テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「昭仁、起きて」そう言って裸の昭仁の身体を揺らす。昭仁はまだ寝ていたいのか、わしの手を拒んでまた眠りにつこうとした。
「だめ、昭仁、起きて」
わしはさっきより強くカラダを揺らした。夜遅くまで昭仁と性行為したからだろうか。しかしもう午後。明日から仕事だから寝過ぎるわけにはいかない。
「分かったから、起きるから、腰が痛いんじゃ。……っそれにしても昨日は激しかったの…」
その言葉でわしは前夜の全貌を思い出した。昭仁の言葉を無視して無理矢理挿入して、彼のナカと理性をぐちゃぐちゃにしたことを。
「こことか、い…痛くない?」
わしはやんわりと赤くなった彼の性器を指さした。こんなに彼を乱暴に扱ったのは初めてのことだったから申し訳なさでいっぱいになった。
「もう大丈夫じゃけぇ。いっぱい愛してくれてありがとうね」
昭仁はそう言って服を着始めた。脇がガラ空きなタンクトップ、履けるのがギリギリのズボン。カーテンを閉めていた薄暗い部屋には、あまりにも輝きすぎる婚約指輪。彼が身につける全てのものがいやらしく見えてきた。
「さぁて、家帰ったらどうやって言い訳しようかな」
彼には奥さんがいて子供がいる。自分の父が長年過ごしてきた親友と身体で繫がってると知ったら、どんな顔をするんだろう。もちろんいい顔なんてするはずもないけれど。ましてやここは勢いで入ったラブホテル。簡単に昼間にラブホテルからアーティストが出てこれるはずがない。
「ふふ、嘘じゃけ。ライヴの関係で家を留守にするのは日常茶飯事じゃ。…そんなわしより深刻な顔せんといて」
昭仁はわしの瞳の中を覗いてきた。もちろん夜ではわしが主導権を握っているが、基本天然と言われている昭仁の方がリーダー気質があって自分より何倍も一枚上手だから、彼の方がよっぽどリーダーに相応しい。そんな彼に対して反抗はできない。裏での彼は、ファンが見ている天然で、トークで噛んで、お喋りで、ずっと歌詞を間違ってる”昭仁”とはまたちょっと違う性格。今回も何か見透かされてる気がする。
わしは彼の目線を外すようにカーテンを開け、ラブホテル特有の小さい窓を開けた。下着を着てからバックの中に入っていたタバコを取り出した。
「晴一は今もタバコ好きじゃね。いつも何本ぐらい吸いよるん?」
「最近お医者さんに肺悪くなってきたからタバコ辞めろって言われてとるんじゃ。そこから一日二本ぐらい。加熱式だとただの紙より煙少なくて大丈夫だと思っとる。…まあニコチンあるからそんなことはないけど…」
「…悪いんじゃけど…一本くれない?」
昭仁が申し訳なさそうにタバコを要求してきた。あいにく、加熱式を使ってるので火となるものは持ち合わせていない。
「………使う?」
わしはそのまま吸っていた方を差し出した。渡されると昭仁は普通に吸い始めた。
「間接キスじゃ。ふふ、晴一の味がするけ。」
昭仁はそう言って笑っていた。疲れた身体に久しぶりのタバコなんて到底無理してるようにしか見えない。
―んっ…くちゅ…ちゅ
わしはいやらしい昭仁の口に舌を入れた。しかし、数秒したらすぐにキスをやめた。
「間接キスなんてしなくても、キスは出来るじゃろ。ちゃんとおねだりして」
「……いっぱいキスして…欲しい…です…」
「昭仁はいつも元気なやつじゃな。悪いお口はここか?」
―ちゅ…んちゅ
またベットの上で繫がりたい、そう思った。
コメント
1件
読み終えました。第1話からもう関係性の濃密さがすごいですね。晴一さんの「悪いお口はここか?」という台詞、支配と愛情が混ざり合っていてぞわっとしました。それにしても、昭仁さんの「間接キスじゃ」があまりに自然で、長年積み重ねてきた距離感を感じます。ラブホテルの薄暗さや窓から差し込む光、身体的疲労とか「これから」の不安が詰まった一編。続き、気になります。