―――一生愛せる、”何か”が欲しい。
そもそも、私には”一生愛せるもの”が、あったのだろうか。
親だって、別に好きだったわけではない。父の気分による、ちょっとした暴行は受けていた。まぁ、ギャンブルで負け、いらついたから八つ当たり、とかそんな感じだ。母は、私のことを守ってくれていた。「痛い、殺したい」とか思っても、親からの暴行で、「もっと苦しい子は 沢山いる。我慢、我慢」で済ませていた。だって、実際そうだろう。
私だって、親を愛せるものなら、愛したかった。愛そうとした。けど、どうせ私は愛されていない。あんなことをされるくらいだ。必死に私を守ってくれた母だって、愛せなかった。
今は一人暮らしだが、親の暮らしとか、財政状況とかには一切触れていない。連絡とかもだ。そもそも、電話番号だって知らないし、連絡先だって交換していない。だから、非常時の時も、何があったとしても、私にはどうすることもできない。
ああ⋯。でもやっぱり羨ましい。
愛せる対象⋯?彼氏とか⋯⋯は、そもそも友人だっていない。話したことがある人は殆どいない。
彼氏ができる気もしない。恋人は、私にとってハードルが高すぎる。
「愛せる対象、っと」
なんとなく、スマホで調べてみた。
「『愛せる対象』には、推しや、家族、友達などがあります。その他にも―――。」
推し、家族、友達⋯?家族、友達は、まぁ、分かる。
でも、”推し”、ってなんだろう⋯?
これもまた、調べてみた。
「成程⋯、アイドルとか、アニキャラのことか⋯」
普段、私は全然、外の世界に出ない、世間から見た、いわゆる”引きこもり”というやつだ。
なぜか、「街に出てみようかな」という気持ちが浮かんできた。
「よし」
私は、引きこもりで、家にいるときもずっとパジャマのままなので、”コーデを組む”というのも初めてだ。
しかし、何を選んだら良いのか分からない。テレビを見ていると、芸能人が高そうな服を着ている。似合っている、と思うけれど、一般人が着たら、有名人ほどは似合わない、と思ってしまう。なので、”何を選んだら良いのかわからない”、というより、可愛くもない私に、似合うのかな、という気持ちが強いのかも知れない。
悩んだりして、一時間ほどかかってやっとコーデを組めた。まさか、服を選ぶだけで、こんなに時間がかかってしまうなんて。
思いもしなかった。それに、髪型にも時間がかかってしまった。いつもは括りもしていなかった。
だが、今はとにかく街に行きたい、という気持ちが強い。どうしてだろう。もしかして、”愛せる対象”を見つけられるのだろうか。そう思うと、なんだかますます、今すぐ街に行きたいという気持ちが強くなった。
ガチャ
アパートのドアを開けると、世界が変わる⋯⋯!
そんなことを期待した、けれども、そんなには変わらない。
でも、とにかく、眩しい⋯!
何年ぶりだろう⋯?買い物だって通販だ。それくらい、外の世界には出ていない。
東京の、都会の少し離れたところに住んでいる、少し田舎、という感じだ。なので、電車で都会の方に行くことにする。
駅まで歩いて行くと、人が沢山居た。とりあえず、切符を買おうと券売機まで行くと、切符の買い方が分からなかった。
久しぶりで切符の買い方がわからない、というより、そもそも電車に乗るのが人生初で、切符を自分で買ったこともなかった。
他の人達はスムーズに買っているのに、自分だけ一人駅の中で何もせず突っ立っているのは、人より遅れている気がした。
券売機の近くに行って、どうやって切符を買うか、他の人の動きを見ることにした。
どうやら、券売機の頭上に、目的地の値段が書いてあるらしい。その値段のボタンを押してお金を払えば、切符が出てくるのか。
大体こんな感じかな⋯?
でも、いざ買ってみようとなると、かなり難しかった。
しかも、どこに行けば良いのか⋯沢山名前がある。
よく分からなくなった私は、徒歩で、人の流れに乗って、どこかに行くことにした。
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