テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
書いてくにょーん
前のアカウントのテンション忘れてるからなんか違うかもw
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
朝の廊下は、昨日と変わらない静けさに包まれていた。
主様はいつも通りの足取りで歩いている。歩幅も、速さも、姿勢も、きちんと整っている。
ただ一つだけ違うのは、指先だった。
無意識に、何度もポケットの位置を確かめてしまう。
そこに、指輪があることを確認すると、
ほんの少しだけ、呼吸が楽になる。
【主様】
「……」
小さく息を吐き、何事もなかったように歩き出す。
食堂に入ると、温かい匂いが広がっていた。
ロノが鍋をかき混ぜながら、こちらに気づいて声を上げる。
【ロノ】
「お、主様! ちょうどいいとこだ。今日はな、結構自信作だぞ!」
【主様】
「ほんと! 楽しみ(* ˊ꒳ˋ*)」
声は明るい。
少しだけ高くて、軽い。
皿が並べられ、湯気が立つ。
主様はきちんと手を合わせ、食事を始めた。
【ロノ】
「ちゃんと食えよ。最近、前より軽くなってねえ?」
【主様】
「えー、そうかな。気のせいじゃない?」
笑って流す。
それ以上踏み込ませないための、ちょうどいい返し。
少し離れた位置で、ハウレスが紅茶を注いでいた。
優雅な動きのまま、視線だけを主様に向ける。
【ハウレス】
「主様」
【主様】
「どーしたの?ハウレス」
【ハウレス】
「本日は、少々顔色が薄いように見えますが」
一瞬、主様は瞬きをする。
すぐに口角を上げた。
【主様】
「そう? よく寝たんだけどな」
即答。
考える前に出る言葉。
【ハウレス】
「……そうですか」
それ以上、何も言わない。
距離を詰めない、その態度がありがたかった。
食後、庭に出ると、風が少し冷たかった。
ラトが気軽な調子で声をかける。
【ラト】
「主様、少し散歩に行きましょう」
【主様】
「いいね!気分転換」
歩き出して数歩。
視界の端が、ふっと歪んだ。
ほんの一瞬。
立ち止まるほどでもない。
【主様】
「……」
【ラト】
「主様?」
【主様】
「あ、大丈夫。ちょっと考え事」
嘘ではない。
ただ、全部は言っていない。
少し後ろを歩くボスキが、無言で様子を見ている。
何も言わないが、その視線は鋭い。
【ボスキ】
「……無理すんなよ」
短い一言。
【主様】
「してないよ」
即答して、笑う。
明るさは、ちょうどいい。
心配させない程度に。
【主様】
「みんな、ただいまぁー(* ˊ꒳ˋ*)」
【執事たち】
「おかえりなさい!主様」
夕方、廊下でルカスとすれ違う。
【ルカス】
「主様」
【主様】
「どうしたの?」
【ルカス】
「……最近、夜は眠れていますか」
問いは静かだった。
けれど、主様の胸の奥が、わずかに揺れる。
【主様】
「えー、寝てるけどなぁ」
少しだけ、早い返答。
ルカスは黙り込む。
何かを言いかけて、やめたようだった。
【ルカス】
「……そうですか」
それ以上は踏み込まない。
けれど、視線だけが、最後まで主様を追っていた。
夜。
部屋の扉が閉まると、明るさが音もなく落ちる。
主様は椅子に座り、ポケットから指輪を取り出した。
静かな光を反射するそれを、じっと見つめる。
【主様】
「……なんで、これなんだろ」
答えは返ってこない。
胸の奥が、少しだけ重くなる。
息を整えるため、声にならない旋律をなぞる。
歌うほどでもない。
口ずさむだけでいい。
【主様】
「月が綺麗、星が綺麗」
一人の時だけ、暗くなる。
それでも、ちゃんと戻れると信じている。
【主様】
「大丈夫だよぉ」
その言葉を、誰もいない部屋に落とす。
まだ、この違和感に名前はない。
けれど確かに――
日常は、静かに、ずれ始めていた。
────────────────────────
NEXT
いいね50
フォロー10人増えたら
更新します