ナッキは左右の浮き草、特に左のブルをチラチラ見ながらも話を続けた。
「う、うん、話の中でね、モロコたちはカエルの卵を、言い伝えだからって理由で仕方なく食べてるっぽい事が判ったんだけどね、若しかしたらカエル達も、そうなのかもなって思ったからさ、聞きに来たんだけどねぇ、どうなの殿様?」
「「ぶ、無礼なっ! 直接、殿に話しかけるとはっ! お、オノレ――――」」
「むにゃむにゃ、っ! うしっ?」
「止めよ、カジカ、アカネよ、さてナッキ王よ、それを聞いて何とするのかな?」
三度(みたび)、殿様が配下を制止してくれた、ナッキは思う、この側近達っていない方が良いんじゃないのかな、と……
思いながらも話を続けるナッキ、いつもながら頑張り屋さんである、良かった。
「だからね、若しも君達カエルもさ、言い伝えとか伝統で嫌々食べているんだとしたら、それを止めない? って提案しに来たって訳なんだよぉ! モロコがどうするかは判らないけどさぁっ! そんな不毛な行為でいがみ合うとか止めた方が良いんじゃないかなって、そう思ったからさっ! そこら辺を聞きに来た、そう言う事なんだけどねぇ」
殿様が言う。
「なるほどな…… では、当事者に聞いてみるとしようではないか…… ブルよ? モロコの卵は美味いのかな?」
「モロコっ? う、美味く無いのでごわす! もう、食べたく無い、不味い不味いのでごわすよ……」
こいつが食べさせられていたらしい……
「だ、そうだ♪ ナッキ王、さぁどうしようか? モロコは伝統を続ける、のかな? であれば、我等カエルは泣き寝入り…… それしか無いのであろうかなぁ? どうであろう? 大きく強く、美しい『メダカの王様』ナッキ王? 我等が生き残る為にはどうすれば良いのであろうか?」
「うーん………………」
ナッキは結構長く逡巡(しゅんじゅん)をしていたのである。
唸り続けた後、酷くあっさりとした表情を浮かべて殿様蛙に向けて答える。
「卵も子供たちも一緒に連れてさ、下の池に行かない? 僕たち、ってかメダカの皆は変な伝統とか無いからさぁ、君たちは手も自由自在に使える様だし、陸上でも行動できるみたいだからさっ! 一緒に下の池で暮らしやすい場所を作り上げたり出来たら最高なんじゃないかなぁ? どうだろう、これじゃ駄目かなぁ?」
でっぷりとした殿様は、短過ぎる後ろ足でヨチヨチ立ち上がりながら大きな声で言う、因みに満面の笑顔、嬉しさMAXの表情である。
「我君っ! 漸(ようや)く顕われてくれましたぞぉ! 『メダカの王様』銀鮒のナッキ殿が、我等をドグマから救い上げるために、下の池からまかりこしましたのですぅ! 『救世主(メシア)』の降臨ですぅ! お姿を現してくださいませぇっ!」
「へ?」
ピョン、シタッ!
声に答えるように中央の浮き草の上に、水中から飛び上がったカエルは殿様に良く似ていた。
違っている所と言えば、殿様よりもっとシュッっとした締った体をしていた事位であった。
緑の体躯も背に負った黒い斑(まだら)の模様も全く同じであったが、その双眸(そうぼう)は精悍そのもの、正に王者の自信に溢れた凛々しい物であった。
「苦労を掛けたな皆の者、それにナッキ王殿! 呼ばれて飛び出た我こそが、真実カエルを率いている者、トノサマガエルのゼブフォ・トノサマ二十四世であるっ!」
「えっ? ええっ!」