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『花が咲く頃』
桜の花が咲き始めた春。新しい学期が始まると同時に、オレの目の前に現れたのは、少し気になる存在だった。
「新入生の井上さんだね?」
先輩はクールな表情で声をかけてくる。その目は少し鋭いけれど、どこか優しさもあって、オレは思わずドキッとした。
「はい、よろしくお願いします!」
私は何とか落ち着いて答えたけれど、内心は動揺していた。先輩がちょっと他の人と違う、何か特別な存在に思えて、どうしても目が離せなかった。
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先輩と過ごす時間が増えるたび、オレの中で何かが変わっていく。
「井上、もっと教科書をしっかり読んで。今はわからなくても、後から楽になるから」
先輩の言葉は優しいけれど、どこか厳しさも含まれていて、それがオレを惹きつけていた。
「ありがとう、先輩。助かります」
その一言が、オレの気持ちを少しだけ前に進めた気がした。
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放課後、二人きりで教室を片付けていると、先輩が急に話しかけてきた。
「井上、何か悩んでることがあったら、気軽に言ってね」
その言葉に、オレは思わず息を呑んだ。先輩の気遣いが胸に響く。
「うん、ありがとう。でも、何も……」
その時、目が合ってしまった。先輩の瞳が、オレの心に深く刺さる。
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それから数日後、また放課後に一緒に過ごしていると、ふとした瞬間に先輩が手を差し伸べてきた。
「ほら、これ、渡しておくべきだから」
オレはその手を取ると、少しドキッとした。手を触れるたびに、何かが胸の奥でざわざわと音を立てる。
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ある日の帰り道、いつものように先輩と並んで歩いていると、急に先輩が口を開いた。
「井上、最近よく考えてることがあるんだ」
その声は少し不安げだった。オレは思わず足を止める。
「それって……?」
先輩は少し黙った後、ふっと息を吐いて、オレの目をしっかりと見つめた。
「私、ずっと、井上のことが気になってた」
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その言葉に、オレの胸は高鳴った。先輩が自分の気持ちを言葉にするなんて、予想もしていなかったから、頭が真っ白になった。
「私、井上のことが……好きなんだ」
その言葉が胸の中に響くと同時に、オレも答えを出した。
「私も、先輩が……」
その言葉を言うと、先輩が微笑んだ。
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告白から数日が経ち、オレと先輩はお互いに気持ちを確かめ合い、少しずつ関係が変わっていった。
「井上、今度、一緒に映画でも行こうか?」
先輩は少し照れくさそうに言ってきた。オレもまた、少し顔を赤くしながら答えた。
「うん、行きたい!」
その言葉が自然に出た自分に、ちょっと驚きながらも嬉しかった。
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初めて二人きりで出かけたデート。先輩の手をぎゅっと握ると、オレの心がドキドキして止まらなかった。
「どうしたの?」
先輩がふっと微笑みながら尋ねる。オレは顔を赤くして答えた。
「ううん、なんでもない。でも、嬉しい」
その言葉に、先輩が少し驚いた顔をして、また微笑んだ。
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デートから帰る道、オレは少し照れくさい気持ちで歩いていた。
「先輩、今日は楽しかったです」
オレがそう言うと、先輩はしばらく黙った後、ゆっくりと口を開いた。
「井上、もし、私が言いたいことがあるなら、いつでも言ってね」
その言葉を受けて、オレは自然に答えた。
「私も、先輩にもっと素直に伝えたいことがあるんです」
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告白の後、二人の関係はますます深まっていく。先輩といると、自然と心が落ち着き、幸せな気持ちでいっぱいになる。
「これからも、ずっと一緒にいたい」
オレは先輩にそう言うと、先輩もまた笑顔を浮かべて頷いた。
「私もだよ、井上」
二人の手が重なり合うと、心の中に花が咲くような気がした。新しい一歩を踏み出す、その瞬間だった。