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あの大日本帝国に恋人がいる
ナチス、日帝、イタ王を中心とした枢軸国の会議が今日も行われようとした。ナチスは非常に律儀な性格をしているため、いつものように誰よりも早く来た…筈だった。
「あ!ナチきたんね!イオ、面白い話聞いちゃったんね!実は…日帝に恋人がいるかもしれない、っていう話なんね! 」
「…ほう。何故だ?」
「なんか、チョコレートを買っているとこをみ見た国がいるんね!しかも…」
「分かった。もう大丈夫だ。」
お得意の無表情で隠したが胸中は荒れていた。
(イベントに浮かされるよなキャラじゃない日帝が…)
同盟国になった日帝を、ナチスは特別な目で見ていた。友情、という言葉ではあまりにも軽すぎ、イタ王に向ける感情と同じかと問われれば、全然そんなことは無い。
ただ、好き、という感情があるのは確かだった。
華奢な身体に凛とした声、気の強そうな目に紅く綺麗な瞳。その裏にある実は優しい性格などあの男と契約を交わしてから、ナチスの世界は変わってしまった。
そんなこんなでイタ王が嬉しそうに喋っている話を右から左に流し、放心状態で色々考えていた時、コンコン、とリズム良く叩かれたドアの音が聞こえた。
「日帝だ…」
「毎回思うけどノック音だけで日帝か分かるのきっしょいんね! 」
「失礼します…って、みんな早いな…しかもイタ王何故か気絶してるし…」
「お疲れ様です!日帝さん!」
「ああ、ハンガリー。久しぶりだな」
「失礼ですが、日帝さんって、恋人いるんですか?!」
「…なぜ?」
やめろ。聞きたくない
「日帝さんがチョコレートを買ったのを見た国がi…」
「おい」
「私語を慎め。今から会議だ」
「すいません…」
「先輩、予定時間より結構早くないですか…?」
「そんなことは無い」
ああ、イライラする。顔も名も知らない日帝の意中の相手に。
「まあまあ、時間通り始めましょ!というわけで、誰にチョコを買ったんですか?」
「イギリスさんだ」
「え?」
「同盟が破棄になったとはいえ、お世話になったからな。」
無意識に安堵のため息が出た
「なーんだ。つまんなーい」
「えー!恋人はいないってことなんね?」
「大体、誰かの虚言だ。それは」
「何だか安心しました。日帝さんのそういうとこ、好きです」
「会議を始めるぞ。次こそ本当に時間だ。」
会議が終わり、次から次へと国が出ていく中、残ったのはナチスと日帝だった。正直、どのような旨でイギリスにチョコレートを渡すのかが気になったが、どうしても聞く気になれず、かと言って話題も無いので自分も出ようとした時、
「先輩」
日帝に呼ばれた。真面目な日帝のことだ。何か会議で分からないところやおかしな点があったのだろうか。
「その…実は、こ、これを渡したくて… 」
そわそわと落ち着か無い様子でそっと出したのは、皆が騒いでいた例のチョコレートだった。
「え…」
思いもよらぬ展開に思わず思考が飛んだ。
「だけど、これは渡さないでおきます」
へへ、と切なげに笑った日帝は後ろにチョコレートを隠した。何故、と問おうとする前に答えが返ってきた。
「さっき、先輩なにか怒ってる様子だったから…チョコレートのことを知って、幼稚だと思われたかと…もう、イベントに浮かされる幼子みたいなことはしないので、嫌いにならないで欲しいです」
「はぁ…」
安堵により口からため息がでた。今まで日帝の言葉に傷つかないように気張っていた為、脱力感も感じられた。しかし、さっきのため息で呆れられたと勘違いした日帝が目を潤す。
「すみません…」
「そのチョコレートをくれ。」
「しかし…迷惑でしょうし…」
「いいから。くれ」
「…」
渋々といった様子でチョコレートを差し出してきた。そういうセンスが疎い日帝が選んだとは思えない程センスのいいラッピングに包まれたチョコレートを少し眺め、日帝に言った。
「また空いてる日を教えてくれ。ゆっくり話そう」
貴方の気持ちの返事や、今まで自分が抱えていた気持ちについて