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あれから数日が経ち、私たちの「お試し恋愛」は、なんとなく慣れてきた。とはいえ、何もかもが初めてのことばかりで、毎日ドキドキしながら過ごしていた。李斗の無愛想な態度や不意に見せる優しさに振り回されながらも、私は確実に恋愛というものを学んでいる気がしていた。
今日は特にいつもと違った。放課後、いつものように教室で荷物を整理していると、急に外が暗くなり始めた。どうやら、天気予報通り、雨が降りそうだった。
「今日は雨か…。」
私は独り言を言いながら、急いでバッグを整えていると、教室のドアが開いた。そこには李斗が立っていた。
「お前、帰るんだろ?」
「うん、帰るよ。」
「でも、雨が降りそうだな。」
私はちょっと驚いて李斗を見た。李斗が私のことを心配しているのだろうか?それに、今日はあまり彼の姿を見かけなかったから、余計に不思議だった。
「別に、大丈夫だよ。」
「無理すんな。雨の中一人で帰るのは危険だろ。」
そう言って、李斗は私に近づきながら傘を差し出してきた。
「これ、持ってけ。」
「え、でも、私は…。」
「いいから。今日はお前と一緒に帰るんだから。」
そう言って、李斗は無理に私に傘を渡してきた。その顔はいつものようにぶっきらぼうだけど、なんだか不思議と優しさを感じた。
「一緒に帰るの?」
私は驚いて尋ねた。李斗は少し恥ずかしそうに肩をすくめて言った。
「嫌なのかよ」
「ううん。別に…」
「お前が濡れるのが嫌だから。」
「…えっ…?」
それだけ言うと、李斗は無理に私を引き寄せるようにして傘の中に入れた。私は思わずドキドキしながらも、彼と並んで歩き出した。
雨が降り始めると、空気が一気に冷たくなり、私たちの周りも静かになった。道端の水たまりがしずくを弾く音だけが響いている。
「ちょっと、狭いね。」
私は傘の下で、李斗と少し距離を取ろうとしたが、傘が二人をカバーするのに十分ではなく、また自然に彼に近づいてしまった。
「お前、狭いの嫌か?」
李斗が振り返ると、私の顔が赤くなっているのを見て、少し驚いたような顔をした。
「別に、嫌じゃないけど…。」
「だったら、もうちょっとくっつけ。」
そう言われて、私は思わずドキドキして顔を真っ赤にした。まさか、李斗がこんなことを言うなんて思ってもいなかった。でも、悪い気はしなかったし、私も少しだけ彼に近づくことにした。
「うぅ…。」
私の反応に、李斗は少し笑った。
「お前、意外と照れ屋だな。」
「だって…!」
私は顔を背けながら、傘を少しだけ調整した。どうしてこんなにドキドキしてしまうんだろう。李斗の近くにいるだけで、心臓が早くなってしまう。
少し歩くと、私たちは二人で並んで歩くのが気まずくなった。私は何を話していいのか分からず、沈黙が続いた。
「ねぇ、李斗…。」
私は何気なく口を開いた。
「ん?」
「なんで、そんなに私のことを気にかけてくれるの?」
李斗は少し考えてから、ふっと口を開いた。
「お前が、俺のことを嫌いじゃないって言ったから。」
「え…?」
私は思わず足を止め、李斗の顔を見た。
「お前が俺に嫌われてると思ってたから、ちょっと安心したんだよ。」
その言葉に、私は一瞬だけ言葉を失った。まさか、李斗がそんな風に思っていたなんて…。それでも、私の胸の中には何とも言えない温かい気持ちが広がっていった。
その後、私たちは傘をさしながら、少しだけ足早に歩き続けた。雨が本格的に降り出したとき、私たちの足音がさらに大きくなり、ただ二人だけの世界に包まれたような気がした。
「お前、俺のことをどう思ってる?」
李斗が急に、私に向かって尋ねた。その言葉に、私はドキドキしながらも、素直に答えた。
「…少しだけ、好き。」
私の言葉に、李斗は少し驚いたような顔をしてから、すぐに何事もなかったかのように顔をそむけた。
「ふーん…。」
その後、二人で家に着くと、李斗は無言で傘を畳んで私に渡して、またいつものように無愛想に去っていった。
でも、私はその後ろ姿を見送りながら、心の中で確信していた。少しずつ、彼との距離が縮まっている気がした。今までにない感情が、私の中で芽生え始めていたのだ。
次回、私たちの「お試し恋愛」はどうなっていくのだろうか…。