テラーノベル
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自らを一刀両断した雨宮順平。
だが、それでも彼は割と元気そうであった。
「見てこれー! ほらー! 斬れてるのにー! 死んでなーい! ふぅー!!」
「助けて頂いておいてこんな事を言うのは大変不躾だと承知しておりますが、言わずにはいられませんわ。……なんてお排泄物な中年男性!!」
「うーん。わたしもちょっと嫌だなぁ。なんだか不真面目だよぉ」
「みみっ。あれが六駆師匠だったらどうなるです?」
「えー? 六駆くんはあんなことしないもん!」
意外と不真面目に戦っている時も多い逆神六駆だが、莉子の中では思い出は常に綺麗なものへと洗浄され、さらに美化される。
そこにプリントシールを撮る時のギャルくらいの勢いで美談とありもしない心意気をデコっていけば、あら不思議。
綺麗な逆神六駆しか莉子の中には残らない。
平野レミもビックリの仰天料理である。
一方、女性陣のウケが悪かった事は雨宮のモチベーションを低下させた。
「あーあ。なんだかなー。おじさん、このまま半身で生きていこうかなー。ねー、水戸くん? 私、広島カープのファンだけど、半身タイガースってネタで食って行こうかなー。ねー、水戸くん?」
水戸信介は女性陣の前で、躊躇いのない土下座をした。
そして続ける。
「どうか、雨宮と言う名の悲しきおっさんに黄色い声援を送ってあげてくださいませんか」と。
川端一真は既に改良型『幻獣玉・増殖』が体の制御に始まり思考回路に至るまでを完全に乗っ取っており、今も「ぴぃひぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」と、聞き取れない奇声を上げながら敵味方構わずに鎌で斬り散らかしている。
あれは、本来ならば自分の身に起きていた未来である。
水戸信介は理解していた。
そして、その身代わりになってくれた川端を救えるのは、拗ねてやる気を失くしている雨宮だけなのである。
「分かりました! では、僭越ながら! 潜伏機動部隊、副隊長! 私、青山仁香がその任に当たります!!」
「あ、ああ!! ありがとうございます! ありがとうございます!!」
この時、水戸の瞳は確かに女神を映していた。
青山の行動は速い。
さすがは機動力特化の潜伏機動部隊。
「あ、雨宮上級監察官! 私はあなたのファンです! 特に、あなたのスキルを使うところが好きです!!」
「ええっ!? お嬢さん、こんなおじさんの事を愛しているって!?」
そんな事は言っていない。
難聴を患うにも限度と言うものがある。
「は、はい! 是非、私に再生スキルを見せてくださいませんか!?」
「ええっ!? おじさんの全てが見たい!?」
青山は思った。
「あ。屋払隊長って意外とまともな男だったんだ」と。
雨宮を見つめる事で、なんだか屋払に対する好感度が上がっていく青山。
人物相関図が面倒なことになるので、これ以上色々な感情を散らかさないでほしい。
「それじゃあね! ご期待に応えて!! とぉう! 『新緑の眩しい緑』!!」
瞬く間に失った雨宮の半身が復元されて行く。
だが、問題が生じる。
半身は再生されたが、肝心の服が再生されていないのだ。
先に断っておくと、雨宮の再生スキルは別に無機物には効果がないと言う訳ではない。
意図して服を再生させていないのだ。
何故か。
「はい! 見て、これー! センターマン!! なんつってー! 分かるかな? センターマンだよ!! センターマン!!」
しょうもない理由だった。
「……お排泄物ですわ」
「みみっ。おじ様と同じくらいに生理的嫌悪感を覚えるです。みっ」
チーム莉子の乙女たちのストレートな意見が、雨宮おじさんに突き刺さる。
彼は「面白いと思ったのに……」と唇を噛んだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
雨宮がバカやっている間にも、川端親ゾンビのご乱行は留まるところを知らない。
手当たり次第に攻撃する上に、理性が失われているため次の行動の予測が出来ない。
オマケに元が戦闘を得意とする監察官であるがゆえ、うかつに飛び込むと危険である。
「これはまずいぞ! 川端さんを元に戻さないと、急襲の優位が失われるどころの騒ぎではない!! 味方はもちろん、敵にも甚大な被害が出るじゃないか!!」
「しかし、南雲さん! 自分たちも椎名さんと雲谷さんの援護射撃でどうにか距離を保てているのが現状です! 手の打ちようが……!!」
南雲と加賀美が揃っているのに戦局が動かせない。
それどころか、悪化していくと言う非常事態。
「そうだ! 逆神くん! 逆神くんってば!!」
「はいはい、なんですか南雲さん! お金くれるんですか!?」
「よし、分かった! お金をあげよう!! だから、君の時間を巻き戻す頭おかしいスキルがあるだろう!? あれで川端さんを元に戻してくれ!!」
「ええ……。それはちょっと……」
逆神六駆、お金を提示されたうえで、まさかの「待った」である。
ついにCPUが壊れたのだろうか。
「どうしてだ!? 言い値で払うよ!!」
「くぅぅ! なんてもったいない! まずですね、『時間超越陣』は発動まで時間がかかります。ご存じですよね?」
「ああ! 私たちがどうにか時間を稼ぐから!!」
「まだ問題があるんです。『時間超越陣』は対象が動いていると使えません。オマケに、これが一番面倒なんですけどね。仮に川端さんの時間を巻き戻して治したとしても、既に子ゾンビとか孫ゾンビになってる人には多分、効果が波及しないと思うんですよ」
六駆の言いたい事は、つまりこうなる。
川端一真を『幻獣玉・増殖』被弾前の状態には、頑張れば戻せる。
だが、多くのアトミルカの構成員がゾンビ化している現状、彼らのケアまで手が回らない。
そうなると親ゾンビだけを回復させる事になり、結果、子ゾンビや孫ゾンビがその後どうなるのか責任が持てない。
南雲は全員を救いたいだろうから、この案は使えませんよ、と。
「何と言う事だ……!! 自分がうっかり気を抜いたばかりに……!! 逆神くん、恥を忍んで聞くが、川端さんをどうにかする手立てはもうまったくないのか!?」
「んー。ないことはないですけど、どれも時間がかかりますね。それなら、雨宮さんにお任せするのが早いかと。ああ、でも!」
六駆の閃きに、水戸は食い気味でがぶり寄る。
「な、なにか方法があるのか!?」
「いえね、あの手の精神汚染系は、喰らってる本人の意思で跳ねのける事ができたりするので。川端さんの好きなものとか、命を賭けてるものとか? そういうのを叫んであげたりすると、効果があるかもです」
責任感の洪水で溺れている水戸は、藁をも掴む。
彼は大声で川端ゾンビに呼びかけた。
「川端さん! この戦いが終わったら、おっぱいがたくさんあるお店に行きましょう!! 自分、弱卒の身ですが、朝までお供します!! 活きの良いおっぱいの楽しみ方を教えてください!! 川端さん!!」
最低な必死の呼びかけであった。
「ぎゅおぺめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! …………!! お、おお、おっぱ、おっぱい?」
嘘だと言ってくれ。
川端よ、その呼びかけで少し正気を取り戻すんじゃない。
「こ、効果があるぞ! 水戸くん、その調子だ!!」
南雲、ヤメろ。煽るな。
「川端さん! おっぱいのどこが好きですか!? ゆっくりと自分に教えてください!! 自分、聞きたいです! 川端さんのおっぱいの話!!」
「が、ががが、ががががが! おっ、おっぱい! やわらか……ぷる、ぷる……」
「か、川端さぁぁぁぁん!! 戻ってきてください! 川端さぁぁぁぁん!!!」
その後、水戸の呼びかけは5分にも及んだ。
少しずつおっぱいに対する興味を取り戻していく川端。
諸君を代表して適切なツッコミをしたのち、このしょうもない戦いの結末は次話に譲ろう。
いいから早く雨宮を連れて来い。
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夜鐘
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大正
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裏五条
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コメント
1件
ああもう、最高でした(笑)。雨宮さんのしょうもなさに笑いっぱなしです。「センターマン」とか言って半身再生したまま服着ないでポーズ決めるとか、おじさんのノリ全開すぎて好きです。でもその一方で、水戸さんの「♡♡♡の話」で川端さんが正気を取り戻しかけるシーンには笑いと同時に「あ、これ本気で助けようとしてるんだな」ってジーンと来ました。六駆のスキルの仕様説明も分かりやすくて、なるほどなーと。次話、雨宮が本気出すのか、それともまたボケるのか、楽しみで仕方ないです!