テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
670
るぅ
79
いちご@やる気上昇中⤴︎
38,535
翌日の昼過ぎ。
昨日の配信を終えても、何も変わらなかった。
朝になっても、シクフォニは存在しないまま。
暇72は今日も街を歩いていた。
暇72「……どこだよ」
スマホには、この世界で調べられる情報だけが並んでいる。
高校教師になったいるま。
それ以外は何も分からない。
みことも。
すちも。
LANも。
こさめも。
どこで何をしているのか、手掛かりは一つもなかった。
暇72「探すって決めたくせに……」
小さく笑う。
決意したはいいものの、こうして当てもなく歩くしかない自分が少し情けなかった。
◇◇◇
気付けば昼を過ぎていた。
暇72「腹減った……」
昨日からろくな物を食べていない。
コンビニで済ませようかと思ったその時だった。
ふと、一軒のカフェが目に入る。
木目調の外観に、大きなガラス窓。
落ち着いた雰囲気の店だった。
暇72「……。」
何となく足が止まる。
理由は分からない。
でも、なぜかこの店が気になった。
暇72「……入るか」
ドアを開ける。
カラン、とベルが鳴った。
「いらっしゃいませ」
聞こえた声に、暇72の呼吸が止まる。
カウンターの中。
黒いエプロンを付け、注文を取っている青年。
優しく笑うその顔は――。
暇72「……みこと」
思わず名前を呼んでいた。
青年は驚いたようにこちらを見る。
みこと「え?」
目が合う。
間違えるはずがない。
毎日一緒にいた仲間。
シクフォニのメンバー。
暇72「……みこと」
もう一度、小さく呼ぶ。
みことは首を傾げた。
みこと「俺のこと知ってるん?」
その一言で現実に引き戻される。
暇72「……あ」
まただ。
いるまと同じ。
覚えていない。
暇72「えっと~……」
慌てて頭を回す。
暇72「インスタで見たことあって」
苦しい言い訳だった。
それでもみことは疑うことなく笑う。
みこと「あー、そういうことか!」
「最近SNSもやっとるしな~」
「見てくれてありがと!」
その笑顔は、何も知らない笑顔だった。
思わず苦笑する。
人を疑わないところまで変わらない。
胸が少し痛む。
みこと「お好きな席どうぞ」
暇72「……ありがと」
窓際の席へ座る。
店内には静かな音楽が流れている。
カップを置く音。
コーヒーの香り。
穏やかな空気。
みこと「ご注文お決まりですか?」
みことがメニューを持ってやって来る。
暇72「おすすめある?」
みこと「初めてやったら、ブレンドとサンドイッチかな」
暇72「じゃあ、それで」
みこと「かしこまりました」
笑って厨房へ戻っていく。
その後ろ姿を見つめながら、暇72は思う。
本当に、みことだ。
歩き方も。
笑い方も。
声も。
全部同じなのに。
自分のことだけ覚えていない。
しばらくして、コーヒーとサンドイッチが運ばれてきた。
みこと「お待たせしました」
暇72「ありがとう」
カップを受け取る時、指先が少しだけ触れる。
その瞬間だった。
――『なっちゃん、それ一口ちょうだい!』
――『えぇ? また?』
頭の中に、一瞬だけ過去の光景がよぎる。
打ち上げ。
六人で囲んだテーブル。
「……。」
気付けば目頭が熱くなっていた。
みこと「……大丈夫?」
みことが心配そうに覗き込む。
みこと「顔色、悪いけど」
暇72「あ……ごめん」
慌てて笑う。
暇72「寝不足。」
みこと「あー、それはあかんな」
みことは少し困ったように笑うと、
みこと「甘いもん食べたら元気出るで」
そう言って、小さなクッキーを一枚皿に乗せてくれた。
みこと「これ、サービス」
暇72「え?」
みこと「店長には内緒な。」
いたずらっぽく笑う。
その笑い方まで、変わっていなかった。
暇72「……ありがとう」
クッキーを口に運ぶ。
ほんのり甘い味が広がる。
みこと「おいしい?」
暇72「うん」
自然と笑顔になる。
みこと「それならよかった」
みこともつられて笑った。
その笑顔を見ていると、不思議と心が少し軽くなる。
帰ろうと席を立った時だった。
みこと「なぁ、」
みことが呼び止める。
暇72「ん?」
みこと「……どっかで会ったことある?」
暇72は目を見開く。
暇72「え?」
みこと「いや、分かんないけど、」
「でも、初めて会った気ぃせぇへん。」
「なんやろな」
そう言って困ったように笑う。
その言葉だけで十分だった。
忘れていても。
心のどこかには残っている。
暇72「……俺も」
みこと「え?」
暇72「初めてじゃない気がする」
みことは少し照れくさそうに笑った。
みこと「変なお客さんやな」
暇72「また来てもいい?」
その言葉に、みことは迷うことなく頷く。
みこと「もちろん!」
「いつでも待ってるで」
その一言が、嬉しかった。
◇◇◇
店を出ると、空は夕焼けに染まり始めていた。
暇72「二人目……」
小さく呟く。
いるま。
そして、みこと。
二人とも覚えてはいない。
それでも、心のどこかで自分を「懐かしい」と感じてくれた。
その小さな違和感が、なつには希望だった。
暇72「絶対、みんな見つける。」
そう呟く声は、昨日より少しだけ前を向いていた。
next→♥1000
コメント
7件
見るの遅れてごめん( >ㅿ人) ♡1200にしといたよぉ( ᐕ) 次誰似合うんやろ…✧(*,,ÒㅅÓ,,)✧
書くの上手すぎね!? ふぉにさんたち再会できますよ~に!!
更新ありがとうっっ! 👑ちゃんが懐かしいって思えるのはきっと🍍くんが頑張ってたくさん話しかけたからなのかなぁと思うともうやばいっ!! 続きも楽しみにしているねっ!