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久しぶりの投稿だ〜
前回と同じ世界線の、まだクリックスが恋心を自覚していない時期のリオクリ↓
『寒い日の朝』
朝七時。
まだ夜の冷たさが完全には抜けきらない時間だった。
空は薄く白みはじめているのに、風だけは鋭く、頬をかすめるたびに肌の奥まで冷えが染み込んでくる。
吐いた息はすぐに白くほどけて、冬の空気の中へ消えていった。
「……さむ」
マフラーに顔を埋めるようにして歩きながら、クリックスが小さくこぼす。
眠気の残る声は少しかすれていて、寒さのせいでいつもよりさらに頼りなく聞こえた。
待ち合わせ場所には、もうリオラが立っていた。
コートのポケットに手を入れ、朝の薄い光の中でぼんやりとこちらを見ている。
寝不足なのか、目元にはまだ少しだけ夜の名残があった。
「おはよ」
「……おはよ」
返ってきた声は、やっぱり眠そうだった。
目も半分閉じたままで、今にもまた眠ってしまいそうな顔をしている。
「ちゃんと寝たんか?」
「寝たよ」
「嘘やな」
「……ちょっとしか寝てない」
「ほら見ろ」
リオラが小さく笑う。からかうような声なのに、どこかやわらかい。
クリックスはそれが少しだけ悔しかったのか、頬をふくらませてそっぽを向いた。
「寒い」
「今日は特に冷えるな」
「手が冷たい」
「手袋は?」
「忘れた」
「またか」
呆れたように言いながらも、リオラはすぐにポケットの中を探って、小さなカイロを取り出した。
冬の朝の冷えを知っているみたいに、慣れた手つきだった。
「ほら」
「ありがと」
クリックスはそれを右手で受け取る。じんわりと広がる熱に、思わず小さく息をついた。
「あったかい……」
その声は、寒さにこわばっていた表情を少しだけほどかせる。右手はカイロを握ったまま、しばらくその温もりを確かめるようにしていた。
けれど、その数秒後。
何の前触れもなく、クリックスは左手だけをそっとリオラのコートのポケットへ差し入れた。
「……」
「……」
一瞬、朝の空気が止まったように静かになる。
「クリックス」
「なに」
「カイロあるやろ」
「あるよ」
「じゃあなんでこっち入れとるん」
クリックスは少しだけ首を傾げた。考えているのかいないのか分からない、いつもの顔だった。
「……なんとなく」
悪気は、ほんとうに一つもなさそうだった。
リオラは思わず目を閉じる。冷たい朝の空気の中で、なぜか自分の方だけが妙に熱を持っていくのを感じながら。
(なんでそんな無自覚なんや……)
「だめ?」
少しだけ首を傾げたまま、クリックスが聞く。その声も表情も、あまりに自然で、あまりに無防備だった。
リオラは短く息を吐く。
「……だめとは言うてへん」
「ん」
満足したように返事をして、クリックスはそのまま歩き出した。
左手は相変わらずリオラのポケットの中に入ったまま。右手にはカイロ。
寒さをしのぐためのはずなのに、その姿は妙に落ち着いていて、まるで最初からそうしていたみたいだった。
歩幅まで自然と揃っている。
通学路の向こうから、同じ学校の生徒がこちらへ向かってくるのが見えた。
まだ眠そうな朝の顔で、何気なく挨拶をしかけたその生徒は、二人の姿を見た瞬間、言葉を止める。
クリックスは何も気づかないまま歩いている。リオラも気づいてはいるが、今さら手を振り払う理由もなかった。
「……寒い?」
リオラが聞く。
「うん」
「まだ?」
「うん」
「どんだけ寒がりやねん」
「冬きらい」
「知っとる」
短いやり取り。
たったそれだけの会話なのに、二人の間には妙な落ち着きがあった。
寒さに肩を寄せ合うみたいに、自然で、当たり前みたいで、見ている方が落ち着かない。
その様子を見ていた生徒は、心の中でひそかに叫ぶ。
(え、付き合ってないんだよな……?)
(なんでそんな自然なん……?)
本人たちは今日もいつも通りだった。
寒い朝の空気の中で、ただ隣を歩いているだけ。けれどその何気ない距離の近さに、周りだけが朝から振り回されていた。
冬の寒さが和らぐころには、2人に春の風が吹き今以上に周りが振り回されることになるのだが、それはまた別の話。
コメント
6件
すごっ!!! めっちゃロマンチック✨✨ こうゆう書き方できるのまじ尊敬しかないよ…😭😭😭 無自覚っていいね😇👍手繋いでるの!?ありがとうこざいます🫠
あぁ〜!、! 最高すぎです!! いっつも楽しみにしてます!!!
うわ、この無自覚スキンシップ……クリックス、悪気なさすぎて逆に罪深い(笑)寒い朝の空気がじんわり伝わってくる描写も好きだし、リオラの「だめとは言うてへん」に隠れた甘やかしが尊すぎる…。周りから見たら完全にデフォルトカップルなのに自覚ゼロって、これからの展開が楽しみで仕方ないです🥀🤍
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