久しぶりのノベル
桃赤
赤side
診断はついてない
傾向があるって言われただけ
それがただただ苦しい
毎日毎日不安とか恐怖で心が支配されて息が苦しくなって。
いつもそう
このまま✘んじゃうんじゃないかって
こんなに怖いなら✘んでしまいたいって
思って願うだけ
話す余裕なんてない
薄く、少なく感じる酸素を必死に貪る
手足が痺れて平衡感覚が無くなって
何度車椅子で運ばれたかわからない
最初は疲れからだと思った
休めばよくなると思った
それでも良くなることはなかった
車椅子で保健室に運ばれるのが1回だけの日はまだいいほうで
酷い時は3回運ばれる日もあった
原因が分からなければ理由も分からない
家で同じように苦しくなる日もある
でも、社会人の兄に迷惑はかけたくない
5年前に両親が他界してから男手ひとつで育ててくれた
それのみならず当時13歳、中学1年生だった俺は
反抗期真っ只中で何度も兄に当たった
夢を諦めてまで俺のために働いてくれている兄に
赤「はぁッ…」
息が苦しい
なんだか嫌な予感がする
だんだんと心が不安で埋め尽くされる
こわい、くるしい
俺の周囲だけ酸素が減ったように感じる
この不安をどうにか和らげたくて
床に座ってくっしょんを抱きしめて
小さく、小さく猫のように丸まる
少し、ほんの少しだけ不安が和らぐ
赤「はぁッ…はぁッ…」
大丈夫…
だいじょうぶ…
ほんの少し残る理性で自分に大丈夫と言い聞かせる
大丈夫…
ここは家…安全…
?「りいぬ…?」
…さとにい?
桃「りいぬ、大丈夫だよ」
桃「口元覆っちゃダメ、苦しさ増すよ」
赤「はぁッ…はぁッ…」
赤「こッ…こわッ…」
桃「いいよ、話さなくていいよ」
桃「大丈夫、呼吸に意識向けて」
赤「はぁッ…はぁッ…」
赤「けほッ…けほけほッ…」
桃「ちょっとお水飲む?」
赤「はぁッ…..ぅ…」
桃「話さなくていいよ」
桃「待ってて、すぐ持ってくっから」
あたたかい…さびしい…くるしい…?
自分の感情が分からない
頭がぼーっとして何も考えられない
ばれ…ちゃったな…
少し、息は整ってきた
まだ苦しいけど
ちゃんと周りに酸素はある
桃「おまたせ」
桃「コップ、持てる?」
赤「…」
桃「ん、飲めるだけ飲んで」
まだ完全に整わない呼吸の合間を縫うようにコップの水を流し込む
つめたい
頭が少しスッキリしてきた
桃「りいぬ」
赤「…」
桃「こんな風に苦しくなったの初めて?」
赤「…」
やっぱり…聞かれるよね
桃「怒んないから」
桃「お願い、教えて」
赤「ッ…」
赤「初めてッ…じゃないッ…」
桃「…そう」
返事…そっけない…
隠してたから怒ってる…?
おれの…せい…?
赤「ぁッ…ごめッ…」
ふわっ
突然、体が何かに包まれた
あったかくて…
おれのすきな匂いがして…
耳に届くこの音は…
心臓の音…?
桃「辛かったでしょ、頑張ったね」
ぇ…
ぁ…?
さとにぃに… 抱きしめられてる…?
赤「ごめッ…なさッ…」
桃「いいよ、大丈夫」
桃「きっと…言いたくないんじゃなくて」
桃「言えなかったんだよな」
頭まですっぽりとさとにぃの腕の中に収まる
今までは話そうと思ってもまるで声が出なくなったように話せなかった
でも、今は違う
蛇口が壊れた水道のようにとめどなく言葉が溢れる
つたない言葉だし時系列もバラバラ
それでもさとにぃは静かに聴いてくれた
うん、うんって優しく…
赤「ごめッ…なさッ…」
桃「いいよ、大丈夫」
あぁ…そっか…
俺が1番欲しかったのは、求めていたのは、
褒めてもらうことでも、背中を撫でてもらうことでもない
頭まですっぽり覆うように優しく抱きしめてもらうことなんだ
桃「話してくれてありがと」
桃「よく頑張りました」
そっと体を離され、目を合わせてそう言うさとにぃ
身長差のせいもあって、おれがさとにぃの膝の上に座ると目線は胸の高さ
赤「さとにッ…もっとッ…もっとッ…」
俺は自らその胸にしがみつき、もっとと強請る
桃「はいはい…笑」
小さく笑いをこぼしたさとにぃはもう一度優しく抱きしめてくれた
俺の頭と背中に手を回して力強く、でも優しくぎゅっと
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