仮出場が許されたとはいえ、本戦までにはまだ時間があった。
大会への緊張感と、そしてどこか現実味を帯びない不思議な感覚を抱えながら、鳥取は砂丘を歩いていた。
——ゴォォォォ……
潮風が頬を撫でる。
「……ふぅ。」
鳥取は深く息を吸い込み、そしてゆっくり吐き出した。
白い砂の海が、どこまでも続いている。
子どものころから見慣れた景色だったけれど、今は、少し違って見えた。
(俺、本当に……全国のみんなと戦うんだな。)
心の奥で、小さな震えがあった。
怖さじゃない。
ワクワクだ。
期待と、不安と、誇りと——全部がぐしゃぐしゃになった感情だった。
「……!」
ふと、上空を見上げる。
一羽の白い鳥が、悠然と空を滑っていった。
その姿に、なぜか鳥取は勇気をもらった気がした。
「……よし。」
足元の砂をグッと踏みしめる。
小さな一歩。
でも確かに、進み始めた一歩。
そのまま鳥取は、町の方へ歩き出した。
砂丘を越えれば、そこは彼の日常。
小さな喫茶店、古びた商店街、静かな港町——。
どこに行っても、顔見知りがいて、やさしい空気が流れている。
喫茶店のマスターが声をかける。
「お、鳥取くん。今日も砂まみれだなぁ!」
「はは、ちょっと、走ってきたんです!」
「そっかそっか。コーヒー、一杯サービスしとくぞ。」
「ありがとうございます!」
そんな、いつもの日常。
でもその裏側で、鳥取は静かに、拳を握った。
(必ず、結果を出す。……この鳥取を、誰よりも強くしてみせる!)
誰にも聞こえない、小さな誓いを、心に刻みながら——。
コメント
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祝20話だ~‼️おめでとうございます!!!なんでそんなに文章書くの上手いの!!分けてy(((((