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バレンタインですね(呆れ)
何も書いてませんでした、書きます。
「今日は待ちに待ったバレンタインですね、カイ」
「私をカイと呼ぶのをやめてください」
「あはは、揶揄っただけですよ」
カイ…もといマキシミンに声をかける。彼が時たま呟く”カイ”という名前。
多分大切な人の名前なんだろう。まぁ、カイについて聞いても「分からない」と言われるだけだが、彼は記憶を飛ばしているので、仕方のないことだろう。
「チョコレートを作ってきたんです」
「そうなんですか?」
「あなたにあげますよ」
「ありがとうございます」
相変わらず機械的だなぁ、なんて考えつつ、全力で消毒しながら作ったチョコレートをからが食べるのを待っている。
なかなか食べ出さないが……まさか、会社で食べ物を食べるなんて!ってことだろうか?
いつも私と仕事中にお茶会をしているのに、なんて律儀な…待て、彼はお茶会中も紅茶を飲むばかりで、お菓子に手をつけなかったな…?
「…私以外誰も見てません、食べても良いのですよ」
「あなたが見てるではありませんか」
「では、後ろを向きます」
どうしても食べているところを近くで見たい気持ちを抑えて、くるりと回った。
少し間が空いたが、すぐに袋を開ける音が聞こえてきた。
あぁ、食べてくれるんだ。となんとなく嬉しくなる。
私ほどではないが、彼もなかなかの綺麗好きだ。まぁ、彼が綺麗好きなら、私は潔癖と言ったところだろうか。
私が頑張って消毒した手で作ったチョコレート。あまり出来はいいと言えない。
なぜなら、この会社に来るまで、まともに料理をしたことがなかったから。
家に居た時は、バトラーのような人たちがやってくれていた。
妹も、兄もそうしていた。
…家族のことを考えると、悲しい気持ちになってくる。だから、やめた。
「…食べてもいいのですか」
「まだ食べていなかったんですか?どうぞ」
多分、迷っているのだろう。
別に規則には書かれていない。ただ、彼はなんとなく躊躇っている。
彼に植え付けられた常識のようなものだろう。うちの支部では、誰もがお菓子をつまんでいるというのに…。
「…いただきます」
その後すぐ、ぱきっ、という音がした。
想定以上に固く作ってしまったらしい。申し訳ないことをしたな…と思っていたら、後ろから声をかけられた。
「悪くないです」
最大の賛辞だった。
「…ありがとうございます、マキシミン」
振り返らないまま答えた。
振り返ったら、彼も振り返ってチョコレートを隠すようにしてしまうだろうから。
作ってきて良かったな、と思う。
なんですかこれ。
カプ要素ない…まぁいいか…。