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灰羽リエーフ×芝山優生(リエ芝)
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芝山「あー、なんか、今日やばいくらい眠いかも」
部活後の教室に戻ってきて、椅子にどさっと座った芝山がぽつりとつぶやく。
放課後の教室には数人しか残っていない。窓から入る夕日が、机の上に長い影を落としていた。
リエーフ「え、寝るの?」
芝山「……ちょっとだけ、ね」
芝山は机に突っ伏して、腕に顔を埋めた。制服の袖から覗く細い手首が、疲れを物語っている。
リエーフ「今日の練習、キツかった?」
芝山「灰羽くんがスパイク強すぎるんだよ……。ちゃんと受け止められるように、って頑張ってるけど……」
リエーフ「え、でも芝山、レシーブ完璧だっただろ。めっちゃ俺の拾ってたじゃん」
リエーフは芝山の隣の席に腰掛ける。自分より30cm以上小さい体が、まるで縮こまるように眠っているのを見て、思わず口元がゆるんだ。
芝山「……うれしいけど、もうちょっと褒めてほしいかも」
顔は見えないけど、芝山の声が少しだけ甘くなる。
リエーフ「すげーよ、お前。ほんと、俺が頼れるの、芝山しかいないもん」
芝山「ほんと……?」
リエーフ「ほんと。芝山は夜久さんみたいに怖くないし気楽に話せる」
その言葉に芝山が、くすっと笑う。
芝山「なに?夜久さんみたいに指導しちゃうよ?灰羽くん。」
リエーフ「は!?勘弁しろよ!」
すると芝山はリエーフの机の上の手に顔を乗せて目を瞑る
リエーフは芝山の横顔に目をやった。きれいに整えられた黒髪、キリッとした眉、その下に閉じられた大きな紺色の瞳。
いつも真面目で、熱血で、ちょっとだけ頑張りすぎちゃう芝山。
リエーフ「……がんばりすぎんなよ」
誰にも聞かれないように、小さな声でつぶやいた。
芝山が、静かに寝息を立てはじめたのを見て、リエーフもそっと背もたれに身を預けた。もうすぐ部活終わりのチャイムが鳴る。それまで、少しだけ。
ただ、同じ時間に、同じ空気の中で、芝山の隣にいられることが、今はそれだけでよかった。
何十分経っただろう外はもう茜色の夕焼けが広がっていた。
リエーフ「芝山〜、まだ帰んないの?」
芝山「……うん。ちょっとだけ、ここにいたいなって」
誰もいない教室で、芝山は窓の外に目をやっていた。夕焼けがまぶしい。
その隣に、大きな影。リエーフが自分の机に体を預けるようにして、芝山をじっと見ていた。
リエーフ「さっきから眠そうじゃん。机で突っ伏してたし」
芝山「ちょっとだけ、ねむいかも……」
リエーフ「ほら、こいよ」
芝山「えっ?」
灰羽が芝山の手首をとる。細くて、体温のこもった手。
そして、自分の席にぽん、と座らせた。
リエーフ「俺のとこ、座って。寝かせてやる」
芝山「……灰羽くん、冗談でしょ」
リエーフ「本気だけど?」
芝山の目が、一瞬揺れる。けれど拒まない。
灰羽の制服の胸元に、そっと額を押し当てて、うずくまる。
芝山「……こういうの、ずるいよ」
リエーフ「どこが?」
芝山「やさしくされたら、気持ちまで、ゆるんじゃう」
リエーフ「それでいーじゃん。俺の前だけ、ゆるくていいじゃん」
灰羽の大きな手が、芝山の髪をゆっくり撫でる。
こめかみのあたりを、なでて、なでて。
まぶたがだんだんと重たくなる。心も、体も、とけていく。
芝山「……気持ちいい」
リエーフ「芝山が気持ちいいなら、それでいーよ」
ほんのすこしだけ、唇が触れた。前髪の下の額。くすぐったいくらいの、やわらかいキス。
芝山が、そっと目をあける。
芝山「……灰羽くん」
リエーフ「なに?」
芝山「……その、もう一回して」
リエーフ「どこに?」
芝山「……さっきのとこ」
リエーフ「額?」
芝山「……うん」
灰羽は、ふふっと笑って、もう一度、唇を落とす。今度は、すこしだけ長く。
(……灰羽くんの手も、声も、キスも)
(ねむくなるくらい、気持ちよくて、あったかくて……)
芝山「もう、起きたくないな……」
芝山がぽつりと言うと、灰羽はやさしく囁いた。
リエーフ「じゃあ、ずっとここにいろ。俺のとこに」
放課後の教室。二人の距離だけが、甘く、密やかに近づいていく。