テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
───ガチャンッ……
『……っ、はぁー…………』
〖きゃううん……〗
〖チャモ…〗
家に帰るなりその場にズルズルと倒れ込む
心臓はドッドッドッ…と強く鳴り響いている
久しぶりの恐怖に体が怯えてしまっている
昔はこんなの平気だったのに、やはり人は幸せを知ると弱くなるというのは本当だったのだろう
小さく震えるシオンを心配するようにリュックの中からエムリット…そしてヤドンの着ぐるみを着たアチャモが現れる
『アチャモ…ごめんね。怖かったよね』
あの砂煙の時に、アチャモがびっくりしたリュックに入ってくれてよかった
そのお陰で頭の賢いエムリットが機転を聞かせてアチャモに着ぐるみをつけてくれたからなんとか逃げれた
『ありがとうね、アチャモ。エムリットもよく思いついたね』
〖きゃううんっ!〗
立ち上がり、リビングに向かいながら貰った羊羹をよく見る
『(盗聴器とかはなし…匂い的にも……毒は無さそう)』
少し怪しみながら貰った羊羹をひとつ食べる
すると甘みが口いっぱいに広がる
『ん、おいし…!!って、シャワーしなきゃ!変に汗かいたしー』
てっきり何か小細工されてるかと思ったがそうでもなかった様子
それに安心しつつ、早歩きで脱衣場へ向かう
そんなシオンの後にエムリットとリザードンがついて行く
そんなリザードン達を心配させまいといつもの笑顔を作り気丈に振る舞う
『もー、大丈夫だって何もされてないよ。けどエムリット、あの人達がそう?』
服を脱ぎながらエムリットに問いかけると、怯えた表情で何度も頷くエムリット
『…なるほどね……』
レギネは人当たりがよく見えるが、やはり只者では無いだろう
なにより、エムリットの怯えようをみたら余程怖い思いをしたのだろうと理解できる
部下はあまりだが、レギネの雰囲気や立ち振る舞いを見るとどちらかと言うと此方側の人間に見える
シャワーを浴びながら、考える
どうすればエムリットを守れる?
見た様子だと対象には1度外れているだろうが、その嘘もいつまで続くか…
『…エムリットは外出たいの?』
〖きゃうんっ!〗
『うーーーん……』
リュックは中から外が見えるものにすればいいだろうか…
『…やっぱカラスバさんに話してみよう』
今日は遅くなるけど帰ってこれるって話していたし
エムリットのことを考えながら待っていよう
───数時間後
アチャモ達も眠り、シオンもこくっ、こくっ……と眠気に負けそうになっていた時だった
──ガチャッ、と玄関のドアが開く音が聞こえる
『!あ、カ、カラスバさ───』
慌てて飛び起き、立ち上がるなりカラスバの方へ向かうがカラスバを見て息を飲む
黒いスーツに滲んだ赤黒い液体と鉄が錆びたような匂い…
ああ、今日のお仕事はミアレの掃除でもしてきたのだろう
『おかえりなさい、まだ血染みてないしこれくらいならのくかなぁ〜…っあ!』
「触らんでええ」
『あ、で、でも…血が』
「触らんでええ言うとるやろ」
少し低い声にびくっと肩を揺らすが、すぐにいつもの笑顔を作り陽気にカラスバへ話しかける
『お風呂温めてるので、ちゃんと入って下さいね〜!』
「──んで」
『え?』
「なんでおるんや」
カラスバの言葉にドクッ、と心臓が嫌な音を立てる
きっとカラスバは「なんで寝てないのか」という意味で聞いたのだろう、しかしシオンにはそのままの意味で聞こえてしまった
『あ、えと…話したい、ことあって……』
「それ急ぎなん?」
『あ……と……』
よく見るとカラスバの顔はクマが出来ており、目も虚ろでしんどそうだった
そんなカラスバを見て、口をぐっと紡ぐ
『ううん!急ぎじゃないです!!しんどいのにごめんなさい』
「そ、それならはよ寝。飯もいらんさかい」
『…はーい!じゃあ、おやすみなさい。カラスバさんっ!』
いつも通りの飄々とした笑みを浮かべちゅっ、とカラスバの頬にキスし寝室へ1人入る
「(別にオレのことなんか待たんでええのに…シオンに血の匂いつくし…)」
そう思いながら、カラスバはスーツを脱ぎ脱衣場へ向かった
少し遠くからシャワーの音が聞こえる
『(話せなかったな……)』
布団の中でぎゅっと身を縮こませる
そんなシオンを心配し先にベットで眠っていたアチャモが起きてシオンへ寄り添う
『…ごめん、今日怖い思いさせたよね。アチャモ』
呟くとアチャモは首を横に振りシオンの顔へ自分の顔を擦り付ける
〖なんでおるんや〗
『……私…居たら、やなのかな…めんどくさいのかな…っ』
瞳に涙が滲む
数時間前に起こった出来事もあってか、弱ってしまっている
カラスバさんがそばに居るのに、泣いたらダメ
早く泣き止まないと
『っ、ふ……ぅ…ぐすっ…』
〖チャモ…〗
『…嫌われ、たら…どうしよ…っ』
溢れ出る涙を何度も拭いながら、アチャモを抱きしめ布団の中へ深く入っていった
───???
「1人怪しいヤツがいたけど、見当違いやったわ」
レギネがソファの上で煙草を吸いながら向こう側に座る男に話しかける
「ふーん…ミミッキュね……でも怪しいなら取り上げたら良かったじゃん」
「あんなァ、変な恨みを作っちゃこの業界じゃ終わりなんだよ坊や」
そう言って溜息をつきながら、灰皿に吸殻を押し付けるレギネ
「因みにさ、どんな子だったの?」
「んー?紫髪の女や。ポケモンバトルの腕はそれなりにあったな……」
「へぇ、ポケモンはあんま興味ないんだよね~」
「あー。あと特徴的な目してたな」
「特徴的な目?」
男の眉が動き、レギネを不思議そうに見つめる
「どピンクの目でさ、純粋そーな目してたけどありゃカタギの人間じゃねーな」
「へぇ……」
男は何かを思い出すように、机を手で小さく叩く
ピンクの瞳のいえば、小さい頃に出会った、小さな女の子
よく泣いてた、惨めで可哀想な子
〖ひくっ……こわいよっ…一緒に、いて…っ〗
初めて俺を求めてくれた可愛い女の子
あんな環境だしもう生きてないだろうけど、凄く大好きだった
「…ほんと、可愛かったなぁ…」
「あ”?なんだよ、いきなり気味がわりぃ」
「昔好きだった子を思い出してさ~!ちょっとときめいちゃった」
「はぁ…?きも…」
少し頬を染めて話す男にレギネは冷ややかな目線を送った
コメント
4件

最新話ありがとう