

「僕の誘いに乗ってくれてありがとう。」

🎪kr

「いや、別に。」

「俺は言われたことをしただけだから。」

「ううん。それでも…」

「僕は助かった。」

「心優しい団長さんだね。」

…また、“優しい”か、、

“優しい”…のか、？

ただ他人に言われたことを全うするだけの

俺が？

🎪kr

「…やめて」

「…え、？」

🎪kr

「…もう…優しいって言わないでｯ…」

「な、なんで…」

「僕は本当のことを……」

🎪kr

「うるさいっ…‼︎」

「もうｯ…もう、うんざりだよ‼︎‼︎」

「いつまで俺は…優しい子でいなきゃいけないの⁉︎ﾎﾟﾛﾎﾟﾛｯ」

「…きり…やん…？」

🎪kr

はｯ…

「あ、…ご、ごめん…」

「……」

「…ごめん。俺、やっぱ団長向いてないわ、」

「……やめるわ、俺。」

「じゃぁね、ピエロさん」

・

…これでよかったんだ。

団長なんて…

俺が本当にやりたいことじゃないし。

…いや、別に本当にやりたいことがあるわけ

でもないんだけどさ。

特にすることもないし…

雑誌でも買って読んでみるか。たまにはな。

ﾍﾟﾗｯ

kr「……何これ…」

『新ウイルス⁉︎ワイテル病とは一体…！』

kr「ワイテル病…？」

kr「…ふーん…感染症か…」

kr「……」

ｽｯ

ﾄｺﾄｺﾄｺ

・

…あーあ…俺…バカだな…

患者を救いたいからって“医者”になる

なんてさ、。

人の性格は変えられないって本当なんだ。

…でも、もう…後悔したくない…。

俺が…。俺が救うんだ。

いや、違う。

“彼”も一緒に…。

🏥kr

「“Nakamu”」

「そっちの患者の様子はどう？」

🏥nk

「うん！大丈夫だよ！」

🏥kr

「そうか。それはよかった。」

俺は、この病院でNakamuと2人で

必ず患者を救う、と決めていた。

だから俺は

彼を信じた。

・

🏥nk

「きりやん！こっちの病棟で患者が…！」

🏥kr

「りょうかい」

🏥kr

「おしまい」

「いま、ねむらせたからだいじょうぶ」

🏥nk

「ありがと〜」

おれは、こうやって、たくさんの患者を

苦しみから“救った”。

・

ビーｯビーｯビーｯビーｯビーｯビーｯ

あ、警告

“救い”に行かなきゃ

🏥kr

「おれ、いってくる」

一旦、手術室に行って準備をしなくちゃ

🏥kr

「まあ、これがあればだいじょうぶでしょ」

・

🏥kr

「遅れてすみません。」

「どうかなさいました？」

🏥br

「先生っ…‼︎」

「なんかｯ…みんなが急にｯ…‼︎」

「急に苦しそうでっ…」

あらあら。

苦しんでますね。

🏥kr

「大丈夫です。」

「私が彼らを救いますね。」

ｽｯ

俺は白衣にしまっていた“メス”を取り出し、

苦しんでいる彼らを1人づつ

ｽﾊﾟｯ

ｽﾊﾟｯ

ｽﾊﾟｯ

🏥br

「…ｯえ、、？」

「み、みんな……？」

🏥kr

「ふふっ」

「今回は3人も“救えた”なぁ」

「そうだ。ついでに君も」

そして、俺は鋭く尖った

赤く染まった“メス”を彼に向けて大きく

振り下ろした。

・

🏥kr

「なかむ〜」

🏥nk

「ん〜？おかえりー」

「…あぁ」

「お疲れ様。」

🏥kr

「今日は4人も“救えた”んだ〜」

「あぁ、なんて俺は」

「“優しい子”なんだろうっ‼︎」

________________________________________________________________________________________