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#完全オリジナルストーリー
1560年 4月 尾張国この日は織田家での花見を催し家臣らで酒と花を楽しんでいた
織田信孝「そしたらだ最後にな織田信孝様の信か孝の一字を森義国様にってハハハ」
三ノ輪義重「それでそれであげちゃったんですか殿」
織田信孝「無論挙げた、無用な争いせずに手に入れられるならな」
如月純直「殿、あまり飲み過ぎては」
織田信孝「硬いぞ純直、ほれ呑めお前も」
如月純直「いえ、拙者は」
それから一日中酒に飯と楽しみ気づいた頃には
織田信孝「おい、酒を」
小姓「そ、それが…」
身体を震わせ、恐る恐る信孝は後ろの酒樽に手をつけ
織田信孝「お前も酒は控えろというのか、せっかくの宴だぞもっと…って、あら…ない酒が」
麻生野元輝「全部カラだ、こりゃ」
山のように積んでいた酒は一日で全部なくなり
織田信孝「領民やお前らにも配ったが、そんな…さてはお前何か知っておるな」
信孝の鋭い眼光が小姓を捕らえた
小姓「ひぃ!」
織田信孝「知ってること全て話せぇ!酒の怨みだ!正直に申せ!」
小姓を持ち上げ今にもキレそうであった為周りの家臣達も止めに入ると、小姓は口を割り
小姓「如月様が全てお呑みになられました!」
その一言に信孝も我に返り
織田信孝「きさらぎ?如月純直か?」
確認するように小姓の顔の目の前まで行き嘘なら斬られかねない程恐ろし程であったが
小姓「本当です!だから…」
そう言い残すと小姓は泡吹いて気絶しその場で倒れた、それを見た信孝は満足そうな顔で
織田信孝「そうかそうか、悪かったのう」
スタスタと何処かに行き、それを恐る恐る胤久が問うと
田原胤久「と、殿どちらに?」
織田信孝「厠だ」
田原胤久「お、お気をつけて」
そして次の日評定に織田家の面々か集まった、織田信孝評定の間に入ると我先にと如月純直が前に出て深々と謝り謝罪した
如月純直「殿!昨日の無礼、平にご容赦下さい、罰なら何なりとお与えください」
織田信孝「ならば如月純直の所領を全て平らげる、代わりの代替地は用意しておる故、許せよ」
如月純直「滅相もございません」
織田信孝「さて本題だ越前の久下が美濃に攻める為戦支度をしておると複数の斥候が申してきた、恐らくは嫡男の元服に備えての初陣を華々しく飾りたいのであろうが」
織田信三「元服は来年ではないでしょうか?」
伊吹良利「信三様、それが予定の元服の時期を早めたとの事です、現に名を隆広と名乗っているそうです」
麻生野元輝「解せぬのが広の一字は近江の保土原広郷の広の字であるとも、殿これは近江の保土原にも注意せねばなりませぬ」
織田信孝「よし、元輝は兵2000を」
信孝が言い終わる時手を挙げ声を発した者がいた
本庄武成「殿その御役目是非とも某にお任せ下さい」
麻生野元輝「本庄、貴様の出る幕ではないわ下がっていろ」
織田信孝「面白い」
麻生野元輝「と、殿?まさか某よりもこの者に任せると仰せですか!」
織田信孝「勘違いをするな元輝、お前は元より三河攻めの支度を任せておっただろ?」
麻生野元輝「まあ、そうですが」
織田信孝「安心せい、お前は尾張の大事な東の要だ、尾張を託せるのは其方だけじゃ」
麻生野元輝「かしこまりました、本庄お前に此度は譲ってやるわ」
本庄武成「ハッ!殿と麻生野様に恥をかかせぬよう全身全霊でそのお役目果たしてみせまする」
織田信孝「副将に蝦名、お前が本庄の傍で補佐しろ」
蝦名興国「かしこまりました」
織田信孝「場所は追って伝える3日の内に支度を済ませよ」
本庄武成「はっ」
蝦名興国「承知しました」
その後大垣城に本庄を城主に蝦名を副将に二人は大垣城に入った、そして如月は郡上八幡城の城主に任命された
1560年 4月中旬
織田信孝「良利お前には別働隊の大将を任せたい」
伊吹良利「はっ、何なりと」
信孝は良利を呼び出し
織田信孝「良利、お前に岡崎城攻めの総大将を任せたい」
伊吹良利「某にですか!?そんな大役なら信綱様や信三様が適任では」
織田信孝「そうだな、しかし信三には伊勢の統治を進めて貰う必要がある、信綱も越前に目を光らせて置く必要がある為動かせぬ」
伊吹良利「わかりました」
1560年 5月 尾張 鳴海城
伊吹良利「皆良くぞ、集まってくれた此度は山崎正政殿の念願の岡崎城奪還するのが目的だ」
山崎正政「やれやれ、随分待たされたぞ」
伊吹良利「岡崎城の硬さなら正政殿が良く御存知でしょう、数も揃わなければ落とせぬ事も」
山崎正政「無論だ、2000や3000程度なら余裕で跳ね除けれるわい」
自信満々の返答をし良利は呆れ
伊吹良利「だから、犠牲も多くなるので、我らも攻めるに攻められなかったのです」
山崎正政「だが、お陰で調略に時間はかけられたぞ岡部城、西尾城、刈谷城、岩略城、西三河はワシの帰参するのであれば手を貸すとの事です」
伊吹良利「ふむ、では正政殿には寝返った者らに指揮を任せたい、出陣の合図の狼煙は3つだ」
山崎正政「3つですな、かしこまりました」
伊吹良利「各将は戦支度して下さい、10日後には再び此処鳴海城に集まり願いたい、無論遅参した者には謀反の疑いありと見なします、では皆また会おう」
それから10日後伊吹良利率いる隊が鳴海城に集まり出陣した
先に山崎正政から指示を受けていた刈谷城城主は城を開城に投降した、その報告は三河の岡崎城を拠点としている○○にすぐにも届いた
1560年 5月 三河国 岡崎城
赤松景兼「何!刈谷城は戦わずに城を開城し降っただと!」
斥候「はい」
赤松景兼「敵の狙いは此処岡崎であろう、吉田城の義三様に急ぎこの事を知らせる早馬を」
斥候「承知」
赤松景兼「他の者は籠城の準備に取り掛かるのだ」
それから2日後城は織田の軍に包囲された、遅れてこの事を知った川崎義三は安藤信助と篠原影国の隊を先に向かわせ山中の地まで軍を進めていた
斥候「敵は織田の隊です」
安藤信助「御苦労、敵の」
信助の話してる最中に陣中に足軽が急ぎ入ってきて
足軽「報告します」
安藤信助「どした?」
足軽「岡部城と西尾城の隊がこちらに向かってきております、数は1000はいない程度」
安藤信助「援軍?篠原殿、殿から何か聞いておるか?」
篠原影国「いや、聞いてはおらぬが、岡部と西尾の兵は合わせても1000程度のはずだ、俺が確認してこよう」
安藤信助「ああ、頼む万が一城が落ちていたのなら後詰めにでも回ってもらうか」
篠原影国は馬廻衆50を引き連れ向かうと、突然篠原影国の隊に矢の雨が飛んできた
篠原影国「まっ!待て!我らは味方だぞ!」
突然の攻撃に動揺し急ぎ止めるように声をかけるもその声は掻き消され
馬廻衆「篠原様お逃げ下さい!このままでは!うぐっ!」
篠原影国「クソォ!退け!退くのだ!」
篠原影国の馬廻衆は安藤信助の陣に戻る頃にはわずか10人しか残っていなかった
安藤信助「どしたんだ!影国!何があった!」
戻ってきた影国に見て、急ぎ立ち上がり駆け寄る
篠原影国「奴ら仲間のフリして」
安藤信助「そうか、それだけ聞ければ充分だ、誰か手を貸せ」
侍大将「はっ、篠原様肩を貸します」
安藤信助は歯を食いしばり下知を下す
安藤信助「これよりワシは裏切った岡部城と西尾城の者らに天誅を下す、ワシに従う者のみ着いて参れ」
遅れて中山の陣に着いた川崎義三の隊が到着した
川崎義三「そうか、篠原影国は負傷し撤退、安藤信助は裏切った岡部城と西尾城に兵を向け半数以上向かったか、此処に残っておるのはどの程度だ?」
侍大将「300程で御座います」
川崎義三「安藤の歯止め役に篠原を付けたのに逆に仇となったか、海野如何にする?」
海野国村「はっ、殿の命無く勝手に隊を動かしたのですから領土は全て没収そのくらいは妥当かと」
川崎義三「そうだな、兎にも角にも先ずは、この戦に勝たねばな、遠江衆は?」
海野国村「それが甲斐と信濃から援軍要請もありとても兵を出せぬとの事で」
川崎義三「は?あそこはまた内輪揉めか?どちらにも援軍を出すと返答して適当に時間稼げばいいものを」
海野国村「遠江がダメなら駿河に援軍を要請は?」
川崎義三「ダメだ、今からではどれだけ早馬を走らせても駿府に着いた頃には合戦してるだろう、兵は1人でも多い方がいい」
海野国村「はぁ…」
川崎義三「今は安藤の隊が戻って来るのを待つしか他ない」
その時岡崎城では伊吹良利が直に使者として赤松景兼の元に訪れていた
三河国 岡崎城 客間
赤松景兼「ようこそ伊吹殿」
伊吹良利「先ずはお目通り許して頂き感謝します」
一礼すると赤松は強気な態度を取り
赤松景兼「既に耳にしていようが、川崎義三が援軍として既に岡崎の近くまで来ておる、城の兵も合わせれば織田軍なんぞ」
伊吹良利「いえ、降伏を促す為に来たのではないのです」
赤松景兼「ほう、では何故其方程の者が使者として参ったのだ?」
伊吹良利「明日より総攻めしますので、その挨拶にと」
赤松景兼「なっ!何ッ!この城は山崎正政の城だぞ!」
伊吹良利「ええ、既に了承は得ています、既に尾張や美濃、伊勢からも兵を掻き集め10000は最低でも動員して岡崎城を攻め滅ぼす手筈に」
赤松景兼「待て!待て!降伏する!三河からも兵を退く!」
伊吹良利「はぁ…」
赤松景兼「頼む!ワシの家臣達の撤退を条件に城を開城しよう、血も流さずに済むんだ、織田殿もさぞ喜ばれよう、悪い話ではないだろ?なあ?」
伊吹良利「はぁ…わかりました、では明日早朝にも東へお逃げ下さい」
赤松景兼「ああ!早朝までには必ず!」
その後伊吹良利は本陣に戻り事の次第を教えたが皆唖然としていた
山崎正政「ま、誠かそれは…信じられん…」
皆が疑うのも無理もなく、多くの犠牲を覚悟していたのに両軍血を流さず岡崎城は無血開城となるのだから
伊吹良利「まあ…皆疑う気持ちも分かる…正直、自分自身驚いている、とにかく明日早朝にも分かろう故皆明日に備え休むのだ」
そして約束の夜が明け初めた頃東の城門が開くと岡崎城から兵達が次々と東へ向け撤退していく、織田方の兵は夢でも見てるかのように静かに見送った
岡崎城の全ても城門が開き終えると赤松景兼も城を出て声を発した
赤松景兼「織田方の諸将に告げる!約束を守られた事深く感謝致す!この御恩決して忘れはせぬ!」
伊吹良利「…念の為城に罠がないかだけ確認の偵察隊を向かわせろ、徹底的に調べよ不審な所は全て調べろ」
その後一時の時が過ぎると場内から知らせが届く
伊吹良利「そうか、城内はもぬけの殻か」
偵察「はい、全て隅々まで調べましたが何もなかったです」
伊吹良利「そ、そうか山崎正政殿、城は取り返した岡崎城は殿のからも言われており其方に渡そう」
山崎正政「うむ、かたじけない生きて再び岡崎に帰れる日が来るとは、伊吹殿感謝致します」
その後西三河は織田方の手に落ち、山崎正政は岡崎に戻り再び岡崎城の城主に復帰した、それを知った川崎義三は吉田城に撤退した
美濃国 織田軍本隊
織田信孝「何?岡崎城がもう、落城したと?」
早馬「は、はい合戦とはならず無血開城と聞いております、伊吹殿からは指示をも求めてもおります」
麻生野元輝「殿ならば伊吹殿の隊には後詰めにして呼ばれるのは?」
織田信孝「いや、良利にはそのまま三河に残るように指示せよ、敵が再び岡崎を狙いに来るかも知れぬ」
早馬「かしこまりました」
織田信孝「先鋒の永野興綱は?」
麻生野元輝「そうですな、今は飛騨の」
飛騨国では日々軍議していた
美濃国 織田軍本隊
織田信孝「何?岡崎城がもう、落城したと?」
早馬「は、はい合戦とはならず無血開城と聞いております、伊吹殿からは指示をも求めてもおります」
麻生野元輝「殿ならば伊吹殿の隊には後詰めにして呼ばれるのは?」
織田信孝「いや、良利にはそのまま三河に残るように指示せよ、敵が再び岡崎を狙いに来るかも知れぬ」
早馬「かしこまりました」
織田信孝「先鋒の永野興綱は?」
麻生野元輝「そうですな、今は飛騨の」
その頃飛騨国では日々軍議していた
宇山信正「何ッ!織田が攻めて来ただと!」
早馬「既に永野興綱の隊1000が砦攻めに松倉隆重様の隊が300が後詰めに入り砦の落城は避けられました」
冷泉政興「ほう、あの永野興綱の隊を止めたか」
宇山信正「感心しとる場合か、敵は万を超える数なのだぞ」
冷泉政興「ええ、しかしまだ美濃です、恐らく永野興綱の隊は斥候として我らの動きを探ろうとしたのではないでしょうか」
新庄村重「殿、此処は某の隊も砦に向かわせて下され」
宇山信正「わかった、頼むぞ村重」
新庄村重「はっ、必ずや」
冷泉政興「新庄」
冷泉が新庄よ呼び止めると立ち止まり終始無言の後痺れを切らし
新庄村重「だからなんだよ!早く申せ!」
冷泉政興「いや、用もないが兵を消耗は避けたい、地の利を活かし敵を」
新庄村重「あー、はいはいわかったわ、頼綱行くぞ」
新庄頼綱「はっ、父上」
新庄村重と頼綱は砦に松倉隆重と合流した
松倉隆重「おぉ!新庄殿援軍感謝致します」
新庄村重「よう持ち堪えたな隆重、殿も褒めておったぞ」
松倉隆重「ありがとうございます」
新庄村重「して敵は?」
松倉隆重「絵図で説明致します、敵は鶴翼で布陣しコチラの砦には永野興綱といった美濃の者らが同様に向こうの砦攻めしているのも美濃の者らです」
新庄村重「織田や尾張の奴らは?」
松倉隆重「恐らく郡上八幡城の方かと」
新庄村重「牽制かあるいは此方の出方を見ておるのか、頼綱」
新庄頼綱「はっ」
新庄村重「お前は兵400で向こうの砦に入るんだ、砦兵の士気を上げたい」
新庄頼綱「はっ、お任せください」
1560年 6月
早朝砦が落ちた、頼綱の方から狼煙が上がった黒い煙がモクモクと天に昇るのを確認した
松倉隆重「新庄様、頼綱様の砦から黒い煙が恐らくは火攻めかと」
新庄村重「ッ!頼綱は無事かなんだろうな」
松倉隆重「分かりませぬ」
新庄村重「此処を任せる、日が沈んでも某が戻らぬ場合は砦を破却して撤退せよ」
その後村重率いる隊100程が馬早に砦を抜けた、それを確認した永野興綱はすぐにも動いた
永野興綱「敵が動いたか、よし我が隊は砦から出た奴らを」
安中昭康「まあ、待たれよ永野殿」
隊に下知しようとした永野興綱を止めに入ったのは安中昭康であった
永野興綱「安中殿か、砦を落としたと聴いたが、もうこっちに援軍として参ったのか?」
その時安中は鼻で笑い
安中昭康「まさか、殿へ報告の為と寄り道がてら近くを通っただけだ、かつては美濃三人衆と呼ばれた我らもここ7年で腕が鈍ったものだ、いや其方は訛り過ぎたようだな」
怒り刀に手をかける
永野興綱「何を!」
安中昭康「文句があるなら武功で示しなされよ敵は飛騨者らだ」
刀から手を離し振り替える
永野興綱「ちぃ!分かってるわ!全軍!再度総攻めだぁ!今日こそ落とすぞ!」
永野隊「おぉー!」
永野隊の士気が上がると安中は静かに立ち去ると安中の家臣が声をかけ
侍大将「挑発せぬでも良かったのでは?」
安中昭康「目の前の目的よりも優先する事などない、そんな事してたら隊の統率も乱れる」
頭を深々と下げ
侍大将「はっ!肝に銘じておきます」
その日の夕刻には永野隊が砦を落城させ城主松倉隆重は北に落ちていった
織田本陣に早馬が入って来た
早馬「永野隊、牧野隊砦攻略しました」
織田家臣達は声をあげ称えた、その中で予想通りだという表情で冷静な者が一人いた
織田信孝「安中よ、其方最初からこうなる事を分かっていたな」
安中昭康「流石は織田の殿様、仰る通りです」
織田信孝「どのような策を用いたのだ?」
織田の問に安中は少し下を向き顔を上げた
安中昭康「…何も、ただ喝を入れたまでです」
その表情からも安中の永野に対する信頼を感じ取り、問い質す事をやめた
織田信孝「そうか…信頼という奴か、よし!皆の者今宵はゆっくり休め明日よりワシ率いる尾張衆は美濃の者らと合流し飛騨攻めをするぞ!」
その後織田本隊が飛騨の桜洞城に入り3ヵ月が過ぎ交代で見張りする者が月を重ねる毎に増えていった
一方の宇山家では冷泉政興を総大将に宇山信正の次男と三男宇山正照、宇山重貞を副将に新庄村重やその嫡子新庄頼綱に松倉隆重などほぼ全ての戦力が松倉城に集まっていた
1560年 9月 松倉城
冷泉政興「殿は?」
早馬「はっ、未だ嫡男國正様と高原諏訪城から出る気配はないです」
皆が黙り込む中声を上げた
宇山正照「皆!父上や兄上が居なくとも我らは強い!だから!」
新庄村重「お気持ちは分かります正照様、しかし数も士気も今や織田優勢なのです、こんな大事な時に総大将となられる御方が居なくては、政興殿に不服してるのではないですぞ」
冷泉政興「無論だ、しかし…」
本陣の外を見て
宇山正照「す、すまない某が総大将の器でないから皆が心配なされるのであろう」
宇山重貞「あ、兄上」
宇山正照「わかっておる!だが…悔しくて仕方ないのだ」
身体を震わせ己の頼りなさを痛感する
冷泉政興「皆此度はここまでにしよう」
新庄村重「そうですな、正照殿重貞殿持ち場に戻りますぞ」
宇山重貞「あっ、ああ…」
宇山正照「某、父上と兄上に出陣してもらうように直に会って話そうと思う」
冷泉政興「…わかりました、私からもお願いします」
頭を下げ膝を着く、それを見た新庄村重も頭を下げ正照にお願いする
新庄村重「自分からもお願いします」
次々と皆頭を下げた、皆この状況を打開する策はもう、これしかないそんな気持ちで皆正照に託す思いだった、それを感じた正照は
宇山正照「ッ!わかった、皆の思い受け取ったぞ!命に変えても必ずや、誰ぞ!馬を!」
本陣を出た宇山正照は数名の馬廻り衆と共に北に向かった、しかし
宇山信正「却下だ、戻って冷泉や新庄に伝えよ、我らは共に」
宇山正照「…」
正照には父の声が何も聞こえず闇のように真っ暗であった、確かに目の前には父とその横には兄國正が見えるが何を言ってるのかまるで理解出来ないし聴こえもしなかった、ただ無力な自分とそんな自分を待ってる多くの者らの信頼に何かが込み上げた
宇山信正「ん?聴いておるのか?正照?」
正照の異変に気づき立ち上がるが既に遅かった
宇山正照「ゴフッ!ゲホゲホ、うっ!…」
限界を迎えた正照はその場で吐いた、父上や兄上が近寄り何かを言っているが何も聞こえず何も見えなかった、ただ何かが壊れたのは確かだった
冷泉総大将本陣
水を貯めていた水瓶が突如として割れた
冷泉政興「なんだ?」
侍大将「貴重な水が…すみません冷泉様、おい!誰か急いで片付けろ」
冷泉政興「…待て」
冷泉は立ち上がり割れた水瓶を見つめ
侍大将「れ、冷泉様?何かありましたか?」
冷泉政興「いや、なんでもない済まなかったな…」
大きくふたつに真っ二つに割れた水瓶が御家を案じてるように見えた
その後馬廻り衆が冷泉の元に戻ったが正照の姿は何処にもなかった
1560年 10月 松倉城
それから1月以上両軍は睨み合っていた、そんな時帰雲城方面から伝令の者が参った、帰雲城が落城した知らせが宇山陣営に届いた
冷泉政興「そうか、帰雲城が守兵はどうした?」
伝令「城に残った者はことごとく…討ち取られました」
冷泉政興「そうか…そろそろ雪だな」
宇山重貞「織田側もこれで引き上げるだろ、某が使者となり」
冷泉政興「そうだな、だが織田との和議は11月となるよう住職らと話しを進めておいてくれ、決まった訳ではないが早めの停戦はこちらもしたい」
張り詰めていた両軍共にこの寒さには耐えられず年内の停戦を積極的に進めていた冷泉達であった
1560年 10月 桜洞城
織田信孝「そうか、薪は多めに集めとけ」
如月純直「殿、そろそろ兵達も疲れが見え始めてます、ここら辺が潮時ではなかろうか」
小姓「殿食事の用意が出来ました」
湯漬けを受け取ると熱々のうちにかき込む
織田信孝「ん、純直そろそろだお前もボチボチ用意せよ」
小姓が如月の方にも湯漬けを用意し渡すと如月も食べ始め
如月純直「では、そろそろ撤退の準備と停戦交渉を」
織田信孝「バカ、あの城はどうする、あの城は落とすぞ」
箸で松倉城をさして
如月純直「は、ははっ!」
織田信綱「殿、ただいま戻りました」
織田信孝「信綱か、で?どうだ」
信綱は信孝の前に座り口を開く
織田信綱「群の掌握は済みました、帰雲城も守兵は僅かですぐに終わりました、城は鬼庭義堯が城代で兵800が詰めております」
織田信孝「そうか、兵を持ち場につかせろ明日より松倉城を総攻めする、雪が降り積もる前には終わらすぞ」
その日多くの炊き出しの湯気が織田陣営から立ち上った、篝火も多く灯され燻っていた織田陣営はいつもより明るかかった
宇山側の冷泉政興もただ事じゃないと直感し各将に持ち場につかせた夜の奇襲に備え夜通し警戒していたが日が登り始めた頃であった卯の刻ついに織田信孝が全軍に下知を下した
織田信孝が陣から姿を表し采配を松倉城の方を指した、それを合図に鐘が鳴らされた、出陣の合図が下った
如月純直「全軍進め!」
三ノ輪義重「一番槍は我らが頂くぞ!進め!」
麻生野元輝「三ノ輪の隊にだけは遅れを取るな!」
織田家譜代の重臣達が先鋒として宇山隊の先鋒隊と合戦が始まった
松倉隆重「弓隊構え、放て!」
織田本陣では
織田信孝「どうだ、戦況は」
馬廻り衆「我が軍、優勢です」
織田信孝「そうか、二陣も投入せよワシも前線に出る」
馬廻り衆「はっ、殿が出るぞ!」
織田信綱「初日で全滅ですな、城は如何致しますか?」
織田信孝「頃合いを見て城の開城と引き換えに停戦とする、そして適当な言い掛かりを口実に宇山を攻め滅ぼす」
織田信綱「かしこまりました」
織田信孝は信綱と美濃三人衆を引き連れ前線に立った
織田信孝「ワシに遅れを取るな!かかれ!」
馬を走らせるその姿は勇猛果敢に皆を震え上がらせた
冷泉政興「もはやこれまでです、退却の法螺貝を、これ以上は犬死です」
法螺貝が鳴り響くと宇山の兵達は来たに撤退して行った、兵の数、優秀な武将がいくらいても
兵の士気がない部隊は脆く吐かなかった、一刻の内に宇山軍は壊滅した
松倉隆重「逃げるな!押し返せ!」
足軽「隆重様逃げましょう!撤退の法螺貝もなってる!」
近くまで織田方の将が来てるのを確認し足軽から槍を借りる
松倉隆重「その兜名のある者とお身請けした!我は松倉城城主松倉隆重だ!参る!」
如月純直「そうか、如月純直だ冥土の土産として覚えて行くといい」
戦いは一瞬だた、実力の違いを肌身で感じる程に残酷であった
松倉隆重「ぐはっ…あの世でもう一度、手合わせを、ね…がう、うぐっ!」
如月足軽兵「流石だぜ!御頭!」
如月純直「お前達そやつを丁重に殿の本陣まで連れて行け」
如月足軽兵「へ、へい」
如月純直「若いな…」
ボソッと呟くと再び逃げる宇山の者らを追いかけた
冷泉政興の本陣に到着した新庄頼綱は指示を仰ぐ為直ぐに本陣の中に入った
新庄頼綱「冷泉様!まだ巻き返せます!直ぐにも全軍に攻勢の指示…を…れ、冷泉様?」
冷泉政興は此度の戦の責を負い自刃し既にこの世にはおらなかった、また冷泉に仕えていたものらも自刃しており本陣はほぼもぬけの殻であった、残ってる者らはまだ冷泉が生きてると思う者らであり既に指揮機能は停止していた
冷泉家臣「冷泉様…」
本陣の中に入ってきた冷泉の家臣が入ってきた、その光景に思わず立ち尽くし
新庄頼綱「冷泉様の家臣かお前達もすぐに此処から」
冷泉家臣「おのれ!冷泉様の仇だぁ!」
怒り我を忘れ斬りかかり咄嗟に刀を抜き切り伏せた
新庄頼綱「仲間同士で何故ッ!」
慌てて逃げるが先程切った者の血と本陣の様子を見た者らが声を上げて騒動は益々大きくなった
冷泉の家臣達は怒り狂い新庄の隊に襲いかかった
新庄村重「何故冷泉隊の者らが我らに攻めて来る!?」
冷泉家臣「冷泉様の仇だぁ!うぐっ!」
新庄村重「クソ!後ろからは織田、前からは冷泉?どうなってるんだ!」
新庄頼綱「も、もう逃げる体力も残ってねぇ」
従ってた者らも皆討たれ、そして今織田軍にも追いつかれた、身体には無数の矢が刺さっており出血多量で動く気力すら残ってなかった
麻生野元輝「貴様、新庄の倅だな、武士の情けだ介錯この麻生野元輝がやろう、腹を切る力は残っておるか」
新庄頼綱「そうか、アンタが…最後に会えて光栄だ…」
頼綱の後ろに立ち刀を抜く
麻生野元輝「ササッ…いつでも」
新庄頼綱「信正様、國正様…父上、某は先に行って参りま…すぅ、うッ!ぐぐぐ」
麻生野元輝「お見事」
新庄頼綱「うぐっ!」
松倉の戦いは織田家の勝利で終わった宇山軍は軍師冷泉を初め多くの家臣を失った
飛騨国 安国寺
北の安国寺に落ち延びた村重は落ち延びた足軽らから賴綱の死を聞く
新庄村重「賴綱が…そうか親より先に行くとは…他の者は?」
足軽らは皆俯いた顔をしていた
その時鬨の声が松倉城方面から響いた
和尚「村重様、どうやら城は落ちたようですね」
村重に白湯を渡すと足軽らにも1人づつ渡した
新庄村重「和尚、すまぬコレを飲んだらすぐにでも出て行く」
和尚「それがよろしいでしょう、北に御逃げなさい風の便りで聞いたお話ですが越後軍が飛騨に入ったとも聞いております」
新庄村重「誠か、越後って事は氷川家か、すまぬ和尚この礼は必ずする」
白湯を飲み干すとすぐに立ち上がり、足軽らに指示を出したすぐに立ち去った
それから日が沈み昼頃には織田軍も安国寺に寄り群は瞬く間に掌握された
その後織田軍は本格的な冬に備え一旦軍を解散させた
松倉城には如月純直と麻生野元輝隊を残した
越中から氷川信之の次男氷川兼清と岩清水茂道が仲裁に入った
両軍は年明けの2月飛騨国安国寺で話し合いの席を設けた
1561年 2月 飛騨国 安国寺
氷川兼清「先ずは会話の席を設けて頂き感謝致します」
麻生野元輝「宇山殿がいませんが、まさか来ないつもりでしょうか?これは織田と宇山の話し合いです」
岩清水茂道「これは失敬、我らは宇山殿の代理である、権限も我々が宇山殿から授かっておる」
如月純直「フン、まあ良い単刀直入に申す、宇山信正並びに宇山國正この両二名の自刃又は出家し飛騨から去るこれ以外は認めぬ」
織田方は強気な姿勢を見せるが兼清は動じず
氷川兼清「宇山家、宇山信正は今月当家に従属した、これがそれを表す起請文だ」
デタラメだと思い起請文を確認し見るが間違えなく受け入れるしかなく
如月純直「デタラメを…ぐぬぬぅ、確かに」
岩清水茂道「無論、織田方が攻めたいのであれば我ら氷川軍は全力で従属国の宇山を助けに参ります、更には年内には将軍より関東管領の正式に我らが殿に御与えになろう、そうなれば織田家は将軍に逆らう賊ともなろう」
麻生野元輝「将軍から関東管領を…笑わせるな、そんな事あるわけが」
氷川兼清「では年内を待たれよ、ただし関東管領就任された後の大きな戦はわかって頂きたい」
二人の口からはこれ以上何もないと悟り茂道は声をかけ
岩清水茂道「では、兼清様そろそろ」
氷川兼清「そうだな、では織田信孝殿にもこの事お伝え下さい」
二人はそのまま北に引いた、如月純直と麻生野元輝は直ぐにも早馬でこの事を伝えに走った
しかしその書状が信孝の元に届くには遅かった
正式に将軍足利義元から氷川信之に正式に関東管領職の任を託された、今まで積極的に攻勢的な大名達はピタリと止まった
長らく関東管領を正式に将軍から付けられたのは数十年ぶりでそれを補佐していた関東管領補佐の出羽北部を支配する大城家・常陸の守護として落ち着いた結城家・そしてかつて甲斐を守護していた山城家の3家が実質的に関東管領職を名乗っていたが真実を知る者は僅かであった
関東では互いの大名が小さな争いはしていたが大きな戦はある事件が起きるまで平穏な日々であった
コメント
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ああ、第4話、読ませていただきました。冒頭の花見の宴で如月が酒を全部飲んじゃったエピソード、思わず笑っちゃいましたね。あの後、罰として所領を没収される罰が「如月の所領を全て平らげる」っていう信孝の冗談がまた絶妙でした。でもその後の岡崎城無血開城、本当に驚きました……伊吹良利の「総攻めの挨拶に来た」って啖呵が効いてますね。飛騨の戦いは重くて、冷泉の自刃や頼綱の最後が本当に切なくて……でも最後に関東管領の影が見えてきて、これからがすごく気になります!次も楽しみにしてますね。