テラーノベル
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「でさ、ここが………………え、聞いてる?」
ギターを抱えたままの若井が振り返った。
該当箇所について教えて欲しいって呼ばれたんで、
譜面台前に座る若井の後ろから指導を少し。
その最中、顔面ばっか見てたら話を聞いてるかどうかの審査が入ってしまいまして。
「聞いてるよ?なんて言った?」
「聞いてないじゃん」
脅威のスピードで矛盾発言。問答無用で腕を叩かれる。
ちゃんと聞いてよ、と零す若井の視線が再度譜面に向いた。
「だからここが………めっちゃ見るじゃん、なに??」
「……や、なんか…」
猫っぽい、って思った。
あれ。そういや前にもどっかの媒体で。
「メンバーを動物に例えるなら?」
そんな質問はかなりありがちで、自分達もそうやって聞かれた経験がある。
二回ぐらいは聞かれたかな。下手したらもっと。
その都度回答が変わったりもあるけど、一貫して変わらないのは若井に対してのイメージ。
猫。とにかく猫。
猫っぽい、らしさがある、ってのは結構涼ちゃんも言ってる。
ツンデレ云々って感じじゃないんだよな。
寧ろ真逆なまであるかも。
呼んだら何しててもすぐ来るし、言葉に置いても行動に置いても感情表現がすんごいストレート。
どちらかと言うと犬では。
多少のマイペースさはあるけど 何処に猫らしさを感じるかと言われればやっぱり顔立ち。
小さく結ばれた口元と切長の目。
こう見るとそれを縁取る睫毛も結構長さがあって。
時折見える犬歯からもそういった印象を受ける。
ここまで約3秒。脳内で考えがまとまった。
「……猫っぽいよねぇ」
「…………うん?」
「若井って猫っぽいよねって。」
何とも理解し難い、と言うような表情をされた。
「…………あぁそう………ねこ……猫…?」
まぁそうなるよね。
ギターを教えろって言ってんのに顔しか見られない挙句お前は猫っぽいと言い渡されたんだから。
でも見れば見る程、益々。
前髪の隙間から見上げてくるその瞳をじっと見つめ返す。
適当な返答が思い付かないのか、少しの沈黙が空間に流れた。
数瞬の間を利用して 若井を見下ろしながらその頬を両手で包むように触れる。
すぐに悪戯したくなるのが大森元貴。
んで、そんな悪戯な心に忠実なのも大森元貴。
そのまま親指で下唇の柔らかさをなぞった。
「舌出してみて?べって。」
「なんで、やだよ。笑」
眉を下げて笑い、顔を背けるようにして触れている手を払う。
この表情が好き。ちょっかいかけた時、本気で嫌がってない時のふにゃっとした表情。
若干笑いの混じった柔らかい声も。
ほんとかわいーの。
「ちょっとだけでいいから、ほら早く」
主導権を握るのは得意。大の得意。
手は離さないまま視線を此方に固定させる。
言いたいことはありそうだけど、こうなったらもうどうしようも無いことを若井は知っているらしく。
仕方なさそうに小さく舌を出した。
一瞬目線を合わせて、それからすぐにギターを抱え直す。
唇の端から僅かに覗かせる程度。思っていたよりも少しだけ。
逆にそっちのが効くかも知れない。
教わる気無くなったんじゃないのってぐらいずるいよ、今の。
後ろから若井の腰を抱き締めて、肩口に顔を埋めた。
「ねえ若井、終わりでいい?俺もう結構無理」
「結局なんも教わってないんだけど」
け 〜 ち ゃ ん .
「じゃあ代わりに鳴き方教えてあげるね」
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