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茈赫
妊娠パロ
(茈百?)
茈side
赫「子供、出来ちゃった(笑)」
茈「は、?」
暑くなり始めた7月の初め。
土の下から出てきたばかり蝉の声が耳の奥で響く。
茈「ほんとに、?(泣)」
赫「うん(笑顔)」
仕事から帰ってきた俺に投げかけられた赫からの言葉。
どれほどこの言葉がこの時の俺にとって嬉しかったか。
きっと誰にも分からないだろう。
茈「っ…ありがとうっ、(泣)」
赫「…泣きすぎだろ(笑)」
身体の力が抜け、倒れ込む俺に優しく手を伸ばし頭を撫でてくれる赫。
赫の手のひらの温度が俺の頭から伝わってくる。
茈「俺、全力でっ、サポートするからっ(泣)」
赫「おう、ありがとな(笑)」
本当に、嬉しかった。
もともと、俺たちの関係は歓迎されていなかった。
男同士、という世間的にはありえないものだったからだ。
それに妊娠も簡単にできる訳でもない。
(いろいろめんどくさいので男の子でも頑張ればできるってことにしてください)
親族からは大反対され、家族との縁を切られた。
それでも、赫と生きていく以外の道が見えなかった。
妊娠16週目。
安定期に入りはじめる頃だった。
茈「順調?」
病院から帰ってきた赫に問いかける。
この日はどうしても外せない仕事があって、たまたまひとりで行かせていた日だった。
赫「…。」
茈「…赫?」
妊娠が発覚してから暫くたち、この日はとても寒かった。
赫「…(泣)」
茈「赫!」
帰ってきた赫はいつものような笑顔とは正反対な苦しげな表情を浮かべていた。
赫「っ、ごめんっ、ごめんッ…(泣)」
茈「赫、…(頭撫)」
赫の身体は危ない状況にあった。
もともと男性は妊娠をするもんじゃない。
それは分かっていた。
だが、それにどれだけの負担がかかるのか。
分かっているようで分かっていなかった。
赫「…この子を産む時、俺は死ぬかもしれない。」
茈「…え、?」
少したって落ち着いた赫がぽつりと言葉を漏らした。
赫「この子を生かすか、俺が生きるか、選べって。」
茈「そんなの、」
赫に決まっている、と口に出そうとした瞬間赫の綺麗な手のひらが俺の口を塞いだ。
赫「俺はこの子を産む。」
茈「っ…ふざけんなっ、! 」
赫「ふざけてねぇよ。」
たしかに子供が出来たと聞いた瞬間は嬉しかった。
でもそれは、赫が居るという前提があったからだ。
茈「…赫が、居ないと…」
赫「ふっ…(笑)」
縋るように赫を説得する。
辞めてくれと。
まるで赤子のように。
赫「なぁ、俺のこと好き?」
茈「そんなの、好きに決まって」
赫「じゃ、我儘きいてよ?(笑)」
笑っているのに、泣いているような表情を浮かべて赫が呟く。
茈「…そんな、我儘聞けないっ…(泣)」
赫「俺我儘だからそんなこと言われても言うこと聞けなぁい(笑)」
茈「お前…、!」
赫「まあまあそんなキレんなって(笑)」
真剣に話をしているのに普段通りに、なんて事ないことかのように話す赫。
赫「お前ならどうにかやってくれんだろ?」
茈「…嫌、やだ、無理…、(泣)」
赫「そんな俺みたいに泣くなよ(笑)」
普段赫が甘えてくる時のように足にへばりついて離さない。
そんなことをしても、赫の意見は変わらなかった。
赫「俺、死ぬ前にこんなでけぇ赤ん坊の世話なんかしたくねぇよ?(笑)」
茈「…赫っ、」
結局、この日から最期の日まで赫の意見は変わることがなかった。
4月18日
赫「茈っ、」
茈「…やっぱり、辞め」
赫「大好き(笑顔)」
茈「…赫っ、(泣)」
予定より遅れてしまい、このままだと赫の体に負担がかかりすぎてしまい、母子ともに死んでしまう状態だったため、帝王切開が行われることになった。
赫「茈は?」
茈「…愛してる、(泣)」
赫「ふっ、ありがと(笑)」
最後の会話。
もう二度と聞けない愛しい声。
もう二度と見れない赤い瞳。
もう二度と感じる事ができないこの暖かい体温。
茈「…っ、逝かないで、(泣)」
赫「…」
茈「1人に、しないでっ、…(泣)」
こんなこと言っても困るだけなのに。
分かっていながらこんなことを言ってしまう。
赫「…ごめんね(泣)」
茈「…っ、(泣)」
あの日と同じように、頭の上に赫の手のひらの体温が襲う。
それと同時に暖かい雫がぽたぽたと頭を濡らしていた。
赫「最後の、我儘、聞いてくれる?(泣)」
茈「…ああ、(泣)」
赫「この子のこと、よろしくね(泣)」
茈「…っ、赫、」
赫「愛してる、茈っ!(笑顔 泣)」
茈「…あいしてるっ、(涙顔)」
もしかしたら、どちらも健康体で帰ってきてくれるかもしれない、なんて淡い期待は呆気なく裏切られた。
「…最善を尽くしましたが、
残念ながら赫さんは───」
百「父さん、」
茈「…」
赫の命と引替えに生まれてきた子供。
愛さなくてはいけないのに愛せなかった。
百「…」
心做しか赫に似ているところが多い姿を見るのも苦しい。
赫に、頼まれたのに。
百side
ごめんなさい。
生まれてきて、ごめんなさいっ…(泣)
茈side
…赫、愛してる
コメント
3件
もぉおぉぉ っっ 、、、 ほんとに すき これしかでてこない 。
参考 阿吽のビーツ