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どれだけ踏みつけられても、夢を諦めるわけにはいかない。
澪は何度もそう心に誓った。誰に何と言われようと、何を失おうとも、立ち上がり続けると。
失っても、壊されても、それでも——。どんなに絶望的な状況に追い込まれても、彼女にはただ一つの信念があった。それは、自分のデザインで世界を変えるということ。それだけが、彼女の生きる意味であり、未来への希望だった。
もう一度、立ち上がる。
その決意を新たに、澪は一歩踏み出す。数ヶ月前までの自分は、目の前に広がる暗闇に怯え、何もできずにいる自分に絶望していた。しかし、今は違う。彼女は一度底辺を見たからこそ、再び歩き出す力を得たのだ。
「ゼロからのスタート」
莉奈の言葉が澪の耳に響く。初めは信じられなかった。だが、莉奈の瞳の奥に確かな確信が宿っているのを感じ取った。だからこそ、澪はその言葉に答えた。
「ブランドを立ち上げる?」
「そう。あなたは、コンペには出られなかった。でも、実力がないわけじゃない。」
莉奈の言葉に、澪は思わず息を呑んだ。
「だったら、自分で道を作るしかないでしょう?」
莉奈の目には、澪が迷っていることを見透かしたような鋭さがあった。彼女はモデル兼デザイナーとしても名を馳せており、澪が何をしても、自分の実力を信じて進むべきだと、いつも支えてくれていた。
「でも……そんな資金も、コネも、何もないのに……」
澪は弱気になった。それが現実だと思っていたから。現実の壁は高く、冷たく、時に無情だった。
「コネは作るものよ。それに、あんたには御堂怜司がいるじゃない。」
莉奈はにっこりと笑いながら言った。その笑顔は、まるで澪にとって隠しきれない希望の灯のように感じられた。
「……怜司さんを頼るつもりはありません」
澪は唇を噛んだ。自分の力で立ち上がりたい。その想いが彼女の中で強く、まるで鉄のように固くなっていた。
「でも、もう独りじゃないってこと、そろそろ認めたら?」
莉奈の言葉に、澪は何も言い返せなかった。心の中で、彼女の言う通りだと感じつつも、なかなかその事実を認めることができなかった。
(……私は、また独りで戦おうとしていた)
その瞬間、あの日の御堂怜司の言葉が頭をよぎった。
『まだ終わりじゃない。本当の戦いはここからだ』
その言葉が澪の心の中で支えとなっていた。怜司は、見守ってくれていた。今、澪が一歩踏み出すその瞬間まで、何も言わずに、ただ黙って支えてくれていたことを、心の奥底で実感していた。
莉奈は澪の迷いを見透かしたように、スマホを取り出し、さらなる提案をした。
「とりあえず、初期費用をどうにかしないとね。クラウドファンディングやってみない?」
その言葉は、澪の心に強烈に響いた。彼女の目には、過去に何度も挑戦しては失敗した、悔しい思い出がよみがえってきた。しかし、同時に、この提案が彼女にとって再起のチャンスになるのではないかという希望も湧き上がった。
「えっ……?」
澪の目が見開かれる。クラウドファンディング?それは、彼女にとって未知の世界だった。だが、莉奈は笑顔で続けた。
「デザイナーとしての再起をかけて、あなたの想いを世間にぶつけるのよ。興味を持ってくれる人は、絶対にいる。」
その言葉に、澪は少し躊躇しながらも、心の奥底で新しい希望を感じた。
(やってみる価値はあるかもしれない。もしかしたら、私にできるかもしれない)
——その時、澪は再び決意を固めた。怜司の支援がなくても、どんなに困難でも、自分の力でこの道を進むと。
怜司の支え
クラウドファンディングのプロジェクトがスタートしてから数日が経ち、澪の心は不安と期待が入り混じっていた。どれほどの支援を受けられるか分からない。そのためには、自分の想いをどれだけ多くの人に届けられるかが鍵だと感じていた。
「自分のデザインで、もう一度、夢を追いかけたい」
その想いを胸に、彼女は一歩踏み出した。しかし、始めたばかりの段階では、まったく予想できなかった事が起きる。
数日後、驚くべきことが起こったのだ。
ページに表示された数字が、予想以上に急速に増えていった。見知らぬ名前が次々と並び、驚くべき支援額が記されていた。
「……え?」
澪はその画面を見つめながら、呆然と立ち尽くしていた。
その中に、見覚えのある名前があった。
《御堂怜司 支援額:500万円》
「!?!?」
思わずスマホを握りしめた澪の手が震える。
「さすが御堂副社長、男前~!」
莉奈が隣で笑いながら、画面を覗き込んだ。
「え、いや、待って、こんなに!?怜司さん!?!?」
澪は動揺し、画面の数字を何度も確認した。
その時、スマホにメッセージが届いた。
『投資だ。お前の才能に賭ける』
その一言に、澪は驚きとともに胸の奥で温かいものが広がった。
「……もう、そういうの、ズルいんですから」
澪はつぶやき、再びスマホを握りしめた。
(私が自分で立ち上がるって決めたのに……でも、こんなに嬉しいのはどうして?)
そして、ある決意が澪の中で固まった。
(今度こそ、本当の意味で証明してみせる。私のデザインが、誰かの心を動かせるって——)
暴かれる美優の策略
一方、美優は、澪が再起を果たし始めると、自分の地位が徐々に危うくなっていることに気づき始めた。そして、ついに、彼女の策略が暴かれる時が来た。
ある日、大手メディアが、彼女が澪のデザインを盗用し、業界の関係者にリークしていたという事実を暴露した。記事には、証拠が次々と掲載されており、その内容は、澪の想像を遥かに超えていた。
「業界の闇を暴く!新進気鋭デザイナーの成功の裏にある黒い噂とは?」
その記事に、澪は胸を締め付けられるような思いを抱えながら目を通した。そして、証拠提供者の名前を見た瞬間、彼女は言葉を失った。
——御堂怜司。
「なんで……怜司さんが……」
美優は愕然とした表情を浮かべた。
その頃、澪の元にメッセージが届いていた。
「澪、美優が終わったわ」
莉奈のメッセージには、勝利の色が浮かんでいた。
「怜司さんが、業界内で証拠を集めてたみたいよ。あの人、本気であんたを守るつもりみたいね。」
「……そんな……」
澪は震える声で呟いた。
怜司は、一度も澪にそのことを言わなかった。ただ、静かに陰で戦い続けてくれていたのだ。
逆転のドレス
澪は、新しいコレクションの発表会で、ついに彼女の本当の力を見せる時が来た。その中で、彼女が一番心を込めた一着のドレスを披露した。
「このドレスの名前は——『リスタート』」
会場は静まり返る。澪の言葉に込められた想いが、会場に漂う空気を変えていった。
「私は何度も倒されて、何もかも失いました。でも、その度に、人の優しさに救われました。だから、今度は——私のデザインで誰かを救いたい。」
静寂の中、大きな拍手が響き渡った。その拍手の中に、澪は怜司の姿を見つけた。目が合った瞬間、彼は穏やかな微笑みを浮かべていた。
(私は、もう独りじゃない)
澪は静かに深呼吸し、前を向いた。未来は、もう怖くない——。