テラーノベル
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別れてから、一週間が過ぎた。
大学へ通い、授業を受け、アルバイトへ行く。
いつもと変わらない毎日。
それなのに、陽菜の心だけは止まったままだった。
朝起きるたびに、無意識にスマホを手に取る。
「おはよう」
毎日届いていた蒼からのメッセージは、もう来ない。
トーク画面を開いては閉じる。
最後に表示されているのは、たった一言。
「別れよう。」
理由もない。
説明もない。
その言葉だけが、何度見ても胸を締めつけた。
⸻
昼休み。
「陽菜、食堂行こ!」
莉子が教室へ迎えに来る。
「今日は学食の新メニュー食べるって決めてるんだから!」
「ふふ、分かった。」
少しだけ笑えるようになった自分に、陽菜は驚いていた。
食堂へ向かう途中、キャンパスの中庭を歩いていると――
「陽菜!」
振り返ると、颯が大きく手を振っていた。
「お昼、一緒にどう?」
「えっ?」
「迷惑じゃなければ。」
陽菜が戸惑っていると、莉子が小声で耳打ちする。
「行ってきなよ。」
「でも……。」
「幼なじみなんでしょ? たまには息抜きも必要。」
陽菜は少し迷ったあと、小さく頷いた。
「じゃあ、少しだけ。」
⸻
大学近くのベンチ。
颯は昔話をしながら、陽菜を笑わせてくれた。
「覚えてる? 小学生のとき、一緒に秘密基地作ったの。」
「懐かしい!」
「でも完成する前に先生に見つかって怒られた。」
「颯くんだけ逃げたよね?」
「だって陽菜の方が足速かったじゃん。」
二人は顔を見合わせて笑った。
その笑顔は、失恋してから初めて心の底からこぼれた笑顔だった。
「その笑顔。」
颯が優しく言う。
「やっと見られた。」
陽菜は少し照れながら俯く。
「ありがとう。」
「俺さ。」
颯は少し真剣な表情になった。
「昔から、陽菜が笑ってる方が好きなんだ。」
その言葉に、陽菜の胸が少しだけ高鳴る。
でも、その気持ちに気づかないふりをした。
今の自分には、まだ誰かを好きになる余裕なんてなかった。
⸻
その頃。
大学から少し離れた病院。
診察室の椅子に座る蒼は、静かに医師の話を聞いていた。
「検査結果は前回と大きな変化はありません。」
「……そうですか。」
「ですが、無理は禁物です。」
医師はカルテを閉じる。
「薬は忘れずに。」
「はい。」
診察室を出ると、蒼は深く息をついた。
スマホを開く。
待ち受け画面は、去年の夏に陽菜と撮った海辺の写真。
指先で画面をなぞる。
「……元気かな。」
連絡したい。
声が聞きたい。
会いたい。
でも、それだけはできなかった。
「これでいいんだ。」
自分に言い聞かせるように呟き、スマホをポケットへしまった。
⸻
夕方。
アルバイトへ向かう途中、陽菜は駅前の交差点で信号待ちをしていた。
すると、見覚えのある後ろ姿が目に入る。
黒いパーカー。
少し猫背気味の歩き方。
「……蒼?」
思わず名前を呼びそうになった、その時。
蒼は突然苦しそうに足を止めた。
壁に手をつき、小さく咳き込む。
「大丈夫……?」
陽菜が一歩踏み出そうとした瞬間、一人の女性が駆け寄ってきた。
「蒼!」
女性は蒼の肩を支え、そのまま二人は人混みの中へ消えていった。
陽菜はその場から動けなかった。
「……誰?」
胸の奥が、また痛み始める。
蒼はもう前を向いているのだろうか。
それとも、あの女性は――。
答えのない疑問だけが、夕暮れの街に残されていた。
コメント
1件
うわあああ第3話読み終えたよ〜!!😭💕 陽菜の心が止まったままの描写、すごくリアルで胸がギュッてなった…「おはよう」のメッセージがもう来ないって分かってるのにスマホ開いちゃうの、分かるよその気持ち…😢 颯くんの登場でちょっとだけ笑えるようになった陽菜、見てて「よかったね」って思った!幼なじみの存在って大きいよね。でも「まだ誰かを好きになる余裕なんてなかった」ってセリフが切なすぎる…! そして最後の蒼のシーン!待ち受け画面が陽菜との写真で「元気かな」って…もうね、泣くわ😭💦 あの女性誰!?気になりすぎて続きが待てない…!次の話、はやく読みたいです!!
天羽朔 🪽🌙
ちけっと!!!サブ垢
11
なみ
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