「愛されたい」
ただそれだけだった……
僕の名前は日本。僕には僕のことが大好きな幼馴染がいる。
『にほーーん!』
彼は優しく、とても明るい。その天真爛漫な笑顔は皆を虜にしてしまう。僕の理想であり、憧れの存在でもある。
「おはよう、イタリアくん」
僕が振り返って挨拶をすると、彼の顔にはこれでもかというほどに笑顔が溢れる。
『今日も最高に可愛いんね♡』
「あはは、何言ってるの笑」
彼の名はイタリア、僕を溺愛している。深く、重く彼は僕のことを愛している。もちろん、彼をそうしたのは紛れもなく僕自身である。
『そういえば、日本は宿題終わってるんね?』
「うん、終わってるよ」
彼からのこの質問を僕は何度聞いてきたことだろう。次に来る言葉ももう覚えてしまった。
「『宿題見せて欲しいんね!』」
『!!』
彼の驚いた表情におかしく感じてしまうのは、きっと僕だけだろうな。
『な、なんで僕が言おうと思ったことわかったんね!』
彼は驚きと、興奮で目をキラキラさせている。本当に愛らしくて、たまらない。
「何回この会話したと思ってるの、さすがに覚えちゃったよ~」
僕がいたずらっぽく言うと、彼は顔を真っ赤にしながら『だって~』と頬を膨らませている。
僕たちは笑い合いながら学校へと向かう。
いつもの日常、それが壊れる時はないと思っていたのに……
学校に着くと、まるで世界が変わったように思える。学校が嫌いというわけではない。だが、彼はどうやら嫌いみたいだ。学校に着いた途端に彼からは表情がなくなってしまう。
『……』
彼をチラリと見ると、まるで天真爛漫なあの笑顔が嘘のように、重い鉄仮面を被ったような表情をしている。
「…イタリアくん?」
わざとらしく、僕は首を傾げて彼に声を掛ける。
『…どうしたんね、日本』
そう言う彼の表情は触れてはいけないような雰囲気を漂わせていた。僕の背中に冷たい何かが走ったように、体が震えているのを感じる。彼は行こうと静かに言い、僕の手を取り大嫌いな教室へ向かった。
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