テラーノベル
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注意事項
叶さん視点は途中まで全て同じです。
「叶のバカ…。」というセリフから変わってます。
地雷さんや苦手な方はそっと閉じてください
この作品はご本人様と何一つ関係ありません
コメントをする際には批判ではなくアドバイスをしてください。
それでは楽しんでいってください!
叶さん視点。
あぁ、そうか。そうだよな普通は。3年間付き合った恋人に別れを告げられている。それなのに納得してしまう。葛葉は僕を選ばないよな。弦月さんを選ぶんだろうか。
『良いよ、別れよっか!』
良いんだ。僕には葛葉だけじゃない。そうだよ、葛葉はあんなに厄介だったじゃないか。
「叶…。」
『良いよ、むしろ好都合だって。これで女の子と遊べるし面倒なのが終わって幸せだし』
葛葉は何も言わなくて、でも苦しそうな辛そうな顔で泣いていた。なんでだよ、お前が別れようって言ったんだよ?それなのになんで泣いてんだよ。
『清々するよ。大体葛葉は可愛くないし女の子の方が僕は好きだし…。こうして付き合ってたのも気まぐれと言うかノリみたいなもんだったしね。』
こんな時にも止まる気にならない口を開いてペラペラと話す。その時、ふわっと何かに包まれた。細くて温かくて居心地の良いそれは葛葉だった。
『葛葉なにしてっ!?』
「だって叶、泣いてるんだもん。」
『えっ?』
僕、泣いてるんだ。なんで最近はこんなに泣きっぽくなってるんだろう。僕は何がそんなに悲しいんだろう。葛葉の手に頭を撫でられている。その事に安心してしまう自分がいてまた涙を流す。
「叶?俺は嬉しかったの。相棒になれて恋人になれて幸せだったの。叶は嫌だったかもしれないけど俺にとっては全部が嬉しかった。特別だった。」
嗚咽を我慢する事に必死で返事が出来ない。葛葉の言葉には嗚咽が混じっていて肩も震えてる。だからまだ泣いてるんだと思う。
「叶には遊びとかノリだったかも知れないけど俺は真剣だったよ。嫌な事もいっぱいあったし傷ついたけどそれ以上に楽しくて…。」
そこで言葉を詰まらせる葛葉。そっと体を離して微笑まれる。
「俺を幸せにしてくれてありがとう。」
その笑顔を見て全部が分かった気がした。僕は葛葉が本気で好きだったんだ。そして葛葉が僕から離れて行かないことで調子に乗ってた。自分の気持ちに気づかないふりをして葛葉を傷つけて、それでもまだ葛葉が好きでいてくれてるって信じてた。
『……ごめんッ。ごめんなさいッ!!』
葛葉の細い体を思いっきり抱きしめて泣き叫ぶ。
「叶のバカ…。なんでもっと早くッ、、、。」
ごめん、ごめん。そうだよね。もっと早くに気づきたかった。そうすれば今もきっと2人で笑い合えてたのに。全部、僕のせいだ。
『ねぇ、葛葉もう遅い?…僕はもう葛葉の隣に居ちゃいけない?自分勝手かも知れないけどッ、、僕はまだ葛葉が、葛葉の事が好き。』
「っ!!」
葛葉がビクリと肩を揺らして息を飲んだ。困るよね、気持ち悪いか。
『ごめッ、ごめん…。忘れt』
「やだ…忘れない!!忘れたくないッ。」
忘れたくないってそんなの…。
『良いの?僕、そんな事を言われたら勘違いしちゃう。』
「勘違いして良いよ。別れようって言ってごめん。俺…叶の事まだ大好き。だから……。 」
綺麗なルビーの瞳からさっきと比べ物にならないくらい大きな涙がこぼれ落ちていく。月の光に照らされたそれはまるで宝石の用だ。
この先の言葉をためらって泣き続ける葛葉の顎をひいて引き寄せる。
『やり直そう、今度は絶対泣かせないから』
言い終わると同時に唇が重ねた。
葛葉さん視点。
叶の唇が離れていくタイミングで俺からも触れるだけのキスをする。そうしたら叶の舌が口の中に入ってくる。そのキスは激しいはずなのに優しくて離れている間に出来た距離と時間を埋めるようだった。ただお互いの存在を感じていたい、愛を確かめたい、その一心だった。どれくらいたったのか分からないけど離れた時、俺達の口は銀の糸で繋がっていた。その糸がプツンと切れて落ちた所で叶の手を握る。
「俺はどんなに酷い事されてもお前が居なきゃだめみたい。」
嬉しいのか悲しいのか分からない涙が流れてきて止めようと擦ると叶に手を強く握り返された。
『僕もお前が居なきゃだめなんだよ。最低だけど、説得力ないかも知れないけどこれから頑張るから隣に居ることを許してください』
「うん、約束だから。」
小指を絡めて約束の歌を口ずさむ。叶も一緒に歌ってくれた。俺はこの声が好き。優しくて安心する、叶の声が1番。繋がれた手を離して恋人繋ぎに変える。叶は顔を赤くしながら嬉しそうに微笑んでくれた。その時、後ろからガタっと音がして振り向く。
「あ、弦月さん。」
〚これ置いときますね。プリンと水とおにぎりが2個ずつ入ってますから。邪魔してすみませんでした。お幸せに。〛
早口で逃げるように歩き出した弦月さん。待って、そう言おうと口を開いた時、叶が弦月さんの腕を掴んで引き止めた。
弦月藤士郎さん視点。
見つかっちゃったなぁ。バレないようにしてたんだけど失敗した。これ以上この場に居たら良くない事を口走りそうで怖い。早く帰ろう。僕の出番はもうない。泣いてる姿を葛葉さんには見せたくなくて急いでドアに手をかける。でも腕を掴まれて帰ることは叶わなかった。
〚何ですか?僕はもう帰りたいです。〛
諦めてくれ、頼むから。こんな情けない姿は見せなくない。
『弦月さん、すみませんでした。酷い事をたくさん言って傷つけて先輩としても人としても最低でした。僕の事は嫌いで良いです。それだけの事をしたって分かっています。』
叶さんと目が合ってびっくりした。見たことのないくらい濃い隈に細くなった体。悩んでいた事や辛かった事が全身から伝わってくる。でも僕は許せない。こんな僕はわがままなのかな。
〚許しません、絶対に。〛
『僕も弦月さんが嫌いでした。でも今は、葛葉が頼ったのが弦月さんで良かったし弦月さんが葛葉を助けてくれたと本気で思ってるんです。弦月さんが居なきゃ葛葉の大切さにも気づけなかった。殴られても罵られても良い。でもこれだけは伝えたかったんです。葛葉を守ってくれてありがとうございました』
手に力を入れて殴ろうとした。でも殴れなくて代わりに涙が出てくる。振り下ろした手を叶さんの肩にポンと置いて真っ直ぐと見つめる。
〚殴れなくなっちゃったじゃないですか。嫌いなのに許せないのに…。叶さんはずるいです。ずるい人です。〛
『弦月さん……。』
ポロポロと出てくる涙を拭って今度は葛葉さんに向き直る。一緒に過ごすようになってから毎日の様に見てきた泣き顔で僕を見つめていた。きっと罪悪感とかを感じてるんだろうな。良いのに、僕には勝ち目が無いって分かってたから。覚悟の上であなたを好きになったから。
〚葛葉さん、僕はあなたが好きです。大好きです。でももう辞めます。前に言った通り葛葉さんを支える1人の友人になります。だから泣かないでください。僕は笑っている葛葉さんが好きですから。〛
頭を撫でそうになった手をぐっと堪える。そんな僕を見て葛葉さんが僕の言葉に頷いて不器用な笑みを浮かべてくれた。それだけで僕の恋が報われた気がする。やっぱり葛葉さんはすごいな。
〚葛葉さんを泣かせたら今度こそ殴りますし貰っちゃいますからね。〛
『分かってます。』
〚じゃあ本当に帰りますね。さようなら。〛
叶さんはもう大丈夫だ。僕が殴ることも葛葉さんと恋人になる事も無い。それに安心すれば良い。僕は葛葉さんの友人なんだから。
「弦月さん、ありがとう。」
〚っ!!〛
大きな声で確かに言われた言葉に止めたはずの涙が溢れてくる。それでも絶対に振り返らずに病室を出た。景君と晴君に電話でもしようかな。聞かせてあげよう。僕の映画みたいな初恋を。
〚好きですよ…葛葉さん、、、、。〛
僕の弱々しく震えた声は夏のセミにかき消されて夜に溶けていった。
はい!
ここまで読んでくれてありがとうございます
叶さんと復縁したバージョンも見たいと言うコメントを頂いたので書いてみました。弦月さんが報われなさすぎましたね。推しの方はすみませんでした。コメントくれた方もこれで良かったのかな?
以上きい。でした(*‘ω‘ *)
コメント
18件
この話ずっと好きです🥲報われないのもまた凄い泣ける...復縁もまたいいなぁ😢😢️♡️弦月さんの優しさが溢れ出してる...!!
私のリクエストかな? 違くても嬉しいありがとうございます!