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・d!様の二次創作です。御本人様とは関係ありません。
・shpci要素があります。
・めちゃくちゃ短い上に、オチ弱&もどかしい終わり方です
・独自の設定が入っています
大丈夫な方だけお進みください!
わんくっしょん
**
夜の森は静寂に包まれ、ところどころに漂う霧が月明かりに銀色に輝く。
ciは狐の姿で、木々の間をしなやかに駆けていた。
ふわふわな毛並みは夜の闇に溶け込み、足音一つ立たない。普段なら人目を避け、山野の奥深くで一人過ごすことが多い。
しかし、その夜は違った。心の奥底がざわつき、どこか知りたくもない、未知の何かに引かれるように歩を進めていた。
ふと、視界の端に人影が見え、足を止めた。
月明かりに照らされたその人物は、普通の人間。
──まだ若く、穏やかで、どこか温かみのある顔立ちをしていた。
「…え、狐?珍しいな」
男が少し目を見開く。
「…あんた、誰や」
「…えッ、…えっ!?」
「狐が喋っとるッ!?!?」
男はさっきよりも更に目を見開いて、驚いたように声をあげた。
「あ…すまん、驚かすつもりは無かったんやけど…」
「えッ、……な、何で…喋れるんや…、?」
「…あー…俺は、普通の狐とはちょっと違うんや」
ciは尾を揺らしながら視線を外す。
「あ、あれすか?化け狐的な…」
男の口元に浮かぶ興味と恐怖が混じった笑みを、ciはじっと観察していた。
「まぁ、間違ってはないな」
「えぇ…すごい、… 面白いやん、化け狐が見られるなんて」
「お前、名前はあるんか?」
「俺はciや。すまんが、人間とは関わんのはあんま好まんで」
「えぇ、…面白いのに……俺はshp。よろしくな」
とても神秘的で、不思議な出会いだった。
「ちょ、ci、尻尾モフらせてくれよ」
「はぁ?やだよ」
「えぇ、えーやんちょっとだけ」
「ぅわッ、ちょ勝手に触んなッ!?」
**
「へぇ、ciって人間にもなれるんや」
「まぁ、化け狐やからな。」
二人は毎晩会うようになっていた。
夜が更けては、shpは山野の奥へ向かい、ciと他愛もない話をしていた。
化け狐であることがバレかけた話、山野が好きな理由、人間の躰で歩くのはまだ慣れないという話。
その他にも、たくさん。
気づけば森の静寂と狐火の光の中で、shpはciの小さな仕草に目を奪われるようになっていた。
尾を揺らすたびに、胸の奥が少し熱くなるのを感じた。
「なぁ、ci」
「お前って、なんで人間を好まへんの?」
「…別に俺が好んでへんわけちゃうけどな」
「?どういう…」
「…うーん、お前ら人間の中にもボス的存在がおるやろ?」
「…まぁ、一応?」
「俺らも、一緒なんよ」
「上から、人間と深く関わることを禁じられてる。」
「…え、でも今俺と話とるやん」
「…まぁ、そやな」
shpの頭にははてなマークが浮かんだままであった。
ciと話すとこういうことが多くある。
狐と人間だから感覚が違うのか、なんなのか。
「…ま、もう今日はこの辺にしとこうや。」
「そやな、そろそろ帰るわ」
「おん、ほなまた明日な」
**
次の日も、その次の日も、変わらずshpはciと会話を交わした。
気づけばciに対するその恋心は、無視できないくらいに膨れ上がっていた。
「…ほな、今日はこの辺にしとくか。」
「…ちょっと、待ってや…ci。」
「?どないしたん」
「…あの、…俺、ciのことが好き。」
shpの瞳は真っ直ぐにciを貫いていた。
「…え」
ciは明らかな戸惑いを見せ、数秒間固まっていた。
ようやくciの瞳がshpの方を向き、口を開いた。
「……ごめん、shp、付き合うことは、出来へん。」
「……え、なんで…」
shpは思い出した。
いつの日かciが話していた、人間と関わらない理由を。
「…禁じられてるから、?」
「…ちゃう、よ。ただ…」
「…shpとは、ずっといたいから」
その言葉の意味を、shpは理解できていなかった。
ずっと一緒にいたいなら、恋人同士だっていいはずだ。
「…ごめん、shp。今日はもう帰って」
「……分かった」
**
「…ci、今日こそ…」
「無理や、付き合うのは」
「…なんで……」
あの日からずっと、shpはアプローチを続けた。
いつか、付き合えることを願いながら。
まぁ、その願いはまだ叶いそうにないが。
だが、ciも毎晩山野から顔を出してくれることから、この時間が嫌ではないのだろう。
暗闇からひょっこりと顔を出すciの姿は、より愛らしさを感じるものだった。
そろそろアプローチし続けて、5か月程経っただろうか。
このアプローチに飽きないciもなかなかの物好きではあるが、化狐なんかに恋してしまう自分は、きっとそれ以上に物好きなんだろう。
不意にciが顔をあげた。
「………shp」
「……もし、俺が付き合うの許可しても、絶対に後悔せぇへん?」
「…えッ、後悔なんかするわけないやん!!」
するとciは柔らかく微笑んだ。
「………じゃあ、ええよ。付き合おう」
人生で初めて願いが叶った日だった。
**
その日から、ずっと特別な日々が続いた。
恋人同士じゃないときも幸せだったが、恋人同士になったことで
よりciが本心をさらけ出してくれてる気がして、それがとても嬉しかった。
「…こんな日々がずっと続いたらええのにな」
ciが何かを思い出すようにそう言った。
ciはどこか遠い目をしていて、自分ではない何かを見ているようだった。
「…ずっと一緒に居れるやろ、今後も」
「…そやな」
**
shpはいつものように山野へ向かおうと準備していた。
shpの家は山のすぐ麓にあるため、ciと会うために、いつも高いとはいえないくらいの山を登っていた。
だが、今回は少しいつもと違っていた。
外がいつもより騒がしいのだ。
よく見てみると、近所の人たちが山を見上げながら声をあげている。
shpは外へ出て近所の人たちと同じく山を見上げた。
shpが見たのは、山野全体を赤く染める炎だった。
「…は、なんやあれ」
shpの瞳はそこに釘付けになったように動かなかった。
風に乗って立ち上る煙の匂いが、記憶の奥のciの体温と混ざり、胸を締めつける。
「……ci?」
声に出した瞬間、喉の奥がひりついて言葉が途切れた。
炎の向こうに、誰かの尾がゆらめいた気がした。
それは、何度も撫でたあの橙の尾と同じだった。
**
後に、地元ニュースで原因不明の発火と報じられた。
だが、sh pは知っている。
あれはきっと、狐の嫁入りだと。
ciが最後に見せた笑顔と、あの夜の光景が胸に焼き付いたまま、もう二度と消えない。
それでも、ciにまた会いたいと、何度も何度も祈り続けた。
神様は2度も願いを叶えてくれやしないと分かっていながら。