テラーノベル
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「ずぶ濡れだァ…」
「そだね〜☆」
ワンちゃん夜デートしよー!と風呂に入った直後、唐突に誘われた。いつもこう行き当たりばったりで行動するのを辞めてほしいと本気で思う。もう風呂入ったし、このまま寝たい気分だったから「嫌だ」とキッパリ断っても
まぁまぁ!と取り合ってくれず、結局外へ連れ出された。
レローゼの目的はライトアップを見に来たかったらしく、綺麗だね〜!と俺の手を一方的に掴んで駅前を歩く。こんなの見て楽しいかァ?
「えー?僕はこーゆーの好きだけどな〜! …それに、さ」
「ワンちゃんと見るから楽しいんだよ?」
さりげなく掴んでいた手を恋人繋ぎに変えて、声を優しく低めてにやっと笑った。顔が熱くなるのを気のせいだとレローゼに顔が見えないように、そっぽを向く。
「っ…、るっせェ」
「あれれれれ〜?ワンちゃん照れちゃったのかな〜!?」
「だから!うっせェよ!」
そんなやり取りをしていたら、ぽつ、ぽつと冷たい水が頭に当たる。思わず二人その場で立ち止まり、レローゼと顔を見合わせた。地面が水玉模様に色を変え始めた次の瞬間。ザァァァァと滝みたいに降り出した。
周りの人も唐突な雨に、走り出したり、鞄を傘にしたり、コンビニに入り込んだり、折りたたみ傘を出したりとそれなりに対策しているのに
レローゼはその場で立ち尽くし「わぁお」と短く呟いて、空を見上げている。
「雨やっばいね〜!アッハハ!☆」
「笑ってる場合じゃねェだろォ!?」
呑気に笑うレローゼを連れてそのまま慌てて走り出す。
路地裏に曲がった先、丁度隠れ家のように佇むホテルがあったので、雨宿りに入った。
鍵の受け取りを行って部屋に入る。ぽたぽた、と雨水が廊下へ滴り落ちる。
ポールハンガーに遠慮なく、濡れて重くなった上着を掛ける。風呂場に常備してあるタオルを取ってきて、髪の毛を拭く。
「それにしても…、すげぇ部屋だなァ」
キョロキョロと部屋の中を見て回ると、大きなソファに、タオルを取りに行く際見えた広いジャグジー。そしてキングサイズのベッド。白と金色の縁取りを意識した内装はまるで城みたいだ。
「っ……くっ…、ふっ、」
必死に押し殺すような声が、俺の後ろで聞こえて振り返る。すると口を抑えながら、ぷるぷる体を震わせレローゼが笑いを必死に堪えて居た。今の何が面白かったんだ。
「なっ、何だよォ!」
「っ、は、アッハハ…!!やっぱり気付いてなかったんだね、ワンちゃっ…ふふっ、」
ひときしり笑った後に息を整えて、じっと目を細めて俺を見る。
「ここさ〜!……ラブホ、だよ?」
「…は、」
言われた事への理解が及ばす、目を見開いて部屋を見渡す。やけに豪華な部屋は、やけに広い風呂は、大の大人三人は寝られるような大きさは、意識し始めた途端に顔が異常に熱くなるのを自覚する。
「っ、!何で早く言わねェんだよォ!」
「アッハハハハ!だって、雨だったしぃ〜!ワンちゃん、僕が教えようとしたらすぐ入ってったじゃん〜!」
その言葉に何も言えなくなる。確かにレローゼはここに入る前に何か伝えようとしてたが、雨が酷くなっていたしホテルに入ってからでも良いかとそのまま入ってしまった。俺のバカ…!!
「っ……、今すぐ帰るぞォ!」
くるりと振り返って帰ろうと、玄関前まで歩き、ドアノブに手を置こうとした瞬間、レローゼに素早く腕を掴まれた。
「も〜言ってんの?今……土砂降りだよ?」
その声がいつもよりも低く感じた。声を聞いた瞬間、掴まれた腕からはじわりと熱が広がっていく。
「……はなせよ、腕」
「ワンちゃんなら、振り払えるんじゃない?単純な力勝負なら…、僕より強いでしょ?」
振り払えるはずのその手を、どうしても振り払えずにいる。その事に気付いているレローゼはにやりと笑う。 ただその目の奥は笑って居ないし、雨に降られた服が、ぴっちりと体のラインを表していて、それをレローゼにまじまじと見られる。その視線がどうにも落ち着かない。
「ワンちゃん。ワンちゃん」
「ぃ、ぬじゃねェ…って、」
大きな手が先程とは打って変わり、硝子細工を扱うようにそっと俺の両頬に手を添えた。レローゼに触れられた場所から、すっかり冷え切った体に温もりが広がっていく。その温かさが心地良くて、つい体から根が生えたように動けなくなる。
「…その顔ずるいなぁ、ワンちゃん。」
「…ど、んな…顔だよ」
頬に添えられた手の親指だけを、俺の唇に添える。 レローゼの視線が、俺の顔と唇を、交互に見比べる。 ぼつぼつと窓に打ち付けられた雨音が頭の中を支配する。目線を逸したい、でも逸らせないのがもどかしい。
「…ん〜?触れてほしくて堪んないって感じかなぁ?」
「はぁっ…?…んな顔っ…んっ、」
心の何処かで自覚してしまっている事を、認めたくなくて口を開くと、そっと唇で塞がれてしまった。
「ん~っ……っ、ん……、ぅ」
角度を何度も変えながら、優しい、押し当てられるだけのキス。甘やかされているようなキスに足が小刻みに揺れる。暫くするとレローゼが唇を離していった。まだ唇の柔らさが、温もりが、感触が、残っていて。唇を付い触ってしまう。
「いきなりっ…何だよっ、」
レローゼの肩を押し返して少し距離を取る。雨のせいで冷えている室内は、まるで寒さを感じない。むしろ暑く感じる。やけにどく、どくと心臓の鼓動がうるさい。
「…じゃあ、このままやめる?」
企みを含んだ声と共にいたずらっ子のような顔をして、わざと訪ねてくる。こう言われると断れないのを知って、お前のせいで、物足りなくなっているのを分かってて。こいつはずるい。
「…雨、どのみち降ってる、から…ぃいぞ…」
「じゃー今日は雨せいってことで!」
「ねっ、…フェン?」
「っなまえ……呼ぶの、ずるぃ…だろォ…!」
静かな部屋に水の音がやけに響く夜だった。
コメント
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読んで頂いた方ありがとう御座います✨ 短編集の方に入れようかと思ったんですけど…、ぬるめでもやっぱり微Rな気がしたんで読切で作りました…! Rは好きなんですけど…、私R書くの下手すぎて…どうしましょう(聞くな)