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「和香那さん、見つけたよ」
小塚雅弥は、自身の祖父母の苗字になっていた。
そして、大平雅弥という名前で念入りに調べあげた
彼は博多に住んでいる。
しかも、結婚し三歳ぐらいの娘がいた。
結婚の相手も突き止めた。
大平翔音。
二人はあの大胆な告発の後に、九州で隠れていた。
「これが、雅弥の現住所だ」
一枚の紙を手渡す。
「あなたって優秀なのね」
和香那さんは俺の首に腕を回して唇を押し付けてきた。
俺は、やっと彼女との約束を果たせた安堵と
きっとこの後彼女はまた、大きな事件を起こしてくれるという期待を膨らませ、興奮していた。
いつものように、彼女に許可を求めず
ベッドに押し倒して、彼女を貪った
和香那さんは最後まで、恍惚とした顔だった。
―――
「湯島さんお世話になったわね。お元気で」
翌朝――
突然、和香那さんがそう言った。
「……え?」
彼女は小さなキャリーケースひとつを持って玄関に向かった。
「ま、待って。お元気で……って……どこに行くの?戻ってくるんだよね?」
俺はひきつった顔をしていたと思う。
「何を驚いているの?雅弥さんの元へいくのよ」
「待って!!」
俺は和香那さんの腕を掴んだ。
「なぁに?飛行機の予約したから急がないと」
「雅弥の元へ……って、昨夜話しただろ?アイツは藤田翔音と結婚してる」
「それが?」
「それがって……」
「湯島さん、物わかりが悪いわね。
雅弥は私の男なの。
翔音に惑わされてるかもしれないけど、目を醒まさせてあげなきゃなのよ?」
「……復讐のために探してたんじゃ……?」
「あら、そんなこと言ったかしら?」
和香那さんはとぼけた。
いや、あの言葉は単なる冗談だったのか?
「あ、急がなきゃ。じゃ、湯島さんバイバイ」
玄関のドアノブに手をかけた和香那さんを見て、俺は何も考えられなくなった
――行かせない!
それしか、考えていなかった。
台所から、包丁を掴み
駆け寄るように彼女に近づくと
ソレを彼女の腹部に。
……ズブズブ
右手にそんな感触を覚えた。
「……あ……あ」
眉に皺を寄せて苦しげな表情の和香那さん。
「ダメだ!行かせない。君は俺のものだ!」
「……ふ。ふふふ。あは。あはははっ」
お腹を抑えながら、彼女はおかしそうに笑いだした。
俺は、途端に彼女が恐ろしくなり数歩後ろに下がりそのまま、尻をついた。
「湯島さん、あなた……何を、言ってるの?
ふふふ、私は最初から……雅弥のものなの……よ……ずっと。」
そのまま彼女は玄関先に崩れ落ちた。
―――
動かなくなった彼女を
俺は床に座り込んだまま暫く見つめていた
テーブルに置いてある自分のスマホを手に取る
番号を押すと、スマホの画面に血が付着したことが一瞬気になった
「……人を刺しました」
「はい、住所は……」
通話が終わりスマホを放り投げると
俺は座ったまま、また動かない彼女をただ見ていた。
―――
和香那は、最後まで、
自分は雅弥の女であると信じていた。
~和香那編End~