短話 「お守り」
「お、オリビアっ」
ルドヴィクが部屋を出ると、ウィリアムは慌ててメイドのオリビアを呼ぶ。
彼女は一年前にロズヴェルト家に就職してきたメイドだ。そばかすが特徴的でまつ毛が長く、使用人の間でも「かわいい」と評判らしい。ウィリアムの一つ年上で活発な性格をしているので、ウィリアムも相談をしやすかった。
「はい、なんでしょう、ウィリアム様!」
今日も今日とて活発な彼女はチアガールのような元気さですぐに駆け寄ってきた。
「る、ルイに…おまもり作りたい……」
遠慮がちにそう告げると彼女は変わらず明るく話しかけた。
「わぁっ、いいですね!そのピン貰ったんですか?」
「……うん」
ルドヴィクはウィリアムにその機能について気づかれていると知ってか知らぬか、貰った時から何も言わない。
GPSに攻守魔術なんて作るのに相当な労力とお金がかかるだろう。ウィリアムは行動範囲を監視されていると知ってもあまり悪い気はしなかった。
(そもそも今だってほとんど毎日一緒にいるから別に意味はないと思うんだけど……)
「ウィリアム様、なんか嬉しそうですね!さぁ!愛しのダーリンのためにお守り、作りましょ!」
「だ、ダーリンじゃないっ」
(ただの護衛だしっ……そんなんじゃない……)
恥ずかしくなって声を上げる。しかしオリビアはそんな声をお構いなしに話を続ける。
「そうですね、押し花とかどうですか?しおりにして渡すと特別感がありますっ!」
「……いいかも」
押し花はお守りにちょうどいいかもしれない。もちろんルドヴィクみたいに器用ではないためそんなに凝ったものを作ることはできないが、ルドヴィクもよく本を読むのでいいかもしれない。
「じゃあ、さっそく作りましょう!お花は何がいいですか?」
行動が速い彼女はさっそく小さなかごをもってウィリアムに訊ねてくる。ニッコリと笑って肯定してくれているオリビアに相談してよかった、と思う。
「ええっと……がいい」
周囲の人に聞こえないように声を潜めてオリビアに伝える。すると彼女は満面の笑みで頷いた。
「ふふっ、いいですね!じゃあさっそく用意してきますっ!」
◆◇◆◇
「る、ルイっ、ぷれ、プレゼントあげる。こっち来て?」
「……?はい?プレゼント、ですか?」
ルドヴィクが困惑したように言葉を発する。まるで「俺、何かしましたっけ?」とでもいうような表情に笑いがこみ上げる。
「は、はい。お守り、あげる。」
立派な王子らしく胸を張って言おうと思っていたが、恥ずかしさからやはり噛んでしまう。しかし、ルドヴィクは気が付いていないようなので結果オーライだ。
しおりを渡すとルドヴィクの顔はみるみる紅に染まり、目を見開いてしおりを見つめている。よほどうれしいのか、むずむずと口角が上がり始める。
(喜んでくれて、良かった)
ウィリアムがしおりに選んだ花はカスミソウだ。庭に生えていて小さい花だが集めると華やかになる。押し花にするには少し苦戦したけれど、満足する出来栄えだ。
「ありがとう、ございます。一生大事にします」
ルドヴィクはかみしめるようにお礼を言う。ピンのように凝ったものは作れなかったが、嬉しそうなのでよしとする。
「そういえばですね、ウィリアム様にマカロン持ってきたんです。ちょうどおやつの時間ですからね。食べましょう」
その様子をオリビアは微笑ましく見守りながら静かに扉の前に佇んでいた。
短編を読んでくださりありがとうございます。
よかったら「カスミソウ」の花言葉、調べてみてくださいね。
これからも「かわいい」を届けてまいりますので
ぜひ、本編もよろしくお願いします!






