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トールサイズのあじふらい
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桜雨
92
その北の大地を体現する美しき存在
「北海道」が、私の統治する領地に静かに足を踏み入れたのは、まさに奇跡のような出来事であった。
彼は誰もが羨む、輝かしい才の持ち主
私は一人の純粋な崇拝者として、ただ遠くから敬意を表し、「私はあなたの真の傾倒者です。どうか健やかに」とだけ告げ、無作法に彼の時間を奪わぬよう、気高くその場を立ち去ろうとした。
遥か北の地、すなわち未開の地は、私たち県にとって憧れであった。
少なくとも、江戸の昔から北前船を通じて彼と魂を通わせていた私にとっては、それは不可侵にして神聖なる憧憬の対象であったのだ。
しかし、その降臨を知った周囲の浅ましい諸県どもの動きは、あまりにも早すぎた。とりわけ、明治の世になるまで「東京」という名すら持たなかったあの新興都市、傲慢なる東京の醜態は、目を覆いたくなるものであった。
彼は言ったのだ。「私はこの国の英雄である。古き時代よりこの国を愛し、共にその繁栄のために貢献してきた者は、他の誰でもない、ただ私一人なのだ」と。
昨日今日生まれたばかりの分際で、さも自分が歴史のすべてを支配してきたかのような、恥知らずな征服宣言
さらには「最初期からお前を見守っていた。さあ、私と懇意になろうではないか」と、距離感を誤った無礼な長文を、さも誇らしげに北海道へ突きつけたのである。とてもではないが、大都市達の彼への求愛は見れたものではない。
嫉妬なのか、共感性の羞恥から来るものなのか、とにかくその混沌の場を傍から見ていると、身の毛がよだつほど不快で仕方がなかった。今の私は、彼らの暴走をただ冷ややかに見つめていた。その分、あの野犬共とは僅かに離れたところにいる私は、彼らの奇行、醜悪さを達観している気分になった。
同じ肉食動物でも、私の方が理性的に思えた。とにかく、彼らは醜いのである。なぜなら、彼らはまだ気づいていないのだ。
私は静かに静かに笑みを浮かべ、彼らをいつでも「間引き」してやる準備を調え、爪を研いでいた。
そして、あの忌まわしき東京に制裁を下してやるため、北海道を私のものにしようとした。
しかし、私は少々理性的過ぎたのである。後に、北海道は広大な土地や、食物の自給力ゆえに独りでに栄え始め、こちらへ興味を示さなくなった。
彼を狩る機会を逃がしてしまったのである。
何たる失策であったことか!
コメント
1件
めっちゃ面白かった!!都道府県擬人化×縄張り争い、最高すぎるでしょ😭✨ 北海道が憧れの存在で、東京の傲慢さに語り手がキレてる構図がもう…エモい!文体も独特でクセになる〜「野犬共」ってタイトルもピッタリすぎる。続きが気になりすぎるんですけど!?作者さん、この世界観めちゃくちゃ刺さりました🔥